本日は性転ナリ。
31.大問題。
「痛ぁーっ……」
「莉結、ごめんっ、痛たたた……」
どうやら横に伸びた木の根に足を引っ掛けてしまったらしい。積もった落ち葉のお陰で怪我こそしなかったけど、私達の服は土だらけになってしまった。
手で土を払い、宿泊棟に入った私達は、ロビーのソファーで談笑していた山田先生と保健の先生に苦笑いを浮かべつつ頭を下げた。
「なんだお前らっ、何かされたのかっ」
そう言いながら急に立ち上がろうとした山田先生は、勢い余って机で膝を強打する。しかし、男の意地なのか……先生は顔をピクピクとさせ、その痛みを堪えながらも私達の元へと歩み寄ってきた。
「先生……大丈夫ですか?」
「……どうした、その土は」
「あっ……今そこで転んじゃって」
「転んだ? 誰かにやられた訳じゃ無いんだな?」
私と莉結が頷くと、先生は安堵したようにソファーへと腰を下ろす。そして、腕時計に目をやってからこう言った。
「ならいい。てかお前ら……なんなら先に風呂入っちゃえ! みんなと入るの気不味いだろ?」
そんな事を先生の独断で決めて良いのか疑問だったけど、気不味いのは確かだし、服も汚れちゃったから、先生の気が変わる前にそうさせてもらう事にした。
「それじゃぁ遠慮無く。あ、私たちの部屋はどこですか?」
「部屋? 二階だが……今は関係無いだろ。荷物もそこにあるんだから着替え出して大浴場にそのまま行けばいい」
「えっ、部屋にシャワーとか無いんですか?」
「ホテルじゃあるまいしある訳ないだろっ。お前、何の為に林間学校やると思ってんだ。結束力を高めるためにみんなで作業してメシ食って、そんでみんなで風呂入るんだろっ。しかもこんなボロっちぃ所に
そんな立派な部屋がある訳無いだろう! はははは!」
……掃除をしていた施設の人の視線に気不味さを覚えながらも、私達は一応愛想笑いを返しておいた。
「衣瑠っ、しおりにも書いてあったけど、みんなでお風呂入って、それから女子は女子、男子は男子の大部屋で寝るんだよ?」
莉結にそう言われて、そんな事が確かに書いてあったような気がした。その時は何も気にして無かったけど、みんなでお風呂とか……考えただけで恥ずかしい。
「いいから早く入ってこいっ。そうだ、他の先生には言うなよ」
「はーい、ありがとうございますっ! それじゃぁ行こっか」
莉結はそう言って山田先生に頭を下げると、私の手を取り、鞄の置かれた一角へと歩き出した。
莉結と一緒にお風呂に入るなんて有り得ないっ! そう思った私は、足を止めて莉結に確認をする。
「ねぇ莉結、当たり前かも知れないけど一人ずつ入るんだよね?」
すると、莉結は妙に優しい顔付きで「そんな訳無いでしょ?」と言った。そして、後ろを振り返ると、山田先生に向かってこう言った。
「先生っ! みんながお風呂に来るまで一時間も無いから急いだ方がいいんですよねっ?」
「そうだっ。なるべく急いでくれ」
その言葉を聞いた莉結がニヤっと微笑んだ。そして、私の耳元で囁くようにこう言った。
「いいじゃん、女の子同士でしょっ?」
「そうだけど……気不味いっていうか恥ずかしいんだけど」
そんな私の言葉が聞こえ無かったのか、莉結は返事をせず、鼻唄まじりに自分の鞄から着替えを取り出している。私は小さな溜息を吐くと、仕方無く着替えを取り出したのだった。
「莉結、ごめんっ、痛たたた……」
どうやら横に伸びた木の根に足を引っ掛けてしまったらしい。積もった落ち葉のお陰で怪我こそしなかったけど、私達の服は土だらけになってしまった。
手で土を払い、宿泊棟に入った私達は、ロビーのソファーで談笑していた山田先生と保健の先生に苦笑いを浮かべつつ頭を下げた。
「なんだお前らっ、何かされたのかっ」
そう言いながら急に立ち上がろうとした山田先生は、勢い余って机で膝を強打する。しかし、男の意地なのか……先生は顔をピクピクとさせ、その痛みを堪えながらも私達の元へと歩み寄ってきた。
「先生……大丈夫ですか?」
「……どうした、その土は」
「あっ……今そこで転んじゃって」
「転んだ? 誰かにやられた訳じゃ無いんだな?」
私と莉結が頷くと、先生は安堵したようにソファーへと腰を下ろす。そして、腕時計に目をやってからこう言った。
「ならいい。てかお前ら……なんなら先に風呂入っちゃえ! みんなと入るの気不味いだろ?」
そんな事を先生の独断で決めて良いのか疑問だったけど、気不味いのは確かだし、服も汚れちゃったから、先生の気が変わる前にそうさせてもらう事にした。
「それじゃぁ遠慮無く。あ、私たちの部屋はどこですか?」
「部屋? 二階だが……今は関係無いだろ。荷物もそこにあるんだから着替え出して大浴場にそのまま行けばいい」
「えっ、部屋にシャワーとか無いんですか?」
「ホテルじゃあるまいしある訳ないだろっ。お前、何の為に林間学校やると思ってんだ。結束力を高めるためにみんなで作業してメシ食って、そんでみんなで風呂入るんだろっ。しかもこんなボロっちぃ所に
そんな立派な部屋がある訳無いだろう! はははは!」
……掃除をしていた施設の人の視線に気不味さを覚えながらも、私達は一応愛想笑いを返しておいた。
「衣瑠っ、しおりにも書いてあったけど、みんなでお風呂入って、それから女子は女子、男子は男子の大部屋で寝るんだよ?」
莉結にそう言われて、そんな事が確かに書いてあったような気がした。その時は何も気にして無かったけど、みんなでお風呂とか……考えただけで恥ずかしい。
「いいから早く入ってこいっ。そうだ、他の先生には言うなよ」
「はーい、ありがとうございますっ! それじゃぁ行こっか」
莉結はそう言って山田先生に頭を下げると、私の手を取り、鞄の置かれた一角へと歩き出した。
莉結と一緒にお風呂に入るなんて有り得ないっ! そう思った私は、足を止めて莉結に確認をする。
「ねぇ莉結、当たり前かも知れないけど一人ずつ入るんだよね?」
すると、莉結は妙に優しい顔付きで「そんな訳無いでしょ?」と言った。そして、後ろを振り返ると、山田先生に向かってこう言った。
「先生っ! みんながお風呂に来るまで一時間も無いから急いだ方がいいんですよねっ?」
「そうだっ。なるべく急いでくれ」
その言葉を聞いた莉結がニヤっと微笑んだ。そして、私の耳元で囁くようにこう言った。
「いいじゃん、女の子同士でしょっ?」
「そうだけど……気不味いっていうか恥ずかしいんだけど」
そんな私の言葉が聞こえ無かったのか、莉結は返事をせず、鼻唄まじりに自分の鞄から着替えを取り出している。私は小さな溜息を吐くと、仕方無く着替えを取り出したのだった。
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