二重人格のいじめられっ子が転生されたら

TORN

7話「勇者誕生祭」

 急に呼び出されたかのように意識が戻ってきた。
 ここはどこなのだろうか。
 そう思い目を開ける。
 そこは訓練場。
 何も変わってない。たぶん練習台になって負けたところなのだろう。
 目の前には一ノ瀬さんがいて他には誰もいない状況。
 二人っきりだ。
 僕は一ノ瀬さんの顔を伺う。
 真っ青だ。数々の疑問が浮かんでくるが、どうでも良くなるくらいに体のあちこちが痛い。
 それに雰囲気も……。

「ごめんね、すぐにやられちゃって。あははー一ノ瀬さん強いねー!」

 声を出すと内蔵が痛む気がした。
 血を吐きすぎたとかそんなとこか...。

 そう思っていると、

「あなたは誰なの?本当に小林くん、なの?」

 何を言っているんだ?よくわからんな。
 とりあえず、

「え?僕は小林広夢ですよ?」

 僕は小林広夢でしょ!それ以外だったら誰なんだよー。
 そう思った。
 だが、あることが頭によぎった。
 薬のことだ。
 僕は毎日精神安定剤を飲んでいる。あと四日分ほどしかないが、毎日欠かさず飲んでいる。
 なぜなら僕は小さい頃原因は不明だが突然凶悪な人格と入れ替わるらしい。
 当然だが僕は分からない。
 本当に違う人格になるのか、デマなのか、騙されているのか。
 自覚がないから何もわからない。
 けれども何かが繋がった気がする。
 怯えた一ノ瀬さん、懐かしいあの意識が遠のく感覚。
 今までもこれからも誰にも言わないはずだった。
 知ってるのは親だけ。その親も今はここにいない。
 僕は思い切って聞いてみることにした。

「もしかして、怯えてる理由って……僕ですか?」

 彼女は頷く。
 そして後ずさる。

 どうしよう!!こんな経験初めてだし今までこんなこと無かったし!
 そうだ。説明すればいいんだ。
 僕の病を。
 それだけじゃないか。
 そう思い、一ノ瀬さんと向き合う。
 かなり怯えている様子だ。
 しょうがない。

「信じてくれとは思わない。今はこのこと知ってる人、この世界にいないから。
 実は僕……精神病なんだ。二重人格なんです」

 初めてだ。
 クラスメイトに言ったなんて。
 島田にも言ってない。
 どんな反応するかだとか、全然分からないわ。
 一ノ瀬さんを見ると、顔を赤くしてソワソワしてる。
 
 ……ん?

 興奮しているのか?なんか怖いよ一ノ瀬さん。
 いきなり肩を掴まれ揺さぶられる。
 痛いよ一ノ瀬さーん。

「二重人格!?それって凄いよ!私テレビでしか見たことなかったけど本当にいるんだなんて思ってなかったよ!!」

 ん?ん??

「秘密教えてくれたから私も秘密教えてあげる!実はね?めっちゃオカルト好きなの!!非現実的な発想がいいって言うかなんて言うか。もうたまらん!」

 めっちゃ早口、それに怖い。
 キャラ崩壊してるよ、一ノ瀬さん...。
 俺の中ではクールなイメージだった、クールなイメージなだけだった。
 オカルトオタク的なやつか……。
 まぁなんというか、怯えてないのが何よりよかった。
 そう思い、一ノ瀬さんと友達になれるか不安になった広夢であった。





 訓練が終わり、食堂に向かう。
 今から夕飯だ。どんな召し出されるか楽しみだわー……ちょっと待った。
 今日の朝飯って確か……魚オンリー。
 
「今日の朝食はすいませんでした。あまり在庫が無かったものなので。ですが夕食は初訓練日として沢山ご飯を用意してまいりました!お楽しみください!」

 うん。何に謝ったのかな?
見た感じでいうと魚7割その他3割ぐらいだな。
 朝とさほど変わってない気が……。
 この世界そんな魚余ってるのか?
 あー、考えるのやめよう。魚に祟られそう。
 そうこう思っているうちに祝い?会的なのが始まった。
 僕の隣は島田と団長さん。
 クラスの端っこだ。
 まぁ団長さんと隣になれたのはでかいな。
 この際知らないことたくさん聞こう!
 そう思っていると、正面から呼ばれたような呼ばれてないような……。
 顔を上げると、

「……よ!」
「アリシア!」

 おー!最高じゃないか!この席!最近武田たちも来ないし今はこの席...。
 運使い果たしたとか?とりあえず今を楽しまなきゃな。
 時間が経つにつれて場が盛り上がっていく。
 早くしないと飯なくなりそうだな!
 そう思いテーブルの魚に手をつける。
 なんだこれ、見たことない料理法だな……怖い。
 煮てるのか焼いてるのか、茹でたのか炙ったのか分からないし何より団長の目がやばい。
 食べちゃいけないやつだ。
 そう思い皿にさりげなく戻してとく。
 すると島田が、

「おい広夢~!お前今戻したろ!ダメだろ?好き嫌いしちゃ~」

 そんなことを言って島田が俺が戻した魚を取って口に入れる。
 おー!いったいった。
 そんなことを思いみていると、みるみるうちに青くなっていく島田。
 そしてトイレに行く島田。
 いつになっても帰ってこない島田。
 戻ってきたと思ったら食欲が無いらしく、縮こまっている島田。
 
 なんかすごい罪悪感が……。
 ごめん島田。
 するとアリシアが、

「……島田くん面白いね!」

 などという始末。
 勇者島田お陀仏。
 ずっと縮こまっている島田に僕は心を込めて合掌した。
 
 島田に飲み物持ってきてやるか。
 そう思い席を立つ。
 そしてあることを知った。

 勇者誕生祭?

 訓練初日の打ち上げ的なのじゃなかったのか。
 つーかそれだとおそすぎだろ。
 やるならその日にしろよな。
 そう思い島田に持ってきた飲み物を渡し、魚に感謝してとにかくたくさん食べた。
 魚の量がとにかく半端なかった。


「二重人格のいじめられっ子が転生されたら」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く