記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第12話 第二の殺人



「今の悲鳴って!?」
「宿に戻りましょう!」


マトイとチャンスは悲鳴を聞いて宿へと駆け戻る。
中庭を駆け抜けて宿へ戻ると一階の部屋の戸口で宿屋の従業員でドーレスの娘、リーナが血の気を失った顔でへたり込んでいた。


「どうしましたっ!」
「ハ……ハモンドさんが……」


チャンスが声をかけると泣き出しそうな声でハモンドの名前を述べて部屋の奥を指さす。
部屋を覗き込むと部屋の中央にハモンドが倒れており、胸に大きな切り傷があり、流れ出た血が周囲に広がっていく。


「……死んでる」


チャンスが倒れたハモンドに近寄り、脈を確認して死亡しているのを再確認する。


「不意打ちを食らったのか、腰のダガーを抜く間もなく斬られたみたいですね……ん? 右手の爪の間に血……まだ乾いてない……抵抗したときにひっかいたか? 袖口に土と苔?」


ハモンドの死体を調べると右手の爪の間に血がついており、犯人をひっかいたのか皮膚片も混じっている。袖口には土いじりでもしていたのか土と苔が付着していた。
死体の傍には割れた水晶玉の破片が散乱していた。部屋の周囲を調べるが、空き部屋だったのか何もなく、窓が大きく開かれているだけだった。


「マトイ、今すぐ宿の住人を全員酒場に集めて! 集まらない人が犯人の可能性が高いっ!」
「ん、わかった」


マトイはチャンスの指示を受けると踵を返して走り出していく。


「リーナさん、この部屋に入るとき他に人影は?」
「いっいえ……見てません。風を通そうと思ってこの部屋に来たら、鍵が開いてて、中を見たら……」


リーナはチャンスの質問に途切れ途切れに答える。


「チャンス、宿泊客のフューだけいない! 部屋も荷物がなくなってる!!」


宿泊客を集めに行ったマトイがチャンスの元に戻ってくるとそう叫ぶ。


「手分けして……いや、一緒に探そう!」
「ん!」


チャンスが駆けだすとマトイが後を追う。



「チャンス! あそこにいるっ!」
「えっ!?」


宿内を探そうと渡り廊下を走っていると、マトイが中庭を指さす。マトイが指をさした方向にはフューが中庭のクルミの木の根元を掘り返していた。


「フュー・ロザリンド! 殺人容疑であなたを拘束します!!」
「チッ! 物言わぬ石の従者よ、我を守れ! 石従者創造クリエイト・ストーン・オヴ・サーヴァント!!」


チャンス達が中庭に飛び込みながらフューに向かって叫ぶと、フューは木の根元を掘る作業を中断してポーチから取り出した3個の石を手前に投げて呪文を唱える。
投げられた石は呪文の効果を得て、周囲の土や石を寄せ集め、子供サイズの人型をした石人形になった。
フューは帯剣していたブロードソードを抜刀する。そのブロードソードには真新しい血痕が付着していた。おそらくハモンドを殺した凶器だろう。


「チャンス、気を付けて! そいつ魔術師だよ!!」
「っぽいね……」


マトイはマスケット銃を錬成しながらフューの能力をチャンスに伝える。
チャンスは二対のファルシオンを抜いてフューと対峙する。


「ストーン・サーヴァント、奴らを足止めしろ!!」


フューがブロードソードをチャンス達に向けてストーン・サーヴァント達に命令する。
ストーンサーヴァント達は鈍重な動きだが、チャンス達に向かっていく。


「抵抗したんだ、ちょっと痛い目見て」


マトイはマスケット銃でフューを射撃する。


「馬鹿め、飛び道具対策していないと思ったかっ!」
「うそっ!? もしかして矢除けの防御?」


だが、マトイの銃撃はフューに命中する寸前で強引に軌道を捻じ曲げられたようにそれていく。
再度数発撃つが、すべて銃弾の弾道がねじ曲がりあらぬ方向へと飛んでいく。


「くっ!? こいつら動きは遅いけど固い!」


チャンスはフューに近づこうとするが、3体のストーン・サーヴァントの妨害を受けて近づけずにいる。
チャンスはファルシオンでストーン・サーヴァントを斬りつけるが土と石でできた体は固く、痛覚もないのか攻撃を与えてもダメージを受けているのかわからない。


