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闇と雷の混血〜腐の者の楽園〜

音絃 莉月

8話〜今世の両親〜


「私達を親だと思ってる?」

母様が深呼吸をして尋ねてくる。母様にとってその質問が覚悟を決めてして来た物だと、顔を見ればわかった。

「うん」

俺は当たり前の様に肯定をする。今世の親はこの二人だ。当たり前だろう。『僕』はこの二人から産まれたんだから。

「あなたの心は私達を親だと認めてる?」

さっきの答えに納得がいかなかったというよりは、聞きたい内容が違ったのか。この質問は『俺』へのものだったらしい。
それならば答えは否。俺の親は父さんと母さんだけだ。

「.........うん......⁈」

だが、俺の意思に反して口から出たのは肯定だった。その言葉と同時に身体の光が強くなる。俺は嘘をつこうとしたのか?

「嘘つこうとしたの?」

母様の傷付いた様な表情を見てもう一度よく考える。自分の心の奥を覗く様に。

「......して、ないけど。......そう、か。二人はおれの親なのか。」

嘘をつこうとしたわけじゃない。『真実の水』の効果で俺の心の奥が曝け出されただけだから。だが、自分で納得出来る答えだ。

よく考えれば、今世の父親を萌えの対象にする事が出来ないのだ。前世ですら父さんは良い標的だった。母さんよりもお似合いの相手は見つけられなかったけど。

今世の父親は黒豹の獣人で、優しく、癖っ毛で垂れ目。肉食獣の一面もあって母様への対応を見るに好意を寄せる相手に対しては俺様っぽくなる。尚且つ溺愛するタイプだ。黒髪で青に銀を混ぜた様な瞳も人を惹きつける。腹黒でこのタイプは純情攻めとの組み合わせが好きだったりする。

キャラとして客観的に父様を見た時にかなり好きな要素が大量にあるのに、それをキャラの設定ではなく『アルム』という存在として見た時に全く萌えないのだ。罪悪感しか湧かない。きっとこれはそういう事なのだろう。

自分でも気が付かないうちに心の奥で認めていたらしい。自分でも驚きだが。
むしろ気が付かないようにしてたのかもしれないな。

「アルくん。私はあなたのこと......。」

母様の声で一気に気持ちが沈む。あぁ、理解していてもいざ言われるとなると辛いな。自分がこの二人を親として見ていることに気が付き、認めた後だから尚更だ。せめて、街に連れて行ってくれるといいな。

「アルくん。アルくんは私の天使こどもだよ。アルくんの過去を、秘密を知った今でも変わらずにね。」

予想すらしていなかった最高の言葉に心臓が跳ねる。異端児だと殺される事すら覚悟していた。疑われたままで生きるのが嫌だったから、売るか街に捨てるかしてくれる事に賭けていたのに。

「......ほ、んと......?」

念の為の確認を取る。
『嘘に決まってるでしょ?あなたなんか、産まれて来なければ良かったのに。』
頭の中にそんな言葉が蘇る。母様はそんなことは言わない。そう自分に言い聞かせる。

「当たり前だよ〜。アルくんみたいに分かりやすい確認方法は無いけどね〜。」

あぁ、いつもの母様だ。酷い言葉を吐いてきたりしない。母様のいつも通りのゆったりした口調に思わず少し口角が上がる。

「......そっか。ありがと。」

......愛してくれて。

「僕も君を自分の子供だと思っているよ。」

今まで成り行きを見守っていた父様が柔らかく微笑みながら言ってくれる。

「でも、普通の子供としては扱わないよ?君の精神がある程度成長しているなら、子供として扱われても困るだろう?」

その言葉に頷く。確かにそうだ。自分の前世を隠しているならともかく、バラした後で子供扱いされてもどうして良いか分からない。自分の中身を知っている人の前で子供の振りとか、疲れるだけだし。

「さて、アルくん?私は母として未熟なのも自覚してるけど、アルくんの秘密を知っただけで受け入れられないと思われる程信用されていなかったとはショックだな〜。」

......あれ?母様ドSモード突入ですか?
さっきまでの穏やかな空気感は何処へやら。不穏な気配を感じる。 

「アルくんって、結構抱き上げられるの好きだよね?」

母様が悪い笑顔で聞いてくる。
抱き上げられるのは別......。

「うん。」

......に?......あれ?
母様の笑みが深くなる。父様は苦笑を浮かべながら、傍観してる。

「そっか〜。嬉しいな〜。」

母様の表情で嵌められたことに気付いて羞恥で顔が赤くなるのを感じる。
違うから!この身体で歩くより楽なだけで、別に好きとかじゃないし!
そう言おうとしても出てくるのは全く違う言葉だった。

「二人のうでの中は安心するから。」

自分の意思と関係なく心の奥が曝け出されるのって、なんか物凄く嫌なんだけど!
いつまで効果続くわけ ︎体感で一時間は経ってる気がするんだけど!

「そうだよね〜。諦めた様に振舞ってても尻尾が揺れてるし、抱き上げれば腕に尻尾を巻き付けてくるしね〜。」

「にゃっ⁈」

なにそれ⁈
俺そんな恥ずかしいことしてたのか⁈
今度からは耳と尾にも注意しないと。感情が丸分かりになるとか恥ずかし過ぎる。

「顔真っ赤だね〜。可愛い〜なぁ〜。」

母様のニヤニヤ顔に対抗すべく精一杯睨み付ける。あまり効果が無いのは分かっているがそれでも抗議の視線を送る。

「お顔真っ赤にして涙目で睨まれても、可愛いだけだよ〜?」

俺はSに分類される人種であり、揶揄からかわれるのは唯々腹が立つ。俺は揶揄われるのは嫌いで、揶揄う方が好きなの!
絶対に仕返ししてやる。

母様が俺の不穏な気配を感じこれ以上は危険だと思ったのか、ドSモードが終了していつもの、のほほんとした空気に変わる。

「ところで、『地球』ってどんなとこ?魔力無しでどうやって暮らしてるの?」

母様は早速地球に興味が移ったらしく、目を輝かせながら聞いてくる。話すのは良いとしても、面倒だな。七霊王の時みたいになりそうだ。あれは大変だった。

「かんたんに、せつめい出来ない。」

そう答えると今まで助けてくれもせず傍観に徹していた父様が口を開いた。

「なら、記憶を覗いたら良いんじゃないかな?あと、僕にも見せてね。」

母様が納得した様な顔をする。
また何かのアイテムを使うのだろうか?

「今回のは闇系統の魔法で、『闇魔法』の上位に位置する『精神魔法』だよ。この魔法を使えば記憶の共有を行える。
ただ、相手に少しでも抵抗されると使えないし、魔力の波長が合わないと記憶の欠如が起きることもあるんだ。
今回は君と僕らの魔力の質は近いし、君の許可さえ得られれば問題ないよ。」

父様が俺の疑問を感じてか説明してくれる。母様は地球のことを聞くまで諦めそうにないし、俺も疲れたし別に良いか。

「いいよ。見ても。」

「じゃあ、力抜いててね〜。」

母様が俺の頭に右手を置いて左手で父様の手を握りながら言ってくる。目を瞑ると、頭を覆う様に暖かい何かに包まれてる気がする。

「それじゃあ、行くよ。《共有する歴史シェアードヒストリー》」

......ん〜、特に何がされた感じはしないけど成功したんだろうか。暫くしても何の反応もないから、ゆっくり片目を開けて様子を伺うが、飛び込んできた光景に一瞬フリーズした。

「......え?ど、どうしたの?」

母様が泣いていたのだ。父様も苦虫を噛み潰した様な顔をしていた。服の袖で母様の涙を拭うとなにもない空中を見ていた焦点の合わなかった瞳が俺の目を見てくれた。

「ご、ごめんね。私が泣いて良いことじゃないのに。......痛かったね。苦しかったね。よく頑張ったね。」

姉ちゃんと同じ様な事を言ってるな。にしても、ファンタジー世界なら車に轢かれたくらいの怪我は割と頻繁にありそうなのに。
......ラノベ的には。ここではそうでもないのか?まぁ、怪我なんか無い方が良いけど。

「アルくん。前世は幸せだった?」

母様が涙を拭ったあとのまだ泣きそうな顔で聞いてくる。

「うん。幸せだったよ。」

平凡だけど、充実した人生だった。
俺が答えた時、身体を包む淡い光が強くなることはなかった。
その答えを聞いて母様と父様が抱き締めてくる。

「前言撤回するよ。アル。僕は君を子供として扱おう。鬱陶しくなっても愛情を注いであげるから覚悟しなよ。」

「......え。」

父様が謎の宣言をする。子供として扱うって本気で言ってる?......ちょっと対応に困るんだけど。

「大好きだよ〜、アルくん。目一杯甘やかしてあげるからね〜。」

「えぇ?」

母様まで謎の宣言ですか。いきなり何ですか二人揃って。一体何でそんな心境の変化が現れたんです?

それから暫くの間、しつこく心変わりの理由を尋ねてみても、二人は一向に答えてはくれなかった。






今回はちょっと短めですね。
こういう一人一人の心情に気を付けないといけないのは楽しいけど、疲れる(−_−;)

でも、みんなが伏線に気付いてくれるかなって考えながら書くのは楽しいですねo(`ω´ )o

誤字、脱字は時間がある時に見直して気付いたら修正しています。

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コメント

  • 文香

    いいですね。
    それしか言えません。

    0
  • 海

    とっても、面白かったです❗

    0
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