本日は性転ナリ。

漆湯講義

120.春の始まり

あれから私は"あの日の出来事"をずっと考えていた。

何故私はあんな行動をとってしまったのか…

しかし結論は出なかった。

そしていつのまにか今日は始業式。

嫌でも莉結と顔を合わせることになる。

だけどいつまでも逃げるわけにはいかない。

莉結だって心配して何通もメッセージをくれた。

普通に返信はしたが、莉結だって納得してないと思う。

憂鬱なまま、久々に見る制服に着替え簡単な朝食をとると、身支度を整えて家の外に出た。

そこには既に莉結の姿があった。

『おはよっ♪』

振り向いたその姿にドキッとしてしまう。

「おはよっ…!」

学校へ向かう道中も莉結は"あの日の出来事"を聞くこともなく、テレビの話や新しい教室が楽しみだとか言うだけだった。

そんな莉結のおかげで、学校へ着く頃にはなんとか普通に接することができるようになった。


教室へ到着すると、早速新しい教室へ移動が始まる。

この学校は1年から3年までクラスメイトが変わることはない。

"生徒の繋がりを大切に"ってのがこの学校のモットーらしい。

新しい教室へ着くと、黒板に席の場所が書かれた貼られていた。

えっと…私は…あ。


『衣瑠と隣だねっ♪』

こういうこともあるらしい。まぁ人見知りな私としてはその方がありがたい。

しかし妙な高揚感に包まれているのはなんでだ?

新しい教室だから…か。

その日は始業式や新しい教科書の配布などをやり下校となった。


その帰り道。

『ねぇ!ちょっと堤防寄ってかない?』

堤防というのは学校の近所に流れる小さな川の土手の事だ。

よく見かけるコンクリートで護岸されているモノではなく、昔ながらの野花や雑草の生い茂っている。

春には様々な花が咲き誇り、ほのぼのとした雰囲気で、とても落ち着く場所である。

いつもの帰り道から少し脇道へ入り堤防へと出た。

川では小学生が虫取り網を片手にはしゃいでいる。

私たちは土手の上に隣り合って腰を降ろした。







「本日は性転ナリ。」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「恋愛」の人気作品

コメント

コメントを書く