記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第9話 現場検証



「あの……私からも事件解決のための捜査をお願いしたいです」
「え?」


警備兵スカルドからいきなり警備兵代理として事件捜査を押し付けられ困っていたチャンス。
宿屋の主人であるドーレスからも同じく事件解決の依頼を頼まれる。


「正直言って警備兵のスカルドさんは頼りなく……事件解決できるとは到底思えません。それに何日もお客様を足止めするわけにはいかないので……」


ドーレスとしては殺人事件が解決されなければ宿屋の評判にも影響が出る、足止めされた客も日数によっては不満やトラブルが出てくるかもしれないと思っている。


「まいったな……僕そう言った知識ないですよ?」
「ご謙遜を、部屋の様子を見ただけでノルドさんがどっちを向いて殺されたか言い当てたじゃないですか。もちろん依頼料は払います。金貨二枚と捜査中の宿代は無料ということでどうでしょうか?」
「もちろん、やる! このチャンスがいれば事件解決は約束されたものだよ!!」
「マ、マトイッ!?」


宿から報酬が出ると聞いてマトイが勝手に話を進めていく。チャンスは深く試い息をついて気持ちを入れ替えて事件解決に向けて努力することにした。


「それじゃあ、まずこの部屋の本来の宿泊客は今どこに?」
「ナリアさんでしたら護衛を連れて散歩に出ています。しばらくしたら帰ってくるかと……」


チャンスは事情聴取を始める。事件現場となった部屋の本来の宿泊客であるナリアは散歩中だとドーレスは証言する。


「次にカーテスさん、あなたはなぜこの部屋を覗いたんです?」
「一階の酒場で食事をしようと部屋の前を通ったら扉が半開きで、不用心だなと思って中を覗いたら、あの死体があって……そのあとは皆さんと出会って今に至ります」


カーテスの発言を聞いてチャンスの眉が動き、チャンスはカーテスの表情を見る。
カーテスは死体を目撃して青い顔をしており、現場が気になるのかちらちらと横目で部屋を見ている。


「マスターさん、死体を布か何かでかぶせてください。それから、もうすぐ夕食でしたよね? 食堂に今宿泊している人全員集めて、事件が起きたことと、応援が来るまで宿を出ないこと、あと僕達が警備兵代理として調査する旨を知らせてください」
「わかりました。とりあえず、準備してきます」


宿屋の主人であるドーレスは頷くと一階に降りていく。


「チャンス、このドア、ピッキングでこじ開けられてる。あまり腕前は良くなかったっぽい」


いつの間にかマトイは事件現場の部屋の扉を調べている。部屋のドアには鉄製の錠前がついており、マトイが指摘するようにピッキングツールか何かでひっかいた傷があった。


「マトイ、軽くでいいから部屋の中を調べてくれる?」
「ん、分かった」


マトイは殺人現場となった客室に足を踏み入れ、部屋を捜索する。
チャンスは最初にノルドの死体の爪や歯を確認し、次に傷口を確認する。


「抵抗した様子はなし……傷も胸の斬り傷のみ、血痕は黒く変色していることから……おそらく殺害された時間は昼頃、抵抗する間もなく一撃で殺されてる可能性があるね」
「チャンス、なんでそんなことわかるの?」


チャンスが死体を検分してぶつぶつと呟いているのを見て、マトイは疑問を口にする。
チャンスはマトイの疑問に答えようとして硬直する。


「えっ……あれ……なんでだろ……なんでこんなこと知っているんだろ?」
「どうやらチャンスさんは記憶を失う前はこういった知識を持つ役職かご両親がそういった役職だったのではないでしょうか? さ、チャンスさん、捜査を続けましょう。私も手伝います」


困惑した様子でなぜ自分がこんな知識を持っているのかとチャンスが戸惑っているとダーヴィスがフォローに入り、捜査を再開するように促す。


「チャンス、こっち来て」
「あ、ああ、何か見つかった?」


事件現場を捜査していたマトイが何か見つけたのか、チャンスに声をかける。
チャンスがマトイの方に向かうと、マトイは一枚の銀貨と針をチャンスに見せつける。


「まず一つ目、クローゼットの奥にこの銀貨が落ちていた」
「ふむ……大型で精巧な作りからして、ダントーイン帝国方面で使われてる通貨ですね。あまりこちらでは見かけない珍しい通貨です」
「流石商人!」


チャンスの後ろから覗き込んだダーヴィスが銀貨を見てダントーイン帝国が発行している通貨と述べる。
マトイは銀貨の種類を見分けたダーヴィスを誉め、ダーヴィスは温和な笑みを浮かべてマトイの称賛を受け入れる。


「それで、そっちの針は?」
「こっちが本命。枕にこの針が仕掛けられていた。何も知らずに頭をのせると刺さる。あと種類わからないけど、毒が塗ってる」
「「毒っ!?」」


マトイが毒という言葉を発言すると、チャンスとダーヴィスはぎょっとした顔で一歩下がる。


「これ、多分ただの強盗殺人じゃないよ、チャンス」
「ダーヴィスさん、申し訳ないですけど僕と一緒に宿泊客の事情徴収お願いできますか?」
「承りましょう。私としても足止めが長引くと色々困りますからね」


マトイの報告受けてチャンスはダーヴィスに事情聴取の協力をお願いする。
温和な笑みを浮かべてダーヴィスは同意するとチャンスとともに一階に降りる。
一階の酒場に降りると宿泊客が全員集まっており、ドーレスの説明を受けたのか、皆不安そうな顔をしている。


