本日は性転ナリ。

漆湯講義

122.女神

…結局詳しいコトも聞けずに家に着いてしまった。

アレはどう言う意味だったんだろ…

今だに頬に残る柔らかな感触を指でなぞる。

それを思い出す度に心拍数が上がる。


もぅ…莉結はホントに訳わかんないよ!!

頭からモヤモヤが離れないまま1日が過ぎていく。

そんな時だった。急に携帯が鳴った。

あれ…どうしたんだろう。

「もしもし?どうしたの彩ちゃん?」

『あ、衣瑠?良かった。最期に声だけでも聞いておこうと思って♪』








数分の会話の後、私は走っていた。肌寒い風が吹く路地をひたすらに。


ただ今は走らなければいけない!

ただでさえ細い気管支が閉じてしまいそうだ。

やっとの思いで到着したのは、"天堂邸"だ。

家に明かりは付いておらず、静まり返った敷地内が不気味に映る。

門扉を飛び越え玄関へ走った。

勢いよく扉を開き2階へと疾風の如く駆け上がっていく。


"aya's room"

そう書かれたドアの前でふと立ち止まってしまう。

もしドアの向こうで彩ちゃんが…

いやっ…そんな事考えてるヒマは無いっ!!

ドアノブを回す。

"カチッ"と音を立ててドアが開いていく…

お願い…



『ありがとう。来てくれたんだ。』

目に飛び込んできたのは、出窓の縁に座る"女神"。

白いブラウスに金色の長い髪を靡かせたその姿は、女神そのものに見えた。


「彩ちゃん…なんで?」

突然の決断に率直な疑問を問いかける。

すると女神は表情も変えずにこう言った。

『なんでって単純じゃない?ただ私の人生を少し早く終わらせようって思っただけ。"私の人生"だもの。自由でしょ?』

身勝手な言葉に聞こえるが、彩ちゃんが本気で言っているのがよく分かった。







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