本日は性転ナリ。

漆湯講義

After Story…My Dearest.41

今日、学校に居た時とはまるで別人の様なその大人びた口調に、私は何も言えずにその青い瞳を見つめた。
すると彼女は再び"ふっ"と不敵な笑みを浮かべると私達の横を通り過ぎて行く。
その後ろ姿を目で追うと、彼女は少し進んだ所で立ち止まり、振り返らないままこう言ったのだった。

『それと…私はNot a minor…だから』と。

発音の良さにその意味は理解出来なかったが、深い意味があったであろうそんな言葉を言い残した彼女は、背中を見つめる私達へと片手をひらひらさせると、なんだか少しだけ嬉しそうにその場を去って行った。
私は、茜色に染まった空の下、長く伸びた自分の影をジーっと見つめ、分かる筈もないその言葉の意味をずっと考えていた。

次の日の朝、私達は校門の側で彼女を待つ事にした。昨日の一件で聞きそびれた事、一番重要である事を聞き出すためだ。
勿論、彼女が学校を休む可能性もあったが、彼女の家を知らない現状では、こうするしか無かった。
そして沢山の生徒が通過していく中、私達は校門の側から青い瞳の彼女を目で探したのだった。
あの容姿であればどんなに沢山の人が居ても見つけるのは容易な筈だが、青い瞳は一向に姿を見せず、時間だけが過ぎていく。
そして遂に彼女が姿を見せる事なく乱暴な予鈴の音が背後に響いてしまう。

「来ないね」

私がそう呟くと莉結は地面に目をやりながら『それならそれで…って感じなんだけどね』と小さな溜め息を吐いた。
そして私達が諦めて校舎へと足を進めた時、"それ"は訪れた。
舗装を削り取るようなブレーキ音と共に、荒々しい車の排気音が背後に響いたのだ。
私達がその音に振り向くと、そこには真っ赤なスポーツタイプの車が横付けされており、助手席側の窓に人影が見えた。そして私が目を細めて見ると、なんと窓ガラスに反射する光の合間に煙草を咥えた彼女、オリヴィアの姿が見えたのだ。
そして青く澄んだ空を映した窓がゆっくりと下がっていったかと思うと、はっきりとその姿を見せたオリヴィアが、また不敵な笑みを浮かべた。






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