女子校だけど告白されました ~百合フラグが多すぎる~

あんきも

2,坂野先生のお呼び出し

「失礼します。」
ガラガラと音をたてながら職員室のドアを開ける。
「坂野先生いらっしゃいますか?」
職員室を見回すと、すぐに坂野先生を見つけた。おじさんおばさんだらけの職員室では綺麗で若い坂野先生は目立つ。坂野先生もすぐに私に気づき、手招きをして私を側へ呼んだ。
先生の側へ行くと、整理整頓された先生のデスクが目に入った。
「何で呼ばれたかは分かるわよね?」
坂野先生の問いかけの答えが分かるからこそ申し訳なさそうに答えた。
「日直を忘れたこと、授業中の私語、それに先生の朗読中にボーッとしていたことです…」
「うん、そうね。」
先生はニコリと微笑みながら言った。
「でも、もう一つ理由があるわ。」
「もう一つですか?すみません、心当たりが無いんですけど…」
とぼけている訳では無く、本当に心当たりが無い。何かしたかと必死に授業中のことを思い返す。
「あら、本当に自覚が無いみたいね。」
ギシッという音と共に先生が椅子ごと私の方を向いた。
「先生を授業中にもかかわらず口説こうしたじゃない。」
あまりの予想外の答えに目を大きく見開いて先生を見る。
「ええ!?そんなこと…あ、あれですか?先生の声が綺麗だって言ったことですか?あれは本当にそう思ったから言っただけですよ!」
すると先生はふふっと笑い、アイラインが引かれた目元を細めて私を見た。
「それを口説いてるって言うのよ。」
「そ、そうなんですか?」
「私だからいいけど、気をつけるのよ?誰にでもそういう事言うと、危険なこともあるからね。特に早乙女さんみたいな可愛い子だとね。」
「か、可愛くなんか…ないです。」
びっくりした。先生が私のことを可愛いなんて言うと思わなかった。どうしていいか分からず、硬直していると、先生が更に話を続けた。
「昼休み…見ちゃったの。早乙女さんが
下級生から告白されている所。」
衝撃のダブルパンチだった。まさか見られていたなんて思いもしなかった。
「早乙女さんのそういう天然タラシな所がそういう事を招いちゃったのかもね。私にもそんな事言ってると、私からも告白されちゃうかもしれないわよ?」
「ええぇええ!?せ、先生!?」
みんなの憧れの坂田先生がまさかそんな事を私に言ってくるなんて…
頭がぐちゃぐちゃで混乱していると、それが顔に出ていたのか先生なふふっと笑った。
「冗談よ。教師が生徒に手出せないわ。」
「もう、変な冗談はやめてくださいよー!」
「告白する時は職員室じゃなくて人のいない化学準備室に呼び出さなくちゃね、ふふっ」
「せ、先生!やめてって言ったばっかりなのに!」
坂田先生は私の反応がお気に召したらしく、機嫌良さそうにクスクスと笑う。そんな笑い声さえも綺麗なソプラノだった、なんて言うとまたからかわれるのでやめよう。大人はどうしていつも子供をからかうのだろうか、そもそも私はもう子供じゃないのに。まあ、大人でも無いんだけどね。

「失礼しましたー。」
職員室をあとにしても顔がまだ火照っていることに気がつくと、この後部活に行った時に薫がまた何か言ってくるのだろうなんて思いながら体育館へと足を急ぐ。

そう思うのに、顔の熱はなかなか引かない。先生の綺麗なソプラノの声が脳内で勝手に再生されて、私を苦しめる始末。その声をかき消すように体育館へ走る。


「はぁ、何言っちゃったんだろう私…」
その頃、職員室では坂野先生が頭を抱えていた。
「あんなこと言って、からかうつもりなんて無かったのに…早乙女さんってつい意地悪したくなっちゃうのよね〜。なんて、これじゃひどい教師ね。」
あー、あー、と声を小さく出してみる。自分の声を褒められたのは初めてであった。
「それにしても、まさか女子校で告白現場見ちゃうなんて…教師としても色々考えちゃうわ…」


窓の外を見ると、必死に走る早乙女を発見して、クスッと笑った。

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