107,プロローグ

『…おかえり。』

その一言の意味は分からなかった。

やっぱりただの夢だったのかな？なんて事も頭を過ぎった。

しかし右を向き、洗面台の鏡に目をやるが、そこにいるのは、やはり"彼女"だ。

訳が分からず、母さんの元へ歩み寄りもう一度"同じ質問"をした。

『コレ…僕なの？』

その質問に母さんは少し寂しそうに俯くと僕を優しく見つめて言った。

『そうよ。それが嶺。黙ってて…ごめんね。』

『母さん…どういう事？』

病室のドアのほうから姉ちゃんがこちらへと歩いてきていた。

そして"真実"を知らされた。

僕の正体。

姉ちゃんの病気のコト。

そして"私"の病気のコト…

行方不明の父親のコトも。

１度にそんな事を言われてしまって絶望してしまいそうになった。

しかし、自分の為に行われた"実験"で救われたヒトがいる。

それを聞いてなんとか飲み込まれずに持ち堪えることができた。

その日から"その人"の事を考えてなんとか1年という果てしなく長く感じる毎日を乗り越えてこれた。

それが僕…いや私の"新しい人生のプロローグ"

…………

『全部じゃないけど…あらすじはこんなトコかな。』

レイちゃん…ありがとう。

こんなに頑張って話してくれたんだ…

私は"ありがとう"と言ってレイちゃんを抱きしめた。

『ちょっと…どうしたのっ…』

「感謝のシルシだよっ。これからもよろしくね♪」

窓から見える空がオレンジ色に変わっていた。

その空が漆黒に塗り替えられ、ホワイトパールのビーズ達が散りばめられるまではあっという間だった。

私の"運命の日"のコトや何でもない日常のこと。
時間がいくらあっても足りないと思えた。

コメントを書く

107,プロローグ

コメント

「恋愛」の人気作品

書籍化作品