スターティング・ブルー〜蒼を宿す青年〜
十二章 ─ 蒼の覚醒 ─
「……ノエル…?」
正直目を疑った。藍の魔道書を使った俺より速い。それに、何処かで見た事がある剣を生成している…
「ほう…やるではないか」
「……」
アズラエルが話しかけてもノエルは無反応。というか余裕があり過ぎるだろ、彼奴…
「おい、ノエルの奴どーなっちまったんだよ」
「俺に聞くなよ…」
ひとまず離した方がいいと判断し、一瞬動きを止める所を狙ってとっ捕まえてみたが、様子が明らかに違う。力が尋常じゃない。細い身体の何処にこんな力があるのか分からずに。
「ちっ…ラグナ、この場を任せていいか?」
「嗚呼、任せろ」
「さんきゅ」
ノエルを抱えてこの場から退避する。その時、フィオが反応した。念話で話を聞く限り、ノエルに起こっている現象は蒼が関係しているという事らしい。おそらく、負の感情に作用した、という事か?
「考えるのは後だ…」
その間にも右腕が悲鳴を上げている。このままだと折れるかもしれない。急ぐ必要がありそうだ…
「……大丈夫、だろうな」
あんなノエルは見た事が無い。もしかしたら身体を乗っ取られた悠人のように暴走をし始めた(これはノエルから聞いたから間違いないだろう)のかと仮説を立てたが、すぐに払拭した。
「待たせたな…」
「死神か。上々だ…喰らってやる」
「んな簡単に殺れると思うんじゃねぇぞ!」
武器を構え直し、突進した。
一寸先は闇とはこの事だ。
意識が沈んだと思ったら私の身体の支配権を"何か"に取られていた。さっきのスピードは私だと到底出せない。"あの時の悠人"と同じ現象が私にも起きたと考えていいだろう。
「(……ちゃんと戻れる、かな…)」
意識の片隅に追いやられたノエルは、そんな事を考えるだけで精一杯だった。何せ身体は乗っ取られたまま。ちゃんと戻れる保証など、無いに等しい。
「いででででっ?!何処にこんな力があんだよ?!」
「(あ…悠人、ごめん)」
「…ったく、今度は俺が戻す番か。世話になったからな、あの時……」
ぶつぶつ言いながら闘技場から離れていく私と悠人。その間にも悠人の右腕が悲鳴を上げている。早く下ろさないと折れるのに、頑なに下ろさない悠人。どうして、と思っていた矢先、驚愕の行動に出た。
「(……ったく、カグラの事ほったらかしにしちゃったじゃねぇか)ノエル…戻って来い」
心の中ではカグラの事を心配し、ノエルを抱きしめる。嫌がるような素振りを見せて抵抗するが、お構いなしに続ける。例え骨が折れようと離さないと考えていた。そうじゃないとあの時助けてくれた示しがつかない。
「……!!」
「…この際だから言う。俺の事を好きになってくれたのはノエルが初めてだ。まぁ、記憶喪失の俺なんか好きになるって、最初は物好きだなって思った。けどよ…ノエルはずっと側に居てくれた。何一つ文句を言わずに」
「悠…人……」
「だから、俺にとってノエルは博士より大切な存在なんだ。ずっと大事にしたい。戦闘から遠ざけてたのは、その手を血で汚したくなかったからだ。血で血を洗うのは、俺だけでいい」
「そう…だったんだ……」
その時、不思議な感じが広がった…
悠人の告白を聞いた時、何かは私に身体の支配権を譲った。まるで、この事を聞かせるかのように。
「悠人…ハルト。黙ってるなんてズルいよ」
「悪ぃ。何れ告白しようかと思ってたんだよ。タイミングが無くてこうなったけどさ」
「……まぁ、両想いって分かっただけでも嬉しいけどね」
「……嗚呼」
ゆっくり手を回し、抱きしめ返して温もりを共有する。私の蒼と悠人の蒼が共鳴しているのが鼓動と共に伝わってきた。今なら何でも出来そうな気がする…
「…無事、覚醒したようだな」
遥か遠くで観察していた男。カグツチでテルミと共に行動していた男と同一人物と見ていいだろう。その隣に居るのは、カグツチにてその存在を定着させたテルミが居た。
「やはり第十五素体は生かしておいて正解だったようだ。二つの蒼…見ものだな、テルミ」
「No.15、やけに頑丈だったもんでよ。窯に落とした事もあったな」
「いくら"不良品"と判断しても貴重なのは変わらない。丁寧に扱え」
「次はな?ヒヒッ」
……互いに互いを高め合う、といった方がいいか。こうしている最中、足りないものを補っている感覚が俺とノエルにあった。もしかして、蒼が原因なのかもしれない。
「…絶対離さない」
「勿論」
