冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

与えられた試練 10

「見た目は普通ですね……」

『それはそうよ。今からこの子達の見てる夢に干渉してもらう。それぞれに見ているものが何か分からないから、充分に注意して。それと、もしも、本当にもしも、良くない物がいたりあったりしたら、それを真っ先に壊して頂戴。そんな事は無いはずだけど……』

「わかりました。夢に干渉か……」

 それぞれの最悪な過去を見ると思うと、かなり気が引けてくるが、今はそんな事を言っている場合ではなく、刻一刻と死が近づいている。

 ジンは、絶対に助ける事を心に誓い、大きく深呼吸する。すると、横から何処か寂しそうな顔で、レッドが声を掛けてくる。

『ジンよ……絶対に生きて帰って来ておくれ……これは試練見たいなものだ……きちんと彼女達を助け出して、きちんとお前も帰ってこい。良いな?』

「レッドさん……当たり前ですよ! まだまだやらなきゃいけない特訓が山ほどありますからね!」

『…………』

「全く。誇り高き最強の龍が、そんな顔をしてはいけませんよ! ……じゃあホワイトさん、よろしくお願いします」

『わかったわ……お願いね』

「お願いされました。……レッドさん、いってきます」

『……絶対帰って来い』

 ホワイトが魔法を掛けると同時に、レッドはそう呟く。ジンに聞こえていたかは定かではない。

 ジンは、まず最初に、レベッカの夢へと干渉する。

 干渉する際、すこし目の前が歪んだりして、酔いそうになるか、なんとかジンは堪える。

 歪んでいた視界が、次第に戻って行き、暫くしてハッキリとした形あるものが目の前に現れる。

「ここは……どこだ? それにこの感じ……」

 ジンは、周りをぐるりと一週見回してみるが、全く見覚えが無い。

「見覚えがない……少し急いで探すか」

 ジンは見たことも無い町の中を、ただ縦横無尽に走り回る。町と言うよりは、村に近いが、大きな建物がいくつかあり、その近くでは屋台がずらりと並んでいる。どの屋台にも人が集まっている。

 ジンは、無駄に走り回るよりは、誰かに尋ねて見るのが手っ取り早いと思い、ジンは視界に入った男性の肩を叩こうとする。

「あのぉ……」

 だが、肩には触れることは出来ない。透けてしまうのだ。それに声を掛けても反応しない。これは魔法だから仕方の無いことだ。ジンはそれを理解し、すぐさまレベッカを探す。

 さっきから感じるこの邪悪そうな気は何だ……レッドさんの魔力とはまた違った感じの物だ……くそ、ハッキリと感知できるようになっていれば!

 ジンは、そんな自分な少し腹を立てながら走り回る。気は感じるのだが、正確な位置が定まらず、魔力がある場所に近いのは確かなのだが、何故か町の中には見つからない。

 ジンは、粗方町を探し回ったため、少し止まって考えてみる。

「町にはいない。となると、外か……でも外には多分だけどいない。それは何となくわかる……となると他は……」

 ジンは、空か地下かと考える。

「空はまず無い。飛びながら戦うのは絶対に出来ない。……となると地下だけど……」

 どう地面の下を調べようか考える。地面を本気で蹴りつけ、穴を開けるという強引な方法を思いつく。というかそれしか思いつかない。

「しょうがない。いっちょやってみますか!」

 どうせ幻惑なら、周りの人など関係ないと思い、ジンは容赦なく地面を踏みつける。

「うわっ!?」

 地面が割れ、その場に大きな穴ができる。見事的中だ。下に何かあるらしい。だが、少し勢いよく踏みつけてしまったせいで、その際足が地面にハマってしまい、抜け出せず地面と一緒に落ちていく。

「どこまで続くんだ!?」

 と思ったのも束の間。すぐに地面に落ちた。着地は勿論することができず、岩と一緒に埋もれる。

「くっそ! 次は加減しよ」

 岩をどかし、すぐに立ち上がる。先程より近くに気を感じる。見事ビンゴだ。ジンは急いでその方向へと向かう。

 地面の下は薄暗く、何かダンジョン見たいな形になっている。

「これはこういうダンジョンが町の下にあるのか?」

 ジンは少し不思議に思いながらも、レベッカを探しに走り続ける。

 先程よりも、更に気が強まったことを感じると、何処かで爆発音がなると共に、軽い地響きが起きている事を確認する。

「この音、この地響き……近い!」

 ジンは、全速力でそこへ向かい、数秒してその場所へ到着する。目の前は砂煙が舞っていて、前が見えない。

「レベッカさんいますか!」

 ジンは咄嗟にそう叫び、安否を確認する。すると、すぐに返事が返ってきた。

「えっ!? ジンがここに居るの!? 今の声ジンよね!? いるわ! ここに居るわ!」

 砂煙の向こうから声が聞こえる。どうやらレベッカの声だ。間違いない。

「今向かいます!」

 ジンは、前が見えなくても、気を大まかにだが感じ取れるため、その方向へと向かう。

 そして、その目的の位置へと到着する。

「良くここがピンポイントでわかったわね?」

「そんな事は今はいいです! それよりここでなにが!?」

「それが……」

 砂煙を抜けた先が、丁度レベッカの隣で、レベッカにどうなってるか訊く。すると、レベッカは短く答え、ある方向を指さす。

 その指の方向には、怪しく笑う、邪悪な気を発する物が立っていた。

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