記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第19話 巡り巡る命、消えぬ命の灯



(坊主よく聞け、確かにお前のお母ちゃんとお腹の子は死んだ。だがな、死んだ魂ってのは天に昇る。そして、天に昇った魂はいずれまた生まれ変わって地上に戻る)
(誰……)


朦朧とした意識の中、筋骨隆々のひげもじゃの中年親父が諭すように声をかけてくる記憶がフラッシュバックする。


(そいつはな、輪廻転生っていってな。坊主の母ちゃんもお腹の子も生まれ変わる。今度は守れるように強くなれ! また生まれ変わる坊主の母ちゃんとお腹の子だった命を護れるぐらいに、目の前で奪われる命を守って救えるように……坊主の心が救われるように……俺が持つ全てを教えてやる!! さあ、業怒の時が来た。大いなる業怒は激怒の時。大いなる激怒は憤怒の時。汝、目覚めの時が来た。我、汝を導かん。汝の業怒を解き放て! 汝の名は最後の希望なりっ!!)


チャンスは意識を取り戻し立ち上がる。叩きつけられた痛みを無理やり押し込める。



「もう誰も僕の目の前で死なせない! 今度こそ僕が……護るっ!!」


その雄叫びと同時チャンスはファルシオンをデュラハンに向かって投げる。
ショーンとその背後にいる母親ごと突き刺そうとするグレートソードに巻き付き妨害する。
デュラハンの右手に抱き抱えられたフルフェイスの頭部が忌々し気にチャンスを睨み、また引き倒そうと鎖を引っ張る。


「うおおおおお!!!」
「おいおい、まじかよっ!? 全身鎧を着たデュラハンを投げ飛ばしただとっ!!」


今度はチャンスが鎖でデュラハンを引き倒し、外へと投げ飛ばす。


「はああぁああっ!!」


チャンスはそのままデュラハンへ向かって走り、飛び蹴りを食らわせる。
デュラハンが吹き飛ぶと同時に鎖の拘束を解除し、右手のファルシオンを舵の構え、左手のファルシオンを猪の構えをとる。
デュラハンも起き上がるとグレードソードを屋根の型に構える。


「チャンスとデュラハンが睨み合って動いてない?」
「二人の足元をよく見てみな、嬢ちゃん」


村長家の裏から様子を窺っていたマトイがチャンスとデュラハンが睨み合って止まったかのように見えてた。
怪我した部分を抑えながら駆け付けたモヒカン兄弟がチャンスとデュラハンの足元を指さす。
チャンスとデュラハンはお互い睨み合いながらも、少しでも有利な位置を得ようとし、それを妨害するようにすり足でお互いじわりじわりと移動し続けている。


「はあぁぁぁっ!!」


チャンスの掛け声と同時にファルシオンから炎が噴き出す。轟々と吹き上がる炎はローラン村を明るく照らす。


「いくぞっ!!」


チャンスは掛け声と同時に駆け出し、デュラハンもチャンスに向かって駆けだす。
お互いの剣が交差し、ぶつかり合う。
チャンスは二刀のファルシオンで怒涛の連撃を繰り返す。デュラハンはその連撃をグレートソードや鎧の固い部分で受け、隙をつくようにグレートソードで反撃してくる。
チャンスはファルシオンを交差させて受け流しながら跳躍し、デュラハンの頭上からファルシオンを振り下ろする。デュラハンはグレートソードで受け止めてチャンスを吹き飛ばす。


「おいおい……あいつ何者なんだ? デュラハンと互角に戦ってやがる」


加勢に入ろうと機会を伺っていたモヒがチャンスとデュラハンの戦いを見て感嘆の声を漏らす。


「嬢ちゃん! さっきの鏡で太陽を浴びせるんだ! 俺達じゃ手助けできねえ、嬢ちゃんとその鏡でチャンスを助けるんだ」
「うっ、うん! 望郷の鏡よ、太陽の輝きを映し出せ!!」


カンのアドバイスに従うようにマトイが望郷の鏡をデュラハンに向けて太陽を思い浮かべる。
鏡からあふれ出る太陽の光をデュラハンが浴びると心なしか、デュラハンの動きが鈍ったように見た。


