本日は性転ナリ。

漆湯講義

156.姉の想い

『衣瑠ッ、何やってんの??早く病院行かなきゃ!!』

悪い事しか頭に浮かばない。
あの日、私が体調の悪いレイちゃんを呼び出したから?
そのせいで…
『瑠衣ッッ!!!』

その声に我に帰る。

「ごめん!!行こッ!病院!!」

私たちは急いで病院へと戻った。

受付に理由を話し、レイちゃんが居る場所を教えてもらい全速力で走った。

そして長い廊下に並べられた椅子に稚華さんの姿を見つける。

「稚華さんッ!!レイちゃんは??!」

『あ…衣瑠…ちゃん…』

顔を上げた稚華さんの目は真っ赤に腫れ、今も絶えず涙が溢れていた。

『いま、診てもらってる…どぉしよぉ…私、嶺になんかあったら生きてけないよ…』

『稚華さん…落ち着いて。何があったの??』

稚華さんを挟み込むように椅子へ座ると、呼吸もままならない稚華さんの背中をさすって落ち着かせた。

『ありが…とぅ、嶺が…トイレって言って…立ち上がった途端……急…急に倒れちゃって…』

子供のように泣く稚華さんの声が誰もいない廊下へと響く。

『最初は…"ダイジョーブかぁ?"ってただフラついて倒れただけ…かと…うぐッ、軽く考えてたんだけど…何回呼んでも…うぁぁあん…嶺まで居なくなったら私独りっきりで…ぅぅぁぁぁあん…』

「きっと大丈夫だよ稚華さん。ねっ?」

そう言って稚華さんを抱きしめ、頭を撫でた。

稚華さんは小刻みに震えいて…それ以上何を言ってあげたらいいのか分からなくなった。

どれくらい経ったのだろうか…

廊下には稚華さんの啜り泣く声だけが微かに響き続けた。


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