記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第14話 貿易港都市セブンブリッジ



「旦那様、セブンブリッジの門前町が見えてきましたよ」


屋根付き二頭馬車コーチの御者台に座る御者のリマスがそう声をかける。


「門前町?」
「街に入るための正門周囲にできた町です。街に入る旅人たちを相手にした商売から店ができ、住民税を払えなかったり、城壁内の市民権を求める自由民が周囲に家を建てて生まれた場所です」
「わかりやすく言えばスラムかな」


チャンスが門前町という聞きなれない言葉に疑問を抱くとダーヴィスが大まかな説明をしてくれる。
そしてダーヴィスの説明が終わるとマトイが門前町がどんな場所か短い言葉で例える。


「まあ、スラムといっても治安の悪い場所は門や街道から離れた奥の方ですからね。そちらに行かない限りは安全ですよ」


街道には同じようにセブンブリッジを目指す旅人や商人が見受けられる。街道脇には宿屋や馬車や馬具の修理を請け負う鍛冶屋が立ち並ぶ。
また手続き待ちの旅人たちを目的にした屋台や曲芸師が芸を披露する広場が設けられており、吟遊詩人の演奏や屋台から料理の匂いが漂う。


「あの革を売っているのは?」
「ああ、都市に入る際武器を鞘に入れるのが決まりなのですが、鞘がないむき出しの武器を持ち歩く冒険者や傭兵の場合、あのような革屋で鞘を仕立てて封印してから門に並ぶんです」


チャンスが見かけたのは斧と動物の皮の焼き絵の看板。どんな店か馬車内にいるメンバーに質問すれば、ダーヴィスが説明する。
門前町を通り抜けてセブンブリッジの正門へと向かう。セブンブリッジの街を囲う城壁は歴史を感じる石造りで蔦や苔などが生えている場所も所々見受けられる。
胸壁の上部には見張りが立っており、クロスボウを持ち歩いて巡回していた。


「あれ、あっちには並ばないんですか?」
「あっちは旅人用の列です。私はセブンブリッジの市民権を持っているのであちらの列になります」


屋根付き二頭馬車コーチは街に入る手続きをしている列の脇を通り抜けていく。
チャンスが声をかけるとダーヴィスが市民権を持つ人用の列があることを伝えそちらに並ぶ。
ナリア達も市民権があるのかダーヴィス達と同じ列に二頭仕立ての四輪箱型馬車キャリッジ が並んだ。


「あの豪華な馬車は素通りしたみたいですけど?」
「あちらは貴族用のレーンです。貴族や急使、伝令はあちらを通ってほとんど簡易的な手続きですぐに街に入れるんですよ」


ダーヴィス達が並ぶ横を素通りする四頭仕立ての豪華な装飾が施された四輪箱型馬車キャリッジが素通りして、止まることなく城門を通り抜けて街の中へと入っていった。
チャンスの疑問にダーヴィスはにこにこ微笑みながら答えていく。


「質問ばかりしてすいません」
「いえいえ、そんな手間ではありませんし。チャンスさんはあまり大きな街に立ち寄ったことがないみたいですね」
「ダーヴィスは教えたがりだから、遠慮なく質問したらいいよ」


チャンスは恐縮しながら質問ばかりすることを謝罪する。ダーヴィスは笑みを浮かべながら謝罪を受け入れ、チャンスがあまり大きな街に立ち寄った様子がないことを指摘する。
荷台の隙間で横に寝そべっていたマトイがダーヴィスが教師のように人にものを教えるのが教えるのが好きだとチャンスに知らせる。


門が近づいてくると無数の人々が荷物を持つとアピールしている。


「ダーヴィスさん、あれは?」
「ああ、領民は通行税がかからず、両手で抱えるだけの荷物に限り物品税がかからない法があるので、ああやって商人たちの荷物の運び屋で日銭を稼いだりするんですよ」


ダーヴィスが指さす方向には商隊と思われる団体が屈強そうな領民を見繕い、荷物を運ばせている。
運び屋も慣れている人なら器用に荷物を積み上げて商人の後をついて街へと入っていく。ダーヴィスも手慣れた様子で運び屋を指名していき、荷物を持たせる。


門は白亜で覆われた城門で、左右の胸壁には白銀製の竜の頭骨像が掲げられて見る者を圧倒させる。
門は跳ね橋になっており、有事の際には引き上げられて通行不能になるだろう。
門の詰め所には分隊規模の衛兵が詰めており、徴税官とその助手を連れて出入りの手続きをしている。