恋心とは又違う気持ち。強い意志を感じた俺は、ノエルを連れて再び闘技場に戻る。手は繋いだままだ。こうしていると、力が溢れる。不思議な事もあるな、と片隅で考えていた。
「とーう」
「何っ…?!」
未だに居たアズラエルを蹴り飛ばす。ノエルは姫様抱っこしたままだけど。
「リツカ!?」
「悪い、今は任せろ。彼奴はノエルと一緒に倒す」
「あ、嗚呼…」
一旦下ろし、アズラエルを見据える。様子が違う事に早くも気づいたらしいアズラエルは、大きな声で笑い出した。そんな事は目もくれずにノエルの『魔銃・ベルヴェルグ』を1丁ずつ持つ。本来は彼女だけが使用出来る銃だが、今なら俺でも使える。
「上々だ。それが貴様の本気か!!」
「悪い、正直言って付き合い切れん。「早く終わらせたいんです」だから…《私達が倒す!!》」
手を繋いだまま、アズラエルに向かって走る。衝撃波が来るのを予測した俺が銃で相殺し、ノエルがアズラエルを撃つ。その後拳や蹴りのラッシュが来るが、全て俺が捌き、息の合ったコンビ技を叩き込んだ。
「…やるじゃん、あの二人」
「すげぇ…」
「「はぁっ!!」」
遠くで観戦しているラグナとカグラが感嘆の声を上げる中、俺とノエルはアズラエルを追い込んでいる。狂犬と呼ばれるアズラエルをだ。正直、ここまで強くなるとは思わなかった。フィオも驚いているのか、さっきから言葉すら発していない。
「このまま!!「行きます!!」
大技を繰り出す態勢に入る。アズラエルが好機と見て突進してきた。それを防ぐのは、カグラとラグナだ。
「それを狙うのは、読めてたんだよ」
「さっさと決めろ!!」
「…行くぞ。ノエル「分かった。行くよ!」
《クリッドドロウ》
繋いだ手からエネルギー状の刃を作り出し、一気に射出。その後に『フェンリル』を呼び出して乱射で追い討ちをかけ、最後は同時アッパー。マトモに喰らったアズラエルはその巨体を宙に浮かせ、地面にぶつかった。動く気配は、無い。
「「やった…?」」
ホッと安堵したつかの間、意識を失った俺とノエル。負担が大きかったようだ。駆け寄る足音が聞こえたのを最後に、闇に沈んでいく…
「全く、人使いが荒いニャスよ」
「てめぇ…ずっと気絶してた癖によく言えるな」
「当たりどころが悪かっただけニャス!」
「……そーかよ」
気絶した悠人とノエルをタオが運び、今は休ませている。タオが知っていた此処『カカ温泉』は秘湯らしい。此処なら誰にも気づかれない。何せカカ族しか知らない場所だからだ。
「(しっかし…アレは一体なんだったんだ…?アズラエルの野郎を圧倒したあの力…)」
悠人が素体だというのはウサギの野郎から聞いていたが、それだけじゃ説明がつかない。何か他の力もあの二人に作用していた、という事だろう。だが、悠人とノエルにはまだ謎が多い。カグツチで分かってる事は二人に"眼の力"があるという事だ。(ウサギから聞いた事だが)
「(…又ウサギがなんか話すだろ)」
そう考え、自分もつかの間の休息を楽しむ。
「悠人とノエルが…ね。やっぱり、蒼が可能にしている力かしら?」
レイチェルは悠人とノエルの覚醒に興味を示している。そこで知ったのは悠人の蒼がノエルの蒼を制御しているという事だ。形は違えども本質は同じ。蒼は謎が多い為、そういう事も可能なのだろう。
「ふふっ…面白くなってきたわね」
そう呟き、近いうちに会いに行こうと考えているレイチェル。悠人が鍵なのは、コレで確実になったからというのもある。
十二章でした。
悠人とノエルに新たな力が生まれましたね…
勿論、今後も出ますよ。
では、また次で((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
正直目を疑った。藍の魔道書を使った俺より速い。それに、何処かで見た事がある剣を生成している…
「ほう…やるではないか」
「……」
アズラエルが話しかけてもノエルは無反応。というか余裕があり過ぎるだろ、彼奴…
「おい、ノエルの奴どーなっちまったんだよ」
「俺に聞くなよ…」
ひとまず離した方がいいと判断し、一瞬動きを止める所を狙ってとっ捕まえてみたが、様子が明らかに違う。力が尋常じゃない。細い身体の何処にこんな力があるのか分からずに。
「ちっ…ラグナ、この場を任せていいか?」
「嗚呼、任せろ」
「さんきゅ」
ノエルを抱えてこの場から退避する。その時、フィオが反応した。念話で話を聞く限り、ノエルに起こっている現象は蒼が関係しているという事らしい。おそらく、負の感情に作用した、という事か?
