記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第36話 落とし子討伐作戦 前編



サムライブレードによって腕を切り落とされた落としスポーン、斬り飛ばされた腕がばらばらの歯車や螺子になり、落としスポーンの切断面に接合して腕を再生していく。


「え? 再生すんの!? それじゃあ、俺にはあいつ倒すの無理だわぁ」
「一瞬で、希望が絶望に!?」


落としスポーンの腕が即座に再生する様子を見て助けに入った男があきらめの言葉を口にする。
助けが来たと喜んでいた樟葉は男の言葉を聞いてショックを受けていた。


「樟葉! みんな、こっち!!」
「静様!? あ、みなさん、向こうです、走って!!」


樟葉達の後方から聞こえる呼び声。樟葉の狐耳がその声を聞き取るようにピクリと動き、声がする方向を向く。
振り向いた樟葉の視線の先には水鏡神社の主である静の手招きする姿があった。


「アズラエル、大丈夫!?」
「な、何とか大丈夫です!!」


樟葉に続くようにユイとアズラエルが駆けだす。だが、アズラエルはユイを庇う際に受けた落としスポーンの礫のダメージが残っているのかふらついてしまう


「俺が背負ってこうか!? お姫様だっこでもいいよ!? 大丈夫、絶対へんなとこ触んないから、ね!?」
「母上、この人恐いです!?」
「時と場合を――」


ふらつくアズラエルを支える男は真剣な表情でアズラエルに迫る。
迫ってくる男に恐怖を感じたアズラエルは涙目で母親であるユイに助けを求め、ユイも非常時にふざけている男を怒ろうとする。


落としスポーンはそんな三文芝居のコントも気にせずに叩き潰そうと拳を振り下ろす。


「おおっとっ!!」


即座に反応したのはサムライブレードを持った男。振り向きざまにサムライブレードを居合抜きして、迫りくる落としスポーンの拳をまた切り落とす。


(何、今の!? 『一太刀で3回斬った』!?)


ユイは男の居合抜きを目撃して驚愕する。一振りしか剣を振りっていないのに、なぜか三か所、斬撃が落としスポーンの腕に与えた現象を目撃した。


「ちっくしょう、俺じゃあ脆いとこしか斬線が通らねぇ!! んじゃま、俺がフォローする、走れ!」
「最初っからそうやってよ!?」
「あわよくばクンカクンカハスハスって思ったんだよ!?」


落としスポーンの腕を切り落とした男は手ごたえからそんなことを叫び、殿を申し出る。
真面目にやれば実力者なのにふざけている男に向かってユイは怒鳴るとアズラエルを連れて走り出す。


また切り落とした腕がバラバラの螺子と歯車になって落としスポーンの体に戻っていくのを見て男は舌打ちする。


(あー、情けねぇ……やっぱ、俺じゃあまだまだ『爺ちゃん』には届かねぇな……)


再生中は落としスポーンは回復に専念しているのか、攻撃してくる様子はない。
ユイ達が逃げ切ったのを見ると男も走り出し、静がいる奥の社へと向かう。


「大丈夫? アズラエル」
「はい、何とか鎧で威力は殺せてましたし」


奥の社と呼ばれるお堂へと逃げ込んだユイ達。
ユイはアズラエルが怪我を負っていないか確認している。


「おっどろいたよー、まさか樟葉まで巻き込まれるとは……あ、ここはご神体のおかげで向こうは見つけられないみたい」


奥の社に隠れていた水鏡神社の主、水鏡静は狩衣と呼ばれる装束を身に纏い、黒髪のポニーテールをした活発そうな印象を持つ少女だった。静は樟葉と再会し、お互いの無事を喜んでいる。


「………」


男はそんな女性たちを見て、ご神体に柏手を打つと拝み手で祈りを捧げる。


「? 何をやっているのですか?」
「ああ、うん」


その様子を見た樟葉が男に声をかける。男は再度ユイ達を見回して


「いやー、このすんばらしいロリっ子ハーレム状況に招いてくれた神様にお礼と、あと時間延長のお願いをね?」
「………」


男は軽薄な笑みを浮かべてご神体に願った内容を樟葉に伝える。樟葉は無言で男から距離をとった。


「助かったからお礼は言っておくけど……あなた、誰? なぜあの渓谷にいたの?」
「あ、俺の名はロリー・コンダー……あ、ごめん、嘘。本当の名前は士郎、20歳の冒険者で語尾にのじゃをつけるロリババアな恋人募集中ですっ! いや、ちょっと依頼中にごたごたに巻き込まれてね?」


ユイが不審者を見るような目で男を見る。男は最初悪ふざけで偽名を名乗ろうとして、女性陣の汚物を見るような冷たい目に屈し、本名を名乗る。


「ごたごた?」
「ああ、フソウの新大名、徳川の殿様からの依頼でね、メイリュウ神社に奉納されるアメノハバキリの警備を受けたんだわ」
「ここは水鏡神社の奥の社だよ? 全然場所違うよ」


士郎はフソウの冒険者で、大名である徳川からアメノハバキリの警護の依頼を受けたという。
静が士郎の言葉に異を唱えるように現在地は水鏡神社の奥の社だと伝える。


「簡単に言うと、アメノハバキリを狙って死霊悪霊の大軍団が攻め込んできたんだわ。それを俺がばっさばっさと切り伏せてたら、一人だけ、馬鹿強い本物の侍の死人がいてさ」


士郎はその場で寸劇を始めるように大げさに体を動かし、自分が受けた依頼の状況を語る。


「騒ぎを聞きつけた徳川の兵やらメイリュウ神社の氏子やらが駆けつけて色々と状況が変わって、やる気をなくした敵の侍が符で逃げようとしたとこで……その転移に巻き込まれちゃいました、テヘペロ」


こつんと自分の頭を軽く叩きながらウィンクしてチロッと舌を出しておどける士郎。その仕草を見ていた女性陣はイラっとした。


「その時の侍は?」
「あー、うん……転移した先が、違ったみたいだわ」


メイリュウ神社を襲撃した侍の行方を聞くと、士郎は歯切れの悪い口ぶりで転移先が違ったという。


「任務自体も、戦う以外は興味なーい、っておっさんだったし、ま、もういないんじゃね?」
「まぁ、厄介事が増えないって言うなら、それでいいけど」


士郎の言葉に納得のいかないユイだが、一旦メイリュウ神社を襲ったという死霊達のことは頭の隅に追いやり、現在の状況の打破を考える。


「そうね、その死人侍がいないなら、アレをどうするか、だけど……」


静がお堂のドアを開けて外の様子を窺う。錆びた歯車でできた巨人の落としスポーンはまだ徘徊している。


「「とても、隠れて逃げ切れる相手とも思いません。とはいえ、倒せる相手では――」
「……あります」


樟葉も外の様子を覗き込んで、討伐でいるとは思えずにいたが、アズラエルが静かに方法があると伝える。


「私と母上なら、可能です」
「アズエル、私の炎では足止めはできても――」
「その炎の威力を、私の力で強化します。理論上、あの落としスポーンならば打倒可能です!」


アズラエルの方法を聞いてユイは否定しようとするが、アズラエルは自分の力で増幅させれば勝てると熱弁する。


「た、ただ、時間はかかりますし、射程距離も落ちます。加えて、私ではそれでも当てられるか……」
「アズラエル、その当てる役は私でも?」
「……多分、可能です」


増幅させることはできるが、時間がかかることと、アズラエルでは当てれれるか不安であると伝える。
ユイが立候補すれば、しばし悩んでアズラエルは自分より可能性が上であることを伝えた。


「…………時間は、どんだけ稼げばいい?」
「1ぷ……40、秒、いただければ……」


話を聞いていた士郎がその攻撃方法に必要な時間を聞く。
アズラエルは最初1分と伝えようとして、そこまで無理はさせれないと思いとどまり、40秒と言い換える。


「よーし、一分な? それ以上は、ビタ一文まかんないよ?」


士郎は着流しの左側を脱ぎ開き素肌を晒し、鞘を締め直す。


「よし、私も出来る事は手伝うよ!」
「樟葉もお手伝いいたします!」


神主である静とその従者である式神樟葉も協力を申し出る。


「………」


アズラエルは周りの助力の申し出にどう答えたらいいかわからず、困惑しながら涙を浮かべる。


「いいのよ、人を頼っても……足りない分は、みんなが補うわ。全力でやりなさい」
「はい、母上、みなさん……!」


ユイがアズラエルの肩を叩きほほ笑む。アズラエルは涙を拭うと頭を深々と下げて礼を述べた。


(――しゃあねぇ、似合わねぇけど、気張っていくかね)


士郎はそんなアズラエルの姿を見て、静かに覚悟を決めた。

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