才能が全ての世の中で、オレの才能は器用貧乏……

矢追 参

第十一話

 ☆☆☆


 結局、四人にクレープを奢らされて財布から野口が消え去ったオレは……決戦前日にすっかり意気消沈して寮へ帰る羽目になった。

 倒れるようにベッドへダイブしたオレは、不意にスマホディスプレイへ『ルアイン』からメッセージが届いので内容を確認してみる。

 送信者は千石で、明日頑張れという激励だった。他にも一ヶ崎、二階堂先輩、四葉からも送られてきたのだが……あるうぇ〜四葉さんは僕と連絡先交換しましたかぁ……?

 オレはカタカタ震えながらもシャワーを浴びて、久々の自由な時間を使ってアニメを観たり、ゲームしたりなんかしてみる。

 オレのスマホちゃんには色々とアプリが入っているが、最近片手間にやっているのは将棋のアプリである。全国の誰かとオンライン対戦ができる無料アプリで、オレは時たまそれで将棋を指している。

 今日も将棋を指すかとスマホと睨めっこし、対戦相手とマッチングしたオレは暫く無言で画面を見続ける。

 相手は……『玉姫』というプレイヤーで飛車の前の歩を先手で進めてきた。まあ、将棋の細かいルールは面倒だから省くが……将棋は読み合い。定石だとか、戦型だとか覚えて相手の手を読み切れば極論勝てる。まあ、素人なオレが何を言っても様にはならないのだが……。

 サッカーの特訓の合間に息抜きとしてやっているのだが、中々に時間も潰れて面白い。オレの手のひらの上で弄ばされる相手が大変滑稽で楽しい。逆にやられるとスマホ投げたくなるけど……。

 暫くしてオレが投了して対局終了……うん、ちょっと相手が強かったよね。無理だったね。

 オレは軽く伸びをし、そろそろ眠るかとベッドの中へモゾモゾ潜り込んでいく。あとはスマホちゃんで目覚ましをセットして……と、スマホちゃんを起動したところで再び『ルアイン』にメッセージ――というか、着信があった。

 はて、こんな時間に誰だろうと思ったらディスプレイには二階堂先輩の名前が出ていた。

 出てみる。

『ハァハァ……お兄さん今どんなパンツ履いてるん?ハァハァ』
「何ですか?」
『時に少年はトランクス派かね?それともブリーフ?』
「おやすみください永遠に」

 オレは二階堂先輩との通話を切り、とりあえずブロックしておいた。

 ふぅ……あの人やっぱり頭がおかしいな。

 オレは今度こそ目覚ましをセットしようとして……またまた『ルアイン』に着信が来る。今度は一ヶ崎だった。

 出てみる。

『ハァハァ……お兄ちゃん今どんなパンツ履いてるん?ハァハァ』
「何の用だ?」
『時にシュウくんはトランクス派?ブリーフ派?もしよかったら見せて!』
「張っ倒すぞ」

 オレは一ヶ崎との通話を切り、二階堂先輩と同じくらいブロックしておく。

 ふぅ……アホ過ぎて付き合ってられないな。

 多分、二人ともイラストや小説に使うネタのために訊いてきたのだろう。だとしても、頭おかしいが……。

 というか、あいつらほぼ同時期に男の裸を題材にしたり、パンツ題材にしたりしてるけど……何なの?普段は仲悪いけどめっちゃ趣味あってるじゃん。もう、仲良くしようぜ?

 で……案の定というべきか、下らないことを考えていたオレのスマホちゃんに『ルアイン』からの着信が掛かってきた。予想通り、今度は四葉である。

 出てみる……か。

「もしもし」
『ハァハァ……ち、千葉くん今からどんなパンツ……は、履いてるの?ハァハァ』

 おい待て。お前は何でそれを訊いてくるの?何となくわかってたけどさ……こう流れ的な感じで。でも、お前は本当に何でなの?なに?痴女なの?

「何の用だ」
『う、うん……一ヶ崎さんと二階堂先輩が急に千葉くんに連絡取れなくてなったって……それでアタシが二人の代わりに、千葉くんに電話したんだ。迷惑……だよね。明日は大事な勝負だし……』
「いや……構わねぇよ。それより、最初のパンツ云々はなんなんだ?」
『言ってって……お願いされたの。二人から』

 やっぱりあいつら……本当は仲良いいだろ。

 というか、オレが奴らをブロックしたせいで四葉に皺寄せがいったというのなら申し訳ないことをした。痴女とか思って悪かったな……。

『あ、そういえばパンツついでに訊いておきたいんだけど……』
「ん……?なんだ?」
『千葉くんって……女の子の下着はどんなのが……そ、その……いいかな!?……え、エッチなのかな?それとも……可愛いのかな!?』
「あまり下着には詳しくないから何とも言えないけれどそれは千差万別するところだな。オレとしてはスケスケでエッチィのは推すところではあるんだが清楚で可憐な純白というのも捨てがたいところだ。だが女性は下着だけでなくニーソやガーターベルト、網タイツ等の神器を所有しているわけだしまた色々と組み合わせがあるので本当に何とも言えない。ただ、オレの一個人の見解としてはやはり黒色のティーバッグとかはかなり推すところではある。なんならガーターベルトも有り。というか推奨――」

 オレはそこまで語って……ハッと我に帰った。おっと、語り過ぎた。

『……く、詳しいね』
「…………あ、はい」
『うん……黒と白の……うん。じゃ、じゃあ……あんまり遅くなっても申し訳ないから……き、切るね?明日……頑張って!』
「おう……頑張る」

 そして、プツンっと四葉との通話が切られた。

 オレは暫くスマホちゃんを眺めて………………数分後に目覚ましをセットして眠りについた。




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