本日は性転ナリ。

漆湯講義

After Story…My Dearest.8

そしてお婆ちゃんはそっと口を開く。
その言葉は私たちの心の中にすぅーっと染み込むように溶けて消えていった。

"婆ちゃんには二人の幸せがどんな事よりもいちばんだ"

私は思わずその懐に抱きついてしまいたくなったが、それよりも早く、莉結の身体がお婆ちゃんの元へと飛び込んでいった。
そして、優しく微笑むお婆ちゃんの懐に埋まった莉結の口からは『ごめんね…お婆ちゃん』と震えた声が漏れたのだった。
その瞬間、私の心臓は一度だけ大きく鼓動し、ギュゥっと締め付けられるような感覚が心臓から血管、そして胴体から指の先へと伝わっていく…
そう、私にはその言葉のイミが分かる。
きっと"普通の恋が出来なくてごめんね"…そう言いたかったんだと思う。
そもそも普通の恋って何なんだろう…
他人に惹かれて胸が高鳴り、いつもその人の事ばかり考えてしまう、それが恋というモノなのにその感情に普通とか普通じゃないとかあるのかな…
それでも私たちが生きるこの世界にはやっぱり"普通"がある。それはきっと自分たちが集団の中で孤立してしまわない為に、自分も皆と一緒なのだと主張する為の枠組み。
だってその枠の中にいれば仲間外れにならないから。
だけどその"普通"の枠組みが大きければ大きいほどその枠の外に出た人たちは批判や差別、偏見の目に晒されてしまう。
恋愛だってそうだ。
恋愛とは異性に対してしか芽生えることのない感情?生物学的には?それがフツウ…
そんな多数決の結果なんて押し付けないでよ…

『瑠衣ちゃん?どうしたあ』

真っ暗な部屋の扉の向こう側から、そっと語りかけるような優しい声で、私はふと我に戻った。



コメント

  • 漆湯講義

    そうですよね(´°ω°`)
    普通って、その"普通の枠の中の人"の感覚ですもんね。それでも集団の中で生きる上では仕方がないんですよね(´。-ω-)考え出したらキリが無くて頭が混乱してしまいますねwww
    ミツキさんいつもコメありがとうございますっ٩(๑•̀ω•́๑)۶

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