本日は性転ナリ。

漆湯講義

129.届け

『私が似合うのは同じ黄色でもラッパスイセンのほうだけどね。』

「えっ?ラッパ?」

『ううん。なんでもないよ♪』

そう言って彩ちゃんは店を後にする。

「これから…どうしよっか…」

『私の事は気にしないでいいよ♪だから今日はもう、帰ろっか♪』


気の利いた言葉をかけることもできず、その日は彩ちゃんと別れた。

私はこのまま何もできずに終わるのだろうか…

それから何かできる事はないか考える日々が続いた。

もちろん莉結にも相談したが、簡単な問題ではない為、解決の糸口すら見つける事は出来なかった。

そして"その日"は訪れた。

莉結と職員室の前を通りかかったとき、室内から聞き覚えのある声が聞こえた。

彩ちゃんだ。

立ち止まって扉の窓から中を覗くと、なにやら担任の先生と話している。

次の瞬間、彩ちゃんの発した言葉に耳を疑った。

『そういう事なので。急な事で申し訳ありませんが、お世話になりました。退学手続きが終わり次第父に連絡をよろしくお願い致します。』

退学って…


職員室から出てきた彩ちゃんの肩を掴み、「今の話どういう事?!?!」と問いただした。

彩ちゃんは視線を逸らして小さな声で答える。

『カジシマに…やられたわ。父に何か言ったみたい。』

「だからって何で彩ちゃんが退学なんてことになんの?」

『私に聞かれても…』

「ごめん。わかった…行こう!!」

『行こうって…どこに?』

「彩ちゃんのお父さんのトコだよ!!!きっと話せば分かってくれるって!!」

『父は…無駄よ。もういいの。』

そう言った彩ちゃんは…嘘をついていた。







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