記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第30話 新たな仲間、アズラエル



「え? 鎧を脱ぐのですか?」
「ん、脱げるんやったらやけど―――」
「了解しました」


チャンスとユイの魔力から生まれた式神。
結良は生まれたての式神に危険がないか、どんな性能を持っているのか調べるために式神に鎧を脱ぐように指示する。


「その鎧、維持に魔力いるやろ?」
「しかし、ないと戦闘能力が著しく低下します」


依頼を受けて魔力を符に込めたら娘が生まれた。
一言で表せばそんな短い言葉で終わるが、チャンスとユイは今起きている状況に頭も感情も何もかもが追い付かず、結良の指示で式神が鎧を脱いでるのを見ていた。
とりあえず二人が最初に思ったのは『あ、その鎧って脱着可能なんだ』ということだった。


「これでよろしいでしょうか?」
「あ、そやね、生まれたばかりの式神に服なんてあるはずなかったね」
「ふお!?」


鎧を脱ぐと、中から現れたのはベリーショートの金髪。意志の強そうな目力のある釣り目、瞳の色は紫で濡れたまつげが特徴的で、中世的な顔立ちとシミ一つない色白な裸を晒す。


結良は一糸まとわぬ式神の姿を見て、生まれたばかりの式神に下着や服といった概念はないことに納得する。
チャンスは変な声を発声しながら首筋をつりそうなほどの勢いで後ろを向く。


「よ、よし、よく目をそらしたわよ!? チャンス」
「? どうされました? 父上?」


ユイは咄嗟に後ろ向いたチャンスの行動を誉め、式神はなぜ父親が後ろを向くのか理解できずきょとんとしていた。


「も、もういいかな?」
「うん、もう大丈夫よ」


慌てて結良が自身の衣装を式神に与えて着替えさせる。
チャンスは着替える音が聞こえなくなった頃に声をかけて振り向く確認を取り、ユイが振り向く許可を与える。


「? 防御力が大幅に低下しました」


振り向いた先にいたのは少年とも少女ともどちらともとれる人型の式神が作務衣といわれる衣装を着用し、その防御力の薄さに率直な意見を述べる。


「……時に防御力より重要なこともあるんだ」
「なるほど、博識ですね、父上」


チャンスは式神の姿を見てぼそりと呟き、呟きが聞こえた式神は父親と認識するチャンスの発言に感銘を受けていた。


「で? これってどういうこと?」
「二人の魔力、その相性が奇跡的に良かった、としか言えまへん。ウチかて、このレベルで存在確立しとる式神見とるんは、初めてやわ」


ユイが結良に詰め寄るように問えば、結良は静かに逆切れして反論する。


「……思わぬ実験結果やわ。うん、いろいろと基礎から練り直しやわ、ほんま……そういう意味では、これ以上なく依頼はこなしてもろたわ」
「それで……あの子は、どうなるの?」
「わからん」
「え?」


ユイが生まれた式神の処遇を聞けば結良は一言わからないと伝える。


「どうなされました、父上? 心なしか、表情が硬いようですが?」
「あ、うん、僕もそう思う……」


一方チャンスは子犬のようになついてくる式神に戸惑っている。


「何から何まで、異例尽くしや。あれだけの式神や、今日明日に消えるってことはないやろ」


結良は式神に懐かれて、どう接したらいいかわからずたじろいているチャンスの姿を見ながら自分の予測をユイに伝える。


「あれはもう受肉までしとる、もう一個の生命体。独自で魔力を精製し、自身に循環させとる。それだけの『存在』やってことや――むしろ、逆が問題や」
「逆?」
「へた打つと、あの式神……エルフ――いや、ドラゴンクラスに生きるかもしれん」
「それって――永遠に生きるってこと?」


結良は生まれた式神の寿命の予測を立てる。エルフの寿命は約千年、ドラゴンは永遠に生きるといわれている。


「……せやな、外的要因で死ぬことはあっても、寿命はないかもしれん。……正直、そっちの方が問題やで? うちの技術じゃ、式神としての意識を、そこまで定着させられてるとは思えん」
「え?」
「――あれは力の塊や、もし人に害なす悪意を持ったら……どんな災厄になるかわからん。今やったら生まれたばかりや、将来害になるぐらいなら……」