「まったくイライラするっ! あの暗殺者といい、私を脅迫した欲深いコソ泥といい、お前たちといい、私の邪魔をするなっ! 」


フューは怒りを抑えられないのか血が滲みだすほど頭を掻きむしりながら、口の端に泡を吹かせて叫ぶ。


「我が息吹きよ、炎となれ! 炎の息吹きバーニング・ブレス


フューはポーチから灰を一握り取り出すとその灰をチャンス達に向かって息で吹き飛ばす。
吹き散る灰は急激に炎へと変わってストーン・サーヴァント達を巻き込んでチャンス達を包み込もうとする。


「おっとっ!」
「うっ、うわっと!?」


マトイは後方にバク転して炎の範囲から離れて回避する。チャンスは咄嗟にストーン・サーヴァントの一体を盾にして炎を回避しようとするが余波を受けたのか軽い火傷を負う。


フューの炎の魔法に巻き込まれたストーン・サーヴァント達は火だるまになりながらもフューの命令を実行しようとチャンス達に迫る。


「……忌々しい……いずれ水晶は返してもらうぞ!」


フューはチャンス達がストーン・サーヴァント達によって足止めを食らっているのを確認すると、自分が掘っていた場所をちらりと見て掘るのを諦めて逃げようとする。


「あっ! 待てっ!!」


マトイはマスケット銃でフューの逃走を妨害しようとするが、矢除けの魔法効果はまだ持続しているのか銃弾は明後日の方向へ逸れて飛んでいく。


「クッ……まてっ!!」


チャンスは苦し紛れにファルシオンの一本を投げる。だが、フューの矢除け魔法によって逸らされるが……


「何っ!?」


フューは驚愕する。フューの矢除けによって逸らされたファルシオンがまるで意志を持っているかのように大きく弧を描いて次々とストーン・サーヴァント達を粉砕しながらフューの元へと向かっていく


「なに……これ……」


チャンスも同じように驚いていた。なにせファルシオンの柄に焼き付けられていた鎖が無尽蔵に伸びていっている。
ファルシオンはフューの周囲を飛び回り、その鎖を巻き付けていく。
フューは抵抗するが鎖は蛇が獲物を絞め殺すかのように巻き付き、ギリギリと締め上げていく。


「ぐっ、ぐがあああああ!!!」
「とっ……止まれっ! 殺すなっ!!」


ボギッとフューの体のどこかの骨が巻き付かれた鎖の締め付けで骨折した音が響き、フューが悲鳴を上げる。チャンスは伸び続ける鎖を握り締めて必死に止めようと叫ぶ。


チャンスの叫びが届いたのか鎖の締め付けは止まり、フューは気を失って倒れる。


「この武器は一体……」


チャンスは自分が持っていた武器の得体のしれない能力を見て驚く。
フューの体に巻き付いた鎖は容易に外せそうになく、よく見れば肉に食い込んでおりじわりと血が滲んでいる。


「とにかく犯人を捕まえたってことでいいんじゃない? とりあえずこいつが何を掘り出そうとしていたのか調べよう」
「う……うん……」


マトイはチャンスの得体のしれない武器を見ても特に変わった様子もなく声をかけて、フューが掘りだそうとしていたクルミの木の根元を掘る。


「何か埋められてるね……袋が出てきたよ」


マトイが掘った場所には紐で口を縛っている茶色の革製の袋。中身を取り出すと水晶玉や袋の容量以上の金品が出てくる。


「あ、これ便利な物入れ袋バッグ・オヴ・ホールティングだ! ラッキー!!」
「なにそれ?」


マトイは容量以上の物が出てくる袋の正体を知っているのか、袋の名前を叫んで素早く懐にしまい込む。
チャンスは袋の正体を知らないのか、目を白黒させながらマトイに問いかける。


便利な物入れ袋バッグ・オヴ・ホールティングという魔法の道具マジックアイテムで、袋の口に入る物なら、袋に設定された容量までならどんなに収納しても袋が膨らまない魔法の道具マジックアイテムだよ。まあ、重さまでは軽減できないデメリットがあるけど、冒険者必須といってもいいアイテムだよ、これ」
「そ、そうなんだ……」


あげないよという仕草で袋を隠すマトイを見て苦笑するチャンス。


「とにかく、犯人確保でいいのかな……この鎖どうしよう……」


自分の手元から伸びてフューを拘束している鎖を見てチャンスは途方に暮れていた。

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