「皆さん初めまして、僕はラスト・チャンスと申します。警備兵代理を任命され、今回の殺人事件の捜査を依頼されました。ご協力よろしくお願いします」


チャンスがよく通る声で酒場にいる宿泊客や従業員に自己紹介する。
チャンスの自己紹介を聞いて宿泊客達は同室の者や近くにいた人とひっそひそと話し合う。聞こえ漏れてくる話し声の大抵はこんな子供で大丈夫なのかというものだった。


「これから皆さんに犯人逮捕と事件解決のための事情聴取を行います。ご協力お願いします。ダーヴィスさん、二手に分かれて事情聴取しましょう。今日の昼から僕たちが来るまでの時間の行動と、何か目撃していないか、銀貨のことを聞いてください」
「わかりました」


チャンスとダーヴィスは二手に分かれて事情聴取を開始する。
チャンスは宿の主人ドーレスから聴取を始める。


「今日の昼ですか? 酒場で妻と一緒に夕食の仕込みをしていました。宿に泊まってる人は全員初対面です。なにせ何もない村ですから行商の人ぐらいしかまた泊まりに来るぐらいですね。え? クローゼットに銀貨ですか? リーナのやつ、掃除の手を抜いたな……」


ドーレスは聴取に協力的でチャンスの質問にははきはきと答えてくれる。銀貨の件は掃除の見落としと思っているようだった。
次にチャンスが聴取したのはドーレスの娘で客室の清掃担当のリーナだった。


「今日の行動ですか? お昼はお手伝いの人と一緒に厩舎の掃除と飼葉の補充、先ほどまでは洗濯物を取り込んでいました」
「この銀貨に見覚えは?」


チャンスはクローゼットで見つかったダントーイン銀貨をリーナに見せると、リーナは心当たりがあるのか、あっ、と呟く。


「多分それ二日前に出発したマノイさんのお金です。あの人賭け事が好きで出発する前日も宿泊客とサイコロ賭博していました。参加していたのは……カーテスさん、殺されたノルドさんとあそこのハモンドさんです」


リーナは酒場を見まわして、サイコロ賭博に参加していた宿泊客を指さす。


「マノイさんだいぶ負けが込んでいて、支払いの時にその銀貨を出して、ハモンドさんが本物かと聞いていたはずです」
「ほかに何か気づいたことは? 宿泊者同士でトラブルとか」


チャンスはちらりとハモンドと呼ばれた男に視線をやりながら、事件のことをリーナに聞く。
ハモンドと呼ばれる男は殺人事件が起きたというのに軽薄な笑みを浮かべてダーヴィスの聴取を受けていた。


「えっと……殺されたノルドさんとカーテスさんが昨日廊下で口論していました。声は殺していましたけど、だいぶ険悪でしたよ。多分賭博の支払いトラブルじゃないです?」


リーナは声を抑えてカーテスを指さし、殺されたノルドと口論をしていたことを話してくれた。
カーテスの方を見れば、カーテスは落ち着かない様子で殺害現場となった部屋の宿泊客の護衛の女性をチラチラと覗き見ていた。


次にチャンスが聴取したのは殺害現場となった部屋の本来の宿泊客であるナリアという少女と護衛の二人。
ナリアという少女は10歳前後の幼い少女で、仕立ての良い服を着ており、黒猫を抱いている。
ドーレスから殺人事件の説明があったのか不安を抱いており、護衛の女性二人が不安を紛らわせようとあれこれ話しかけている。


「あの、すいません」
「警備兵代理か、お嬢様は体調がすぐれない。聞きたいことがあるなら私が答えよう」


チャンスが声をかけると護衛の一人シャノンと名乗った女戦士がナリアをかばうように前に出る。
腰にはシミターを帯剣しており、レザーアーマーを着用していた。


「事件があった時間か? 今日はお嬢様の体調がよかったので村の周りを散歩していた。殺害されたノルドという男性とは面識はない。銀貨? 前の宿泊客の忘れ物じゃないのか?」


シャノンは殺害時間は護衛対象のナリアともう一人の護衛であるスティアという女性の3人で散歩していたといい、二人も同意するようにうなずいている。


「部屋が荒らされているので、何か盗まれていないか一緒に確認してくれませんか?」
「スティア、頼む」
「はい」


チャンスが部屋の確認をお願いするとスティアと呼ばれた女性が同行する。
殺害現場となった部屋に足を踏み入れるとステイアは小さな悲鳴を上げて、なるべく死体を見ないように足早に荷物入れなど確認する。


「荒らされたように見えますが……何も盗まれていません……金品も一枚も減ってません」
「ということは……犯人は強盗目的ではなく、この部屋の宿泊者が犯人が欲しがっているものを持っていると勘違いして盗みに入り、ノルドと出会って……でもそれだとノルドの倒れている位置がおかしいんだよね?」


スティアは荷物は荒らされているが何も盗まれていないことを気味悪がっている。
先に部屋を捜索していたマトイはおおよその推理をするが、辻褄が合わないことに首をひねる。


チャンスは針のことを言うべきか悩み、今は黙っておくことにした。
自分たちが針を回収したことを言わなければ、犯人は針を回収しに戻ってくるかもしれないからだ。


「とにかく残りの人に事情聴取してみましょう」


チャンス達は再度一階の酒場へと戻った。

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