ガチャって召喚士!~神引きからはじめる異世界ハーレム紀行~

結月楓

第三十二話 教会にて

 教会に着いた後、ローザは神父に今まで起こったことを一通り説明してくれた。

「……ふむ。ということは、今もモガディシュのギルドには盗まれたオーブと死体が残っているのだな?」

 神父は厳かな表情で聞く。

「ええ、そうね。他に人の気配もなかったから、わたしたちで回収したりはしていないわ」

 ローザは神父に返事をする。言われてみれば、何も知らない人があの部屋に入って死体を見たら気の毒だな。……放りっぱなしはよくなかったかも。

「……では教会の者をギルドまで送り回収せねばならぬな。ローザよ、手配を頼めるか?」

「――わかったわ、任せておいて!」

 ローザは勢い良く返事をして裏部屋へと入っていった。手配する人を呼びに行ったのだろう。

「――皆の者ご苦労であった。後の事は教会で処理するので、君たちはもう家に帰ってゆっくりしたまえ」

 神父は俺たちのほうに向かって言った。

「……あの、神父様? 俺たちはこの町の一大事件を解決したわけじゃないですか? ……なにか、その、報酬とかあったりしますよね?」

 俺は手を揉みながら言った。

「……そういうことなら安心したまえ。諸君らの活躍は今回だけではないし、明日にでも上級冒険者に任命されるであろう」

 おおっ! ……ついに俺も上級冒険者か。冒険者として順調にステップアップできているな。

「ちなみに上級冒険者になったらなにか貰えるんですか?」

 確か中級冒険者になった時はいくばくかのお金をもらえたはずだ。今回は上級への昇格なので、それ以上を期待してしまう。

「……残念ながらそのようなものはないな」

「そんなぁ……。中級に上がった時はお金をくれたじゃないですか」

 俺は哀れみを乞うように涙目で食い下がる。

「――ないものはない。上級冒険者であれば稼げるダンジョンにもいけるので、気長に考えるのだな」

「うぅ……。ひどすぎる、こんなのってないよ」

 俺は肩透かしを食らってしまい心底がっかりしてしまう。――諦めて帰ろうと後ろを振り向くと、ふと手錠をかけたエリーとモガディシュの姿が目に映った。

「……そういえばこの二人はどうするんですか?」

 俺は神父のほうに向きなおして聞いてみる。

「教会では凶悪犯罪者に対応する機関もあるのだよ。……そこに引き渡すことになるだろう」

「――異端審問機関に引き渡すつもりですの!? ……わたくしはそこまでの犯罪はしておりませんわ! 儀式の裏取引に応じただけですのよ!」

 エリーは必死の形相で叫んだ。

「確かに通常であればそこまでのことはしないのだがな。……エリーよ、どこで道を誤ったのだ」

 神父はエリーを真剣な目で見つめて言った。……エリーは元教会のシスターだから、この二人は知り合いなのだろうか?

「――っ! ……わたくしには何も心当たりはございませんの」

 エリーはそう言った後、暗い表情で俯いてしまった。


――――――――――――――――――――


 どうやら異端審問機関の情報は機密事項だったらしく、神父はこれ以上話を聞かせまいとして俺たちを教会から追い出してしまった。――仕方ないので、俺たちはそのまま家路についた。

「……それじゃあみんな、僕はこの辺で。協力してくれて助かったよ」

 アデルが俺たちに言った。

「みんなの手柄になったわけだし、気にする必要はないぜ。……次に会うのは上級冒険者就任式か?」

 俺がそう言うと、アデルは自嘲気味に笑い返事をする。

「……多分僕はその式には呼ばれないかな。これは聞いた話なんだけど、上級冒険者に任命されるには二つ以上の大きな実績がないといけないらしいんだ」

「――二つ以上の実績?」

 俺がオウム返しに答えると、アデルは頷いて言葉を続けた。

「……ユートたちは今回の事件だけじゃなく、クラーケンの討伐もしたと聞いているよ」

 ……あ、そういうことか。……待てよ? そうなるともう一人実績が足りないやつがいるな。

「――むむっ!! わたしは上級冒険者になれないのであるか!?」

 レイチェルは驚いて目を丸くして言った。

「君はクラーケン討伐には参加していないのかい? ……だとしたら難しいかもしれないね」

「……そうか、残念なのである。……でもこれから実績を上げていけばよいのであるな。――頑張ってユートたちに追いつくのである!!」

 アデルの言葉にレイチェルは一瞬落ち込んだそぶりを見せたが、すぐに立ち直って宣言する。こういうところは俺も見習いたいものだ。

「――ははっ、その意気さ。僕も負けてられないな」

 飄々とした口調で言っているが、アデルの瞳の奥には力強さを感じる。

「……またなにかあったら遠慮なくうちのギルドを訪ねてくれよ!」

「ああ! ――また会おう!」

 アデルは爽やかな笑顔を浮かべながら手を振り、俺たちとは反対の方へと帰っていった。

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