鏡面世界のインタプリタ
嘉歴1786年 来訪者ユウヤ=ミズグチ保護に関する交信記録
機密信第1706号
外務卿閣下
電報にて急報致しました来訪者保護の件に関して詳細をご報告申し上げます。
中月末日に本邦諜報員107号が来訪者であることが疑われる男性を発見致しました。
ウティカ特別市内で官憲に捕縛されているところを見かけ、その際日本語と思わしき言語で泣き喚いていたことで日本人の来訪者である可能性に思い至ったようです。
諜報員107号はその後、官憲に賄賂を掴ませることで転移者と思わしき男性に接触することに成功。
断片的ながら日本語と英語による対話で来訪者であることを確信するに至りました。
同時に、ウティカの市警当局は彼が転移者であるとは認識せず、南西諸国言語を解さない東方系の密入国者であると誤認していることも確認出来ました。
そのため、本官の独断ではありますが諜報員107号が脱獄を幇助し、脱走させた転移者を現在諜報拠点D4にて収容中です。
本邦の関与を秘匿するため、公使館員は極力来訪者との接触を避け、諜報員107号及び現地雇いの通訳見習いが来訪者の世話をしております。
来訪者は自らを「日本国トーキョーから来たユウヤ=ミズグチである」と名乗っております。
外見は日に焼けていたため一見すると東方系民族にも誤認するのも致し方ありませんが、黄色人種であることは間違いないようです。
その他聞き出した様々な情報も彼が来訪者である事を裏付けるに充分なものでした。
幸いなことに現地雇いの通訳見習いが多少の日本語を話せたため情報硬度はかなり高いと思われます。
つきましては保護せし来訪者「ユウヤ=ミズグチ」の身柄の取り扱いに関しまして本国よりご差配頂きたく存じます。
約50年ぶりの来訪者を我が国が確保できるとすればこの上ない慶事であると本官は確信しておりますが、いかんせんウティカ市内に出現した来訪者であることから外交上の懸念もございます。
一刻も早くご高配を賜れば幸いです。
在ウティカ駐箚公使 アクボル=メルカルト
………
……
…
特秘指令第138号
在ウティカ駐箚公使
先の報告は接受せり。
独断による来訪者の強奪は遺憾であるが、本邦の関与が先方に察知されないようくれぐれも用心されたし。
なお本件は重大事につき、本国では現在対応を協議中である。
これ以上の独断専行は避け、来訪者の保護と情報の秘匿に全力を傾けるよう命ずる。
ウティカ市政府及びメティス王国より追求があった場合は可能な限り時間を稼ぎ、本件に関わった諜報員を代償に差し出してでも来訪者の身柄は確保し続けなくてはならない。
また、来訪者の処遇が如何なるものになるにせよ、来訪者が本邦に悪印象を持つような事態は回避せよ。
後に追求されないためにも公使館員並びに来訪者に関わる諜報員・使用人には《来訪者一般に関する国家間協約》の周知を怠るべからず。
方針が固まるまで、現状を維持したまま次なる指令を待て。
外務卿 ハシュドルバル=ミレス=グレア
追伸:本指令の存在が他国に知られれば一大不祥事となり、北方諸国も容喙してくる可能性が大である。本指令書は、読後速やかに処分することを命ず。
外務卿閣下
電報にて急報致しました来訪者保護の件に関して詳細をご報告申し上げます。
中月末日に本邦諜報員107号が来訪者であることが疑われる男性を発見致しました。
ウティカ特別市内で官憲に捕縛されているところを見かけ、その際日本語と思わしき言語で泣き喚いていたことで日本人の来訪者である可能性に思い至ったようです。
諜報員107号はその後、官憲に賄賂を掴ませることで転移者と思わしき男性に接触することに成功。
断片的ながら日本語と英語による対話で来訪者であることを確信するに至りました。
同時に、ウティカの市警当局は彼が転移者であるとは認識せず、南西諸国言語を解さない東方系の密入国者であると誤認していることも確認出来ました。
そのため、本官の独断ではありますが諜報員107号が脱獄を幇助し、脱走させた転移者を現在諜報拠点D4にて収容中です。
本邦の関与を秘匿するため、公使館員は極力来訪者との接触を避け、諜報員107号及び現地雇いの通訳見習いが来訪者の世話をしております。
来訪者は自らを「日本国トーキョーから来たユウヤ=ミズグチである」と名乗っております。
外見は日に焼けていたため一見すると東方系民族にも誤認するのも致し方ありませんが、黄色人種であることは間違いないようです。
その他聞き出した様々な情報も彼が来訪者である事を裏付けるに充分なものでした。
幸いなことに現地雇いの通訳見習いが多少の日本語を話せたため情報硬度はかなり高いと思われます。
つきましては保護せし来訪者「ユウヤ=ミズグチ」の身柄の取り扱いに関しまして本国よりご差配頂きたく存じます。
約50年ぶりの来訪者を我が国が確保できるとすればこの上ない慶事であると本官は確信しておりますが、いかんせんウティカ市内に出現した来訪者であることから外交上の懸念もございます。
一刻も早くご高配を賜れば幸いです。
在ウティカ駐箚公使 アクボル=メルカルト
………
……
…
特秘指令第138号
在ウティカ駐箚公使
先の報告は接受せり。
独断による来訪者の強奪は遺憾であるが、本邦の関与が先方に察知されないようくれぐれも用心されたし。
なお本件は重大事につき、本国では現在対応を協議中である。
これ以上の独断専行は避け、来訪者の保護と情報の秘匿に全力を傾けるよう命ずる。
ウティカ市政府及びメティス王国より追求があった場合は可能な限り時間を稼ぎ、本件に関わった諜報員を代償に差し出してでも来訪者の身柄は確保し続けなくてはならない。
また、来訪者の処遇が如何なるものになるにせよ、来訪者が本邦に悪印象を持つような事態は回避せよ。
後に追求されないためにも公使館員並びに来訪者に関わる諜報員・使用人には《来訪者一般に関する国家間協約》の周知を怠るべからず。
方針が固まるまで、現状を維持したまま次なる指令を待て。
外務卿 ハシュドルバル=ミレス=グレア
追伸:本指令の存在が他国に知られれば一大不祥事となり、北方諸国も容喙してくる可能性が大である。本指令書は、読後速やかに処分することを命ず。
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