記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第8話 第一の殺人



王の街道を往く1台の屋根付き二頭馬車コーチ
御者席には御者のリマス、荷台には馬車の持ち主である中年太りの商人ダ―ヴィス、護衛として過去の記憶がない冒険者ラスト・チャンスとツインテールの女冒険者マトイが搭乗していた。


「いや~、お二方のおかげでかなり良い条件で商売ができましたよ」


チャンスとマトイが町長の娘の幽霊を成仏させる手助けをしたことで、マレルの街での商談が有利に進められたダーヴィスはホクホク顔で二人に礼を述べる。


「じゃあ、護衛完了時の報酬も期待していいよね?」
「もちろんですとも! ところで音楽祭はどうでした?」


マトイがちゃっかりボーナスを求めるとダーヴィスはまったく渋る様子もなく了承する。よほど儲かったようだ。


「4年に一度の祭典とあって凄かったですね。僕はダントーイン帝国からやってきた楽団の『剣闘士皇帝ギルバード』がよかったです。特に盲目の少女メリルの目を治療するために怪物と戦う戯曲がよかったです」


音楽祭の話をダーヴィスから振られて、チャンスは興奮した様子でどこがよかった解説する。


「僕はナブー出身の吟遊詩