「領民でない者は通行税一人銀貨1枚、魔法の道具マジックアイテムを所持しているなら自ら申告せよ!」


ダーヴィス達の順番になると衛兵が割れた銅鑼のような大声で声をかけてくる。
御者のリマスが対応し、通行税と運び屋では持ち運べない荷物や馬や馬車の税を払う。


「あれ、領民は通行税免除じゃ?」
「あくまで免税は領民本人のみで、動物や馬車には通行税がかかります」


リマスが徴税官に支払う額を見てチャンスが疑問を口にするとダーヴィスが答える。


魔法の道具マジックアイテムも自己申告だと黙っている人が多いのでは?」
「基本は黙っていますが、富貴を誇りたい商人や貴族は周囲に聞こえるように申告して税を支払ったりします」


そんな会話をしていると衛兵たちが馬車を覗き込んでくる。


「刃物は全て鞘に納めること、杖以外の武器はすぐに使えない状態にすること、弓などは弦を取り外すこと」


荷物検査を終えた衛兵がチャンスとマトイに口頭で武器の取り扱いについて注意し、武器が鞘に納められているか確認する。


「ご苦労様です」
「職務ですから」


チャンスが労いの言葉をかけると衛兵は短く返答し会釈して出ていく。
手続き全てを終えると馬車は門を潜り抜け、セブンブリッジへと足を踏み入れる。


「うわ……凄い人ですね」
「私たちが通った王の街道含めいくつもの街道にテイラス湾から出発できる海路、ダントーイン帝国へ向かうテイラス河の河川ルートといくつもの交通網がまじりあう交易都市でもありますからね」


セブンブリッジの街中は人でごった返しており、メイン通りの両端では大小さまざまな出店が並び客寄せの叫び声がひっきりなしに響いている。


「ナブー王国でも最も重要視されてる貿易都市だしね。100年ぐらい前は北のダントーイン帝国がこの街を狙って戦争を仕掛けたんだっけ?」
「ええ、一時期侵略されてセブンブリッジは同じ街なのに東と西で国が違うという出来事があり、数多くの悲劇が生まれました」


マトイがセブンブリッジという貿易都市がどのような都市なのかチャンスに説明する。ダーヴィスの注釈も混じりチャンスはセブンブリッジの歴史を学んでいた。


セブンブリッジはテイラス河を間に挟んで西街、中州、東街の3つに分かれる。
西街は所謂住民エリアといわれており、セブンブリッジに住む住民の家屋が立ち並ぶ、東街は商業区、貴族街となっており、職人や商人の店が数多く立ち並び、奥まった場所にはこのセブンブリッジを治めるコンラート伯爵が住むヒルドガルフ城と呼ばれる城が建っていた。中州は行政区、聖堂が立ち並ぶ宗教区となっている。


「さ、つきましたよ。ここが私の商会です」


辿り着いたのは東街商人通りと呼ばれる通りに面した大きな赤レンガ造りの三階建ての建物。


「おかえりなさいませ、前会長様」


馬車が辿り着くと店の従業員達が勢ぞろいしてダーヴィスを迎える。


「前会長?」
「ええ、息子夫婦に商会を任せて楽隠居していたのですが、これが暇で暇で……ちょっと今回行商の真似事をね」
「暇つぶしの行商の真似事に付き合わされる身にもなって下さいよ、まったく」


はははとダーヴィスはいたずら小僧のように屈託のない笑みを浮かべる。リマスは盛大に溜息を吐いて愚痴を漏らすと馬車を停留所へ移動させる。


「ダーーリンッ! 帰ってくるのおそぉい~!!」
「ただいま、ハニー」


ダーヴィスに先導されて店内へと足を踏み入れると甘ったるい声でダーヴィスに抱きつく一人の女性。
肌の色は褐色でルビーのような深紅の長い髪をした色気を伴った妙齢の婦人で、周囲の目など眼中にないのか二人はいちゃつきだし、従業員達はまた始まったよと呟き、仕事に戻る。


「えっ……えーっと……」
「ああなると周囲見えない。二人が満足するまで放置が一番」


マトイも慣れているのか淡々と説明する。
のちにチャンスは語る。『口の中が砂糖精製器になった気分だった』と……。

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