本日は性転ナリ。

漆湯講義

146.呆気ない一コマ

『きゃっ、何?!やめてよ!!』

『うるせーなクソアマが。ちょっと顔貸せや。』

私はその男の法被を掴み足を止めさせる。

『ぁんだよてめぇは。てめぇもちょっとこいやっ!!』

そう言って私に掴みかかったその手を私は強く握った。


ご馳走さまっ!!っと!!

こういう時に習い事をしていてよかったとつくづく思う。
護身術とはこういう時に使わねばっ。

そして男の身体はコンニャクのようにバランスを崩して地面に崩れ落ちた。

『ってぇなぁ!!!』

男はすぐに立ち上がって強く握られた拳を力一杯私に振りかざす。

『せーっっのっ!!』

…地面に伏したその男は何が起きたか理解できていない様子でしばらくの間、呆然と地面を見つめ続けていた。

『おい、大丈夫か?』

仲間の1人がその男に手を差し出す。

『お?あ、あぁ。』

男は立ち上がり顔についた土を払い落とすと『まぁ…いいわ、悪かった。』

そう言い残し呆気なく仲間を連れて去っていった。

すると突然周りから拍手が巻き起こる。

『お姉ちゃん凄いねー!!』
『ドラマでも見てるかと思ったよ!!』

『いや…別にそんな。』

無性に恥ずかしくなるも、勝てる相手で良かった、と無茶な行動をした自分を反省する。

『ネェちゃん!!頑張ったからコレ。持ってきなっ!!』

そう言って出店のお兄さんがアイスボンボンを私たちに差し出す。

「え?いいんですか?」
『あたりめーだろっ!コレ食って仕切り直して祭り楽しんできなって!』

ま…結果オーライか♪

アイスボンボンを受け取り、近くの休憩所へ腰掛けた。




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