「考えるのは後だ…」
その間にも右腕が悲鳴を上げている。このままだと折れるかもしれない。急ぐ必要がありそうだ…
「……大丈夫、だろうな」
あんなノエルは見た事が無い。もしかしたら身体を乗っ取られた悠人のように暴走をし始めた(これはノエルから聞いたから間違いないだろう)のかと仮説を立てたが、すぐに払拭した。
「待たせたな…」
「死神か。上々だ…喰らってやる」
「んな簡単に殺れると思うんじゃねぇぞ!」
武器を構え直し、突進した。
一寸先は闇とはこの事だ。
意識が沈んだと思ったら私の身体の支配権を"何か"に取られていた。さっきのスピードは私だと到底出せない。"あの時の悠人"と同じ現象が私にも起きたと考えていいだろう。
「(……ちゃんと戻れる、かな…)」
意識の片隅に追いやられたノエルは、そんな事を考えるだけで精一杯だった。何せ身体は乗っ取られたまま。ちゃんと戻れる保証など、無いに等しい。
「いででででっ?!何処にこんな力があんだよ?!」
「(あ…悠人、ごめん)」
「…ったく、今度は俺が戻す番か。世話になったからな、あの時……」
ぶつぶつ言いながら闘技場から離れていく私と悠人。その間にも悠人の右腕が悲鳴を上げている。早く下ろさないと折れるのに、頑なに下ろさない悠人。どうして、と思っていた矢先、驚愕の行動に出た。
「(……ったく、カグラの事ほったらかしにしちゃったじゃねぇか)ノエル…戻って来い」
心の中ではカグラの事を心配し、ノエルを抱きしめる。嫌がるような素振りを見せて抵抗するが、お構いなしに続ける。例え骨が折れようと離さないと考えていた。そうじゃないとあの時助けてくれた示しがつかない。
「……!!」
「…この際だから言う。俺の事を好きになってくれたのはノエルが初めてだ。まぁ、記憶喪失の俺なんか好きになるって、最初は物好きだなって思った。けどよ…ノエルはずっと側に居てくれた。何一つ文句を言わずに」
「悠…人……」
「だから、俺にとってノエルは博士より大切な存在なんだ。ずっと大事にしたい。戦闘から遠ざけてたのは、その手を血で汚したくなかったからだ。血で血を洗うのは、俺だけでいい」
「そう…だったんだ……」
その時、不思議な感じが広がった…
悠人の告白を聞いた時、何かは私に身体の支配権を譲った。まるで、この事を聞かせるかのように。
「悠人…ハルト。黙ってるなんてズルいよ」
「悪ぃ。何れ告白しようかと思ってたんだよ。タイミングが無くてこうなったけどさ」
「……まぁ、両想いって分かっただけでも嬉しいけどね」
「……嗚呼」
ゆっくり手を回し、抱きしめ返して温もりを共有する。私の蒼と悠人の蒼が共鳴しているのが鼓動と共に伝わってきた。今なら何でも出来そうな気がする…
「…無事、覚醒したようだな」
遥か遠くで観察していた男。カグツチでテルミと共に行動していた男と同一人物と見ていいだろう。その隣に居るのは、カグツチにてその存在を定着させたテルミが居た。
「やはり第十五素体は生かしておいて正解だったようだ。二つの蒼…見ものだな、テルミ」
「No.15、やけに頑丈だったもんでよ。窯に落とした事もあったな」
「いくら"不良品"と判断しても貴重なのは変わらない。丁寧に扱え」
「次はな?ヒヒッ」
……互いに互いを高め合う、といった方がいいか。こうしている最中、足りないものを補っている感覚が俺とノエルにあった。もしかして、蒼が原因なのかもしれない。
「…絶対離さない」
「勿論」
恋心とは又違う気持ち。強い意志を感じた俺は、ノエルを連れて再び闘技場に戻る。手は繋いだままだ。こうしていると、力が溢れる。不思議な事もあるな、と片隅で考えていた。
