IF 平井ゆきは美人である。

みづか

1・【もし】私が可愛かったら

今日の6限は、講堂で読書発表会の学年代表戦だった。
自分が気に入った本を推薦し、発表し、読みたい本の投票で大賞を決めるという、シンプルなルールだ。
私は、3年4組代表として壇上に上がったが、決まって拍手もまばらで、悪い意味の【いつも通り】だった。

こんなものは、3年にもなれば、決まってる。皆聴く気もやる気もなく、ただ印象で決める。どんなにこちらが一所懸命話そうと向こうには伝わらない。

案の定、私は大賞を取れなかった。
大賞は、2組の清楚そうな女の子が攫って行った。


帰ってきて、誰かー…目立つグループの子が言った。
『だる。こんなのいらなくない?』
あの子達は、私が語るのを聴こうともしていなかった。
そういう子って、いつも自由に生きられると思う。
好き勝手生きて、自分が良ければよし。
そんな中じゃ、可愛くない私は生きていけないような気がした。
明石あかし柑奈かんなが口を挟んだ。
『勝手にやらせてればいいじゃん、めんどー』
可愛いだけで、明石柑奈は得してる。
一生懸命生きなくても、周りが幸せにしてくれるだろう。

ちょっと憂鬱な気分で家に帰った。




今日は帰りが一時間早い妹がいた。妹の、めい。

『お姉ちゃん!読書発表会お疲れ様!やっぱお姉ちゃんは勉強もなんでもできるし、憧れだよー』

大賞じゃないのを、きっとわかっている。だからめいはいつも聞いてこない。気を遣ってくれている。でも、めいが私に向けてくる無条件の信頼は、少しばかり嬉しい。


ただ、安堵感と嬉しさの中に、少し複雑な妬みもあった。

今日、可愛い子に特に羨望感を持った。
めいは可愛い。すごく可愛い。私と違って整っている。
めい、私はめいが憧れだよ。




めいと取り留めのない話をしながらご飯を食べ、お風呂にゆっくり浸かった。
自分の部屋で、宿題を済ませ、スマホもほどほどに、ゆきはベッドに力なく倒れた。
今日は特に、小さなカーストを実感した気がする。
実力があっても、美人には勝てない。

可愛くなりたい。めいと同じ食生活なんだから、痩せたい。目を二重にして、大きくしたい。足を長くしたい。

そうしたら、両親もきっと私を腫れものみたいに扱わない。
クラスでも注目の的になって、なんでも一等賞が取れるかな。
手芸部でも、もっと後輩から名札欲しがられるかな。

高望み、しすぎ?

そう思ってから、ゆっくりと眠りに着いた。

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