「チャンス、今だよ!」
「ああ! めでたしめでたしのハッピーエンド、返してもらうよっ!!」


チャンスはファルシオンを十字に交差させるように構える。その構えはチャンスの記憶の中にある名前を思い出せない師が、自分に生まれ来る命を護るために伝授してくれた必殺技の構えだった。


「炎王十字剣!」


吹き上がる炎を纏うファルシオンがデュラハンを十字に斬り裂く。


「浄火っ!!」

チャンスの掛け声と同時にデュラハンが炎に包まれ、焼き尽くされていく。


「すげぇ……デュラハンを倒しやがったぜ、ヒャッハー!」
「あ、兄者……俺はぁ……夢を見てるんじゃねえ……よな……?」


デュラハンがチャンスによって討伐されたのをみたモヒカン兄弟、兄のモヒは自分のことのように喜び、弟のカンは目の前で起きたことが信じられないでいた。


「おかあさんっ! しっかりして!!」


勝利に酔いしれるチャンス達に冷水をぶっかけるようにショーンの悲痛な叫び声が響く。


「うっ……生まれるうう!!」
「産気づいたぞ! 産婆呼んで来い!!」


ショーンの叫び声の後聞こえてきた母親と父親の声で村長宅は火が付いたような騒がしさとなる。
村長宅に産婆が駆け込み、出産の準備が始まった。


「……随分となげぇな……」


村長宅前で待機しているモヒが呟く。
正確な時間は分からないが、体感でかなりの時間がたっている気がした。
ショーンは待ちくたびれて眠ってしまい、父親は家の前で落ち着きなくうろうろしている。


「次の陣痛きたらいくよ、支度しな!! 息吸って、吐いて、吸って、吐いて、止めて! ――いきみな!」
「うういだああああ!!!」
「痛いのは生きてる証拠さッッッ!!!」


産婆の怒鳴り声と母親が痛みに叫び狂う声が村に響く。


「よーし、もう一回!――ほら出てきた、もう……」


産婆の声が不意に途切れる。


「……吐きな! こら、吐きなったら!」
「———っ!!」


ショーンの父親が我慢できずに蹴破るように村長の家の戸を開けて中に流れ込む。
チャンス達も母親のもとに駆け付ける。そこには産婆が生まれたばかりの赤子の尻や背中を必死に叩いている姿があった。


「ねえ……私の赤ちゃん……生まれたんでしょう? なんで……なんで声がしないの……」
「喉ッ! 何か飲み込んで詰まらせてる……ッ!吐きなッ! 吐けッ! 吐けったらッッ!!」


出産疲れでぐったりした母親がか細い声で生まれた我が子の行方を求める。父親は目の前の現実が受け入れられないのかただ茫然としていた。


「っ…………! ほら吐いた、泣くんだよ!! 泣きな!!」


悪夢の中にいるような気分が村長宅を包み込む。デュラハンを倒したのに、目の前で、ゆっくりと――――生まれたはずの生命が、力を、失っていく。


「…………ッ、貸して。こんな結末……僕は認めないっ!」
「チャンス?」


ゆらりとチャンスが産婆に近寄り、産声を上げない赤子を産婆から抱き寄せる。


(強さだけじゃ人は救えねえ、知識も蓄えろ。知恵と力二つ揃えば最強だ)


名前を忘れた師の言葉を思い出す。師は強さだけでなく知識もたくさん教えてくれた。
その知識の中には新生児の心臓マッサージのやり方もあった。


(思い出せっ! 思い出せっ! 命を救う方法を! そう、気道を確保して、確か……1秒2回くらいのペースで胸を指で圧迫!)


生きろ! その思いを込めてチャンスは心臓マッサージを繰り返す。


「お願いだから……生きることを諦めないでっ! ここは! この世界はッ! 君が生まれてくるこの場所はとても素敵なところなんだから――――ッッ!!」


「おぎゃああ! おぎゃああ!!」


夜明けと共に赤子の産声がローラン村に響いた。


「奇跡だ……」
「ああ……太陽の女神アルテナのご加護だ……」


一部始終を見ていた人々が呟く。デュラハンの死の宣告をはねのけ、絶望的だった赤子の命を救った英雄の姿を見た。


その英雄の名はラスト・チャンス。少年の切なる願いを聞き入れて絶望を希望に塗り替え、バッドエンドをハッピーエンドに変えるためにやってきた、最後の希望ラスト・チャンスだ。





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