「とーう」
「何っ…?!」
未だに居たアズラエルを蹴り飛ばす。ノエルは姫様抱っこしたままだけど。
「リツカ!?」
「悪い、今は任せろ。彼奴はノエルと一緒に倒す」
「あ、嗚呼…」
一旦下ろし、アズラエルを見据える。様子が違う事に早くも気づいたらしいアズラエルは、大きな声で笑い出した。そんな事は目もくれずにノエルの『魔銃・ベルヴェルグ』を1丁ずつ持つ。本来は彼女だけが使用出来る銃だが、今なら俺でも使える。
「上々だ。それが貴様の本気か!!」
「悪い、正直言って付き合い切れん。「早く終わらせたいんです」だから…《私達が倒す!!》」
手を繋いだまま、アズラエルに向かって走る。衝撃波が来るのを予測した俺が銃で相殺し、ノエルがアズラエルを撃つ。その後拳や蹴りのラッシュが来るが、全て俺が捌き、息の合ったコンビ技を叩き込んだ。
「…やるじゃん、あの二人」
「すげぇ…」
「「はぁっ!!」」
遠くで観戦しているラグナとカグラが感嘆の声を上げる中、俺とノエルはアズラエルを追い込んでいる。狂犬と呼ばれるアズラエルをだ。正直、ここまで強くなるとは思わなかった。フィオも驚いているのか、さっきから言葉すら発していない。
「このまま!!「行きます!!」
大技を繰り出す態勢に入る。アズラエルが好機と見て突進してきた。それを防ぐのは、カグラとラグナだ。
「それを狙うのは、読めてたんだよ」
「さっさと決めろ!!」
「…行くぞ。ノエル「分かった。行くよ!」
《クリッドドロウ》
繋いだ手からエネルギー状の刃を作り出し、一気に射出。その後に『フェンリル』を呼び出して乱射で追い討ちをかけ、最後は同時アッパー。マトモに喰らったアズラエルはその巨体を宙に浮かせ、地面にぶつかった。動く気配は、無い。
「「やった…?」」
ホッと安堵したつかの間、意識を失った俺とノエル。負担が大きかったようだ。駆け寄る足音が聞こえたのを最後に、闇に沈んでいく…
「全く、人使いが荒いニャスよ」
「てめぇ…ずっと気絶してた癖によく言えるな」
「当たりどころが悪かっただけニャス!」
「……そーかよ」
気絶した悠人とノエルをタオが運び、今は休ませている。タオが知っていた此処『カカ温泉』は秘湯らしい。此処なら誰にも気づかれない。何せカカ族しか知らない場所だからだ。
「(しっかし…アレは一体なんだったんだ…?アズラエルの野郎を圧倒したあの力…)」
悠人が素体だというのはウサギの野郎から聞いていたが、それだけじゃ説明がつかない。何か他の力もあの二人に作用していた、という事だろう。だが、悠人とノエルにはまだ謎が多い。カグツチで分かってる事は二人に"眼の力"があるという事だ。(ウサギから聞いた事だが)
「(…又ウサギがなんか話すだろ)」
そう考え、自分もつかの間の休息を楽しむ。
「悠人とノエルが…ね。やっぱり、蒼が可能にしている力かしら?」
レイチェルは悠人とノエルの覚醒に興味を示している。そこで知ったのは悠人の蒼がノエルの蒼を制御しているという事だ。形は違えども本質は同じ。蒼は謎が多い為、そういう事も可能なのだろう。
「ふふっ…面白くなってきたわね」
そう呟き、近いうちに会いに行こうと考えているレイチェル。悠人が鍵なのは、コレで確実になったからというのもある。
十二章でした。
悠人とノエルに新たな力が生まれましたね…
勿論、今後も出ますよ。
では、また次で((。´・ω・)。´_ _))ペコリ
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