スターティング・ブルー〜蒼を宿す青年〜

Knight

八章 ─ 次なる土地 ─

第七機関を後にした桐生悠人とノエル=ヴァーミリオンは次の階層都市、イカルガへ向かっていた。カグツチからは遠く離れてしまった為、徒歩で向かう。時々ノエルを抱えて歩いたりして彼女の負担を極力減らし、着々と近づいていた。

「あの…ハルト…?」

「…どうした?」

「流石にくっつきすぎかなーって…」

「あー…まぁ、我慢してくれ…飛べないから、俺」

「そう言われても…」

今、二人が歩いているのはイカルガへ続く道。だが、幅が一人分しか無く、仕方なくノエルを抱えて歩いている。だが、出発する前に秘めた想いを親友にバラされてしまったノエルはこうしてくっつく事ですら恥ずかしいらしい。まぁ、異性にくっつくのはやっても恋人同士くらいしかしない事だ。

「(……嗚呼言ったけど、俺だって理性保つのは大変なんだっつーの!まだ告白してないけどさ…)」

「(今はマコトを怨もう…それがいい)」

二人して違う事を考えている最中、やっとの事で辿り着いた。すぐに降ろし、見上げる。連合階層都市イカルガは、その名の通り幾つもの階層都市が重なり合っている。だから、外から見ると一本の木に見えるらしいが、今の二人には関係なかった。




悠人とノエルがイカルガに着いた頃、ラグナは猫と人を足して二で割ったような亜人…カカ族の戦士タオカカと一緒にイカルガで一番夕日が綺麗に見える場所まで来ていた。

「……おいタオ」

「なんニャス?」

「俺が今探している二人は…覚えているよな?」

「勿論ニャスよいい人〜」

「……だといいんだが」

タオカカを含めたカカ族という一族は、過去に起きた暗黒大戦の時に人の手で造られた存在。カカ族全員、当時世界最強と云われた猫の遺伝子が組み込まれている。その為、戦闘能力は十分にあるが…このタオカカという少女(と言っていいのか分からない)は、はっきり言うと気分屋の上に記憶力が皆無だった。ラグナをいい人と呼ぶのはその為である。カカ族の長老はそうでも無いが…

「……物凄く心配だ」

ラグナの気苦労がよく分かる事だろう。だが、こういうのは実際にやってみないと分からない。




ラグナ達が既に来ている事を知らない俺達は、ほぼ観光気分でイカルガを見て回っていた。カグツチの四倍ほどある広さのイカルガは、兎に角人が多い。 その為、はぐれないように手を繋いでいた。俺やノエルの素性を知らない人達は、恋人同士に見えた事だろう。

「さて…この後はっと」

ポケットからココノエ博士に渡されたメモを取り出す。そのメモによると、赤鬼…テイガーと接触しろとの事。第七機関の赤鬼と言えばかなり有名な方だ。図体は大きい為、一目で分かると言っていた。

「(赤鬼、ね…確か蒼の魔道書を確保しろっつー任務で来ている筈だ。俺も断片だけど持ってるからなぁ…)」

カグツチの戦いで、眠っていた力…否、"眠らされていた"力を使った。あの少女、νニューと同じ姿で戦った力はまだ謎が多いが、発動時に『ソウルイーター』というドライブ能力も使う、あの力はココノエ博士が徹底的に調べた所、死神が持つ蒼の劣化版だと分かった。劣化版とはいえ、その力は紛れもなく蒼の力。使い所を間違えるなと念を押された。

「ハルト?」

「…嗚呼、悪い。どした?というか、偽名の方で呼んでくれ。『桐生悠人が此処に居る』って誰かに知られたら多分面倒な事になる」

「あ…ごめん、『リツカ』。どうにも慣れなくて」

「何、宿の方ではいつも通りハルトでいい。おそらく博士なりの統制機構図書館対策だ。だが…」

不意に、自分の髪に触れる。今の髪型はいつものヘアスタイルじゃない。くせっ毛を直すかのように全て下ろされており、頭の上ではアホ毛が一本立っている。流石に服装はいつも通りだが、髪型が違うだけでなんか落ち着かない。

「これじゃ女って見られるだろうが。名前だけじゃなく髪型も偽装しろってか。何考えてんだ、博士は…」

ノエルの苦笑を他所に、育ての親であるココノエを怨む悠人だった。因みに、悠人の偽名は『リツカ=ミチザネ』。イカルガ滞在中はこの名前でいろ、遠くから博士の声でそう聞こえてきそうだった。




場所は変わり、イカルガ城城跡。
イカルガ大戦の際、放たれた火によって焼け落ちた。要するに落城である。あれからかなりの日にちは経っており、再建してもいいのでは?という声も多数上がっている。だが、今は亡き城主のテンジョウの魂を受け継いだ(本当かどうかは本人のみ知る)という一人のむさ苦しい男がよしとしない。その男曰く、『殿が生きていた証拠となり得るもの。それを失くすのは殿の生き様すら消すという事』らしい。

「殿…貴方の魂、このシシガミ=バングが必ず未来へとお届けするでごさる…!!」

配下の忍達を前に、むさ苦しい男、シシガミ=バングは固く決意した。




ひとしきり歩いた為か、日が暮れる頃には疲れ果てた俺とノエル。予め取っていた宿に泊まり、一日の疲れを癒していた。

「さてと…時間、あるな」

外を眺めつつ、今日の出来事を整理し始める。赤鬼とはココノエ博士が事前に約束を取り付けていた。だから指定された日時に会いに行く。それだけでいいのだが、今日はただひたすら歩いていた。理由は統制機構の衛士が居た為だ。俺はあの時戦死した身、ノエルは亡命した身。万が一バレたら非常に不味い。

「(振り切るのが大変だったな…カグツチの衛士達とは又違う。此処の統率が上手くいってるって証拠か)」

そんな事を考えつつ、久しぶりに何か開発しようと思った。開発ツールはコンパクトにまとめていつも持ち歩いている。手始めに、小型の武器を作成しようと考え、スケッチに取り掛かった。愛用の大剣は先の一件もあり、ココノエ博士に預けている為手ぶらの状態って事だ。あの力…νニューと同じ力が扱えれば手ぶらでも問題ない。だが、リスクも高い為、当分は蒼の力に頼らざるを得ないだろう。そもそも、発動条件が分からないという理由もあった。

「(小型と言うとナイフか…いや、細剣レイピアでもいいか)」

考えを巡らせ乍サラサラと描いていると、ノエルが隣に来た。風呂上がりのせいか、石鹸の香りが鼻をくすぐる。

「おう、おかえり。どうだった?」

「最高だったよ?」

「ん。そりゃよかった。奮発した甲斐が有るってもんだ」

何気ない会話を交わす中、ふと気になる事があった。ノエルの対応についてだ。咎追いと少尉として会話をしていた時は敬語だったが、カグツチで暴走していた俺の意識を呼び戻してから今は友達、もしくは家族と話しているかのように接し方が変わっている。それだけ心を許せる存在になれたという事は、俺にとっても嬉しい事だ。

「明日はどうする?」

「それはね…」

仲良さげな二人。だが、この時はまだ知らない。カグツチで死闘を繰り広げたあの少女、そしてテルミ。彼等は既にイカルガへ来ている事を。




とある裏路地。
そこに居たのは黒いボロ切れのような生き物。顔らしき部分には白い仮面があり、本来の顔は無いように思える。

「蒼 どこ ど にあ 」

言葉は発するようだが、ちゃんと喋れないのか聞き取りづらい。だが、何かを求めてイカルガに来たらしい。それが何か。彼(?)のみ知る事だ。




(。・ω・)ノども。Knightです。
悠人とノエルの仲、着々と進歩してます。いいですね…羨まsゲフンゲフン
そして、新たな登場人物。何れ、悠人達に関わる事でしょう。

それでは、読んでくださった方々に感謝を。
ではまた、次でお会いしましょう。感想等お待ちしております((。´・ω・)。´_ _))ペコリ

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