悪の組織は少女だらけでした。

北国 珠

ボスはロリコン美女とかでした。

アリス「…はぇ?」

思わず気の抜けた声が漏れる。
破裂したクラッカーを持っていたのは、ボサボサとした…?ロングヘアのミステリアスな感じの美女、メガネをかけ、制服を着たセミロングの大人しそうな少女、そして金髪メッシュなポニーテールの黒のサイバー風衣装を身にまとったはつらつ系な感じの女の子。

ユウ「もう…新人さんの歓迎はもう少しソフトにしろと何度言ったら分かるんですか!?」
ロングヘアの美女「あぁ…すまないねぇ。」
ポニテの女の子「えー!いいじゃんいいじゃーん!!なんか悪いの!?」
セミロングの少女「…全く、これだからやめておこうと言ったのに…」

アリス「…えっと…?」

ユウ「ほ、ほら!新入りさん戸惑ってますよっ!!と、とととりあえずっ!!自己紹介しましょっ!ねっ!?」

必死にユウさんが取り繕って………いるのかこれは?
なんて思っていると、ロングヘアの美女がすっ、と私の目の前に来た。

ロングヘアの美女「…ふふ、可愛いわねぇ…見たところ魔法少女、って感じかしらね?いや、悪の組織なんだから、悪の魔法少女…かしら。」
ユウ「ネスアさんっ!!新入りさんを品定めしないっっ!!」
ネスア「…あらあら、失礼。つい癖でねぇ…あぁ、私は『蛇宮ジャミヤ ネスア』。ボス課の課長で、メデューサ担当。もちろん色々石に変えられたりするけど、普段は封じてるから安心して近づいてね♡」
アリス「わ、わかりました…課長」
ネスア「もぅ~ネスアでいいわよ、ネスア!」
アリス「…は、はい、ネスアさん…」
少し圧倒されていると、ポニーテールの女の子がぴょんぴょんしていた。
アリス「どうされたんですか…?」
ネスア「あぁ、ミレアはまだ少しだけコミュニュケーションが苦手みたいでねぇ…ま、可愛がってやっとくれよ。ミレア、自己紹介は?」
ミレアと呼ばれた少女は、飛び跳ねるのをやめて、口を開いた。
ミレア「あたしは【M-30a】…いや、ここでは『未時ミトキ ミレア』…なはず!ボスアンドロイドで、【DIRTY】の中では唯一のサイバー系ボスなんだよっ。」
アリス「ボスアンドロイド…私となんか相反する存在な気がするんですけども…」
セミロングの少女「いいの、ここはいくつもの世界線の女のボスが集まるところなんだから…」
アリス「世界線…?」
ネスア「もう、シオリ。堅苦しいことは後でいいの。自己紹介が先、でしょう?」
シオリ「…まぁいいけど。私は『闇百合ヤミユリ シオリ』。学園物のダークサイドのボスを担当してるわ。ちなみにメガネは伊達よ。」
アリス「…は、はぁ…私は『黒染 アリス』です。よろしくお願いします…」

こうして、先が思いやられすぎる自己紹介は終わった。

ネスア「さて、と。ひと通り自己紹介も終わったことだし…アリスちゃん、質問とかはあるかしら?」
アリス「…そうですね、一つ気になるのは……

……四天王並にボスが少ないところですかね。よくやっていけるなぁと。」

ミレア「知らないなー」
シオリ「知らないですね…」
ネスア「ユウちゃん、分かるかい?」
ユウ「そりゃ分かりますよ。

原因はネスアさんたちですからね。」

三人は驚いた表情でユウの方を見ている。自覚ないのか…?

アリス「その原因って…なんなのですか?」

ユウ「まず…ネスアさん達のLvが高すぎますっ!色々と!!ネスアさんはなんなんですかLvカンスト(Lv99)って!!そしてシオリさんもステータス何とかしましょうよ!ミレアさんは……指摘するとこありませんが…」
アリス「ネスアさんのそれは怒られることなんですか…?」
ユウ「いいえ…スキルLvの話なんです。ネスアさんは、メデューサの石にさせるスキルと、回復のスキル…ここまでは問題ないのですが、最後のスキル…《ロリコン》のレベルが…限界突破しちゃってカウンターがもう2週目の62Lvなんです」
ネスア「いいじゃないの…小さい子が可愛いのだから。これは母性なのよ…!」
ユウ「知ってますよ、児童ポルノギリギリの画像とか持ってるの…」
ネスア「ナンノコトカシラマッタクオボエガナイワネ(棒)」
ユウ「そして常識人……のように見えるシオリさんは…ステータス《生徒会長》、《頭脳明晰》…ここまでは全く問題ありません。というか、キャラ的に無いと困ります。

…問題は三つ目のステータス…《姫女子》です。」
シオリ「!!!」
ユウ「これは、《百合女子》とも表されるステータスですが…なんで公開したんですか…」
シオリ「いいじゃない…好きなものは好きなんだから…」
ユウ「…もうついてしまったスキルやステータスは変えられませんし、もう仕方ないのですが、お二人はおおっぴらにしてしまうので、ボスフロアは新人が入っては抜け、入っては抜けの繰り返しなんです。仕方なく、この前アンドロイドを導入しましたが」

アリス「…へぇ…」
一瞬もう抜けるという選択肢が脳裏をよぎったが、せっかくの女性だけの職場。抜けるわけには行かなかった。

ユウ「ま、そんな訳でして、アリスさんは大切に扱って下さいね。では、私はこれで」

そう言って、さっさとエレベーターに乗り込んでしまった。


アリス「あ……」

そして私はここで思い出す。自分が《魔法少女》ステータスを持っていたことを。

ネスア「アリスちゃん…後で…食事でも行きましょう…?奢るわよ…♡」

後ろでとてつもない速さでペンを動かす音がするのは気のせいだろう。うん。
アリス「あぁ…いえ、遠慮しておきます…」
ネスア「あらぁ…残念…」
そう言うとネスアさんは耳元でこう囁いた。
ネスア「ねぇ…気持ちよくなりましょう…ね?」

ぞわっとした感覚が背筋を走る。

…なんだろう…この感覚は…
……あぁ。なるほど。

私は魔法で手にナイフを作り出すと、

自分の足に突き刺した。

アリス「…っう…」

三人はこっちを見て、唖然としている。

そして…引き抜き、即魔法で治す。ナイフは消す。

出血は、全くしない。ただ、痛みが走るだけ。

アリス「ふぅ…魅了するのはやめましょうね、ネスアさん。」

どこかで聞いた。魅了は痛みで治る、と。

ネスア「あ、あぁ…すまなかったね。」

そそくさとネスアさんが離れる。

シオリ「…すごい。新人であそこまでネスアの誘いを断れるのは今、アリスだけだわ。」
ミレア「すごいねアリスちゃん!!」

アリス「あ…あはは…」
シオリ「…うん、まぁ…あの課長に耐えられれば、このフロア全域が今のところ4人だけの物で、ほぼ自由に使えるから…そこがボス課のいいとこかな…あはは」
アリス「なるほど、だからボスフロアなんですね」
シオリ「そゆこと。昔はたくさんいたからこの広さなんだけどね。今は自由空間みたいになっちゃってる。まぁ、よろしくね、アリス。」
アリス「よろしくお願いします、シオリさん」

…どうしよう、やはり先が思いやられすぎる。

この先…どうなるんだ…?

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