世界最強も異世界に連れてかれると生きるのは本当に難しい

霊怜

第二章 家

あれから2日。その間は以前狩った獣の肉を魔法で焼いて食べていた。その辺の木や枝を組み、小さな小屋を作った。

「そろそろこの世界に慣れる準備を始めるか」

まず、家を探さなければならない。そして、次は仕事。とはいえ、レイスはまだ17歳。自国、『ラグイラ』では18歳を超えなければ働けないと言われていた。

「どうしよう...お金なけりゃ何もできねぇ」

途方に暮れて道を進んでいると、悲鳴が聞こえてきた。

「なんだ?」

見に行くと、3人の男が、レイスと同じくらいの年齢に見える女の子を囲んでいた。

「お嬢ちゃん、一緒に遊ぼうぜぇ?」

「や、やめてください!」

「つれないねぇ、素直になろうねぇ?」

「い、いや...!」

男が女の子の腕を掴んだ。

「おい!」

レイスは見ていられず、思わず声を上げてしまった。

「なんだてめぇ、この女と関係あんのかぁ?」

「ない。でも、見逃せる状況じゃないのは確かだ」

3人の中の一番背の高い男が怒りの目を向けた。

「邪魔すんじゃねぇよカスがぁ!」

殴りかかる。それを避け、拳を突きつける。

「お前らがこの娘から手を引くなら許してやる。死にたくなければさっさと消えな」

「調子に乗りやがって...!」

再び、次は3人とも襲いかかってくる。すぐ横にあった壁を殴り、破壊する。

「んな...!」

「消えな」

レイスの脅しが通用したのか、不良3人組は去っていった。

「あ、あの」

「ん、あぁ、大丈夫だったかい?」

「有難う御座いました。なにか、お礼をさせて頂けませんか?」

俺より年下に見えるが、言葉遣い丁寧だな、と思いながら、一つ、名案が思い浮かぶ。

「俺、実はこの世界に転移させられてさ、家もお金も仕事とかも何も無いんだ。君の家に、一時的に住まわせて貰えないかな」

「...お母さんに聞いてみるね」

「あぁ」

家がない、お金もない、なら、場所を提供してもらうしかないと判断したレイスは、許可を貰えることを心から祈った。

「あの」

「ん?」

「お母さん、事情がわからないから直接会って話したいって言ってるので、ついてきてもらえますか?」

「あぁ、わかった」

家までの間、いろんなことを話した。
まず、女の子の名前は朱鳥樹威あすかきい。年齢は17歳で近くの高校というのに通ってるらしい。その高校というのは分からない。
そして、両親を亡くし、今は母親の姉をお母さんとして慕っている。

「着いたよ」

年齢が同じと知った樹威は、敬語で話さなくなった。

中に入ると、お母さんが出てきた。

「貴方がレイス君ね?」

「は、はい。あの、住む場所を提供して欲しいと思って」

「何があったかわかんないけど、まぁ、悪い子じゃなさそうだし、いいよっ」

「お母さん、軽い...」

「いいってことなのか?」

「えぇ、そうよ」

「有難う、御座います!」

生活の基盤、家が見つかった。お金は、家を見る限りだいぶありそう。

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