錫メッキ短編集

錫メッキ

天国と地獄

とある温泉のとある野郎共の会話…


A「お前さぁー、地獄とかあると思うー?」


月明かりが照らす露天風呂は水面がユラユラと輝いて幻想的な空間を魅せる。


B「あ“ーぁ?…ぇ、なにー突然ー。
逆上せたか?
だから酒はやめとけって言ったのによー。」


首までつかっているせいか、
湯船で酒を嗜んでいるせいかはわからないが二人ともかなり顔が赤い。


A「逆上せてねぇし。
いや、ちょっと思ったんだよ。
ってかお前声オッサンっぽいなー。」


B「うっせぇわ。意外と湯が熱かったんだよ。
俺は地獄は信じ無いなー、
でも天国は信じる派だわー。
もしくはどっちも無い。」


A「マジかー、お前天国だけ信じるなんて都合良すぎかよー。」


B「いやいや、だってさー、
嘘つきと泥棒も地獄に落ちるって言うけどさー。
あれホントだったら人類の98%は絶対地獄行きだぜー。
特に嘘つきは多すぎてヤバイな。」


A「ぁー、確かに!
だよなー。
ガキの頃さー、よく手洗いしたかとか聞かれなかった?
あれ嫌いでさー、冬とか特に!
んで洗ってないのに洗ったって嘘ついたことある?」


B「ぁー、あるある!」


A「あれも地獄行きになんのかなー。
俺長生きするしか道がねぇんだけどー
。」


B「ぇー、知らねー。
でも嘘ではあるよなー。
…やっべそれ俺も地獄行きじゃん。信じてないけど…んふぅー」


A「お前その声どっから出したよ…
ぇー、じゃあ天国はどんなところだと思うー?」


そう言うと頭に乗せてた手ぬぐいを広げて顔にかぶせた。


B「お前それ気持ちいい?」


A「ぉー、じんわりとしてて何か良い気がするー。」


B「まじかー、おれもやるわー。」


静かな温泉に異様なバカが2人誕生する。


A「で、天国よ天国。
お前天国は信じるんだろー?」


B「ぁー、うーん。
天国ねー、何か良いところなんじゃないのー?」


2人の息に合わせて手ぬぐいがぷぅぷぅ動く。


A「フワッとしてんなー…
じゃあーぁーあれは?
極楽って何だと思うよ?」


B「えぇー…知らねぇー
ぁ、風呂とか?よく近くの銭湯で知らない爺さんが極楽極楽ーって言ってんぞ。」


A「ふーん…じゃあよく分かんねぇけど今が極楽なわけかー。
…なんか手ぬぐい苦しくなってきた。」


B「…俺もー。戻すか。
ってかじゃあ逆に聞くけどお前の考える地獄ってどんな所よー。」


二人の手ぬぐい頭の上に戻ったことで露天風呂は正常な風景に戻る。


A「んー?
そりゃぁ…なんか怖いところ…?
あと凄く痛そう。」


B「お前もフワッとしてんじゃねーか…」


A「いやーだってさ、行ったことねぇし…」


B「まぁなー。」


A「じゃあー今は極楽って事なんだろー?」


二人はスッと目の前に目を向ける。


B「いや、そうでもねぇわ。」


A「ぇ、極楽だろ。」


二人の目の前には80代くらいの老婆達が温泉ではしゃぐ姿があった。


ー当旅館よ露天風呂は10時から混浴となります。ー


B「お前は業の深さでいえば確実に地獄行きかもなー。」


A「いや、混浴風呂に老婆以外の期待持ってんじゃねぇよ色欲魔。」


AB「…まぁ…湯に関しちゃ極楽だわなー。」





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