冒険者は最強職ですよ?

夏夜弘

もう負けない 6

「この魔法を受け止められるかぁ!?」

「やってやらぁぁあ!!」

 その魔法は、やがてジンに直撃する。

 それを両腕で受け止め、全力で上へ弾き飛ばす。

「おっも! ……絶対弾き飛ばしてやるからなぁ!!!」

 ジンの足は、ますます地面にめり込んでいく。

 ムルドは、魔法を放ち終えると、手を離し、腕を組んで優雅に眺めていた。

「貴様の死に際をしっかり見ててあげますよ! だからしっかり死になさい!」

「しっかり死ぬってなんだ!! チックショー! 俺は死なねぇぞぉ!」

 ムルドは高らかに笑っている。その笑い声が、ジンの勘に触れる。

「あいつまじでイライラするなぁ……絶対殺す。もう怒った」

 ジンは、額に血管を浮き出しながら、歯を食いしばり、目の前の魔法弾を弾き返そうとする。

「あぁ、あちぃしいてぇしでけぇしやべぇし、もう本当に弾き返せんのか!?」

 ジンは段々と後ろへ押されていく。その事に、ジンは少し焦りを感じる。

「このままいくと、レッドさん達も巻き添いを食らっちま。最悪僕だけに被害を留めたい!」

 ずっと笑っいたムルドの声が聞こえなくなり、ジンの気も少し晴れたと思ったら、ムルドはジンの後ろへと移動していた。

「なっ……お前、まさかっ!?」

「そうですよぉ! 私がただ見て笑ってるだけだと思いましたかぁ!? ざーんねーん! 貴方をボッコボコに殴ってやりますよ!」

「うわきったねぇ!」

「何が汚いだ! 我々魔王軍に汚いもへったくれもあるわけないだろぉ!」

「そ、それもそうだなぁ……」

「御託はいいのです! どこまで耐えられますかねぇ!?」

 それから、ジンは、前に魔法弾、後ろにはムルド、という状況になり、一方的に攻撃を食らうだけとなる。

 ムルドの一撃は力強く、ジンの体力と精神力を奪っていく。

 クッ……これが魔王の力を借りたムルドの力……強すぎる……!

 このままでは、確実にジンが先に死に、その後にレッド達が殺されると、ジンは悟った。

 このままだと本気でまずい! もう"龍人化"をやってみるしかねぇか! これはどんなものかわからねぇ。だから上手くいくかは分からないが、この際だ!! やってやらぁ!

 そして ジンは、心の中で、"龍人化"発動、と呟く。

 すると、ジンは突然全身の痛みに襲われ、その痛さに意識が飛びそうになる。

「グッ、ぐわぁぁあぁああああ!」

 痛さのせいで、魔法を弾き飛ばすことに、集中が出来なくなる。

 ムルドは、一旦攻撃の手を止め、急に叫び出したジンから、距離を取る。

「な、なんだ? 急に叫び出したぞ……? そんなにダメージがデカかったのか?」

 ムルドはそう呟き、ジンをしっかりと見て、いつでも対応できるように構えている。


「い、イデェェエエェェエ!!」

 ジンは、必死にその痛みに堪える。

 な、なんだこれ!! "龍人化"を唱えた瞬間、身体が燃えるように熱くなって、身体のそこら中に痛みが走り出した! すっげぇ痛てぇ!

 この痛みは、何で起こっているかは、ジンには到底理解不能だった。

 ジンと魔法は、未だその位置に留まり続け、膠着状態にある。だが、それはすぐに終わる。

 ジンは、痛みに耐えられず、腕を思いっきり上に振り上げる。

 すると、魔法弾は空彼方へと飛んでいき、ジンは痛みにその場で転がった。

「痛い……この痛み……だが、これを耐えれば……」

 暫く見ていても、何も起きないジンを見て、ムルドは溜息を吐く。

「はぁ……面白いくない。せっかく期待して待っていたのに……これでは待つのも無駄だったかな……。待っててね、今から君を殺しに……」

 そう呟いた瞬間だった。ムルドは、有り得ない光景を目の当たりにする。

 突然、ジンの腕に、何らかの鱗が浮かび上がってきたのだ。

 それに気づいたムルドは、何が起こってるのかわからず、思わず後ろに下がってしまう。

「な、なんだ今さっきのは……鱗か?」

 それから、ジンの身体のいくつかの場所に、龍のような鱗付いていく。

 ジンは、まだ悶え苦しんでおり、ムルドは、今がチャンスなのでは? と考えるが、今のジンにはら何かあるかわからなかったため、突進するのは、やめにしておいた。

 それからも、その様子は収まることはなく、ずっと、苦しそうに這いつくばっていた。

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