結良は符を取りだし、式神を睨む。


「ふざけないで!!」


庭園にユイの叫びが木霊する。


「母上?」


その叫び声を聞いて式神が心配そうな顔でユイを見つめる。


「そんな理由で、命をっ、命を語るな!! 誰だって、誰だって、生まれ方なんて選べないのよ! 偶然でも、望んで得た力じゃないのよ!?」
「………」


結良の一言はユイの心の傷に触れたのか、涙を流しながらユイは訴え、そして叫ぶ。結良もチャンスもいきなり激高して叫ぶユイに驚き、動けずにいた。


「 将来、危険になるかもしれない? 自分たちを脅かすかもしれない!? そ、そんな、そんな理由で……人を……人をっ勝手はどっひ!?」
「そこまでだよ、ユイ」


勝手はどっちだと叫ぼうとしたユイ。だが、叫ぶ前にチャンスがユイのほっぺを引っ張り妨害しながら式神を指さす。


「あ、う……」


式神は涙を浮かべていきなり激高し叫びだしたユイを心配そうに見ている。
チャンスは式神に心配させないように微笑むと、結良の方を向く。


「生み出した責任がある、あなたがそう思うのもわかります」
「うん、で?」


チャンスは結良の言い分もわかると伝える。結良はだからどうしたといった感じで冷めた目でチャンスに続きを促す。


「えっと、その……」


結良、ユイ、式神がチャンスを見つめる。その視線に戸惑いながら、チャンスは意を決して口を開く。


「……どうか、生まれて初めてできた僕の『家族』を……奪わないで、ください……」
「…………」


その少年の矛盾に満ちた心の吐露を、理解出来るだけの機微があった。その場に居た、三人には。


「わかったわ、結局悪者になるんわ、ウチだけやな」


結良は不服そうに頬を膨らませて、符を袖に収納する。


「勝手にしぃ。どうせ、最初からウチの実力もっても殺せんかったんやし……寿命に関しても憶測、最悪の過程も憶測、ウチには、自論を証明する術があらへん」


結良は両手を上げてお手上げのポーズをとってため息をつく。


「チャンスはんにユイはん、そこまで啖呵切ったんや、吐いた唾は飲まんと、自分らで面倒みいや!」
「「……はい」」


結良は二人に生まれた式神の面倒を最後まで見ることを約束させると押し殺した吐息を漏らした。一部始終を見ていた式神は聞こえなかったことにした。


「あ、の……私はいていいんでしょうか? 生まれてきてよかったのでしょうか?」
「もちろんだよ! 生まれてきてありがとう、僕たちの家族になってくれてありがとう。家族初心者だけど頑張るよ! えっと――」


おずおずと式神は自分がいていいのか不安そうに聞く。チャンスは式神に優しく微笑み、生まれてきたことに、家族になってくれたことに感謝を述べて、名前を呼ぼうとして、名前を聞いていないことに気づく。



「あ、そうでした、名乗っていませんでしたね? 私とした事が、不覚。母上にその魂の炎を、父上に骨肉をいただきし我が魂の名はアズラエルと申します」
「ああ、よろしくね。アズラエル」
「はい、父上、母上」
「いきなりお母さんになったけど、こちらこそよろしくね」


式神は自らをアズラエルと名乗り、チャンスもユイも戸惑いながらもアズラエルを受け入れる。


「何とか奇麗に纏まって良かったわ。もっと色々安全装置とか考えなあきまへんな」


はーっと長く深い溜息をつく結良。今回の実験結果を見てもっとリミッターなど安全装置を符に付与することを考える。


「ところでチャンス……」
「何? ユイ?」
「この子の事どう説明しよう」



ユイの一言でビシリと固まるチャンス。


「どうしよう………」
「うちは管轄外やで」


チャンスとユイは途方に暮れ、結良はこっち見るなと言いたげにバッサリと切った。

          

「記憶のない冒険者が最後の希望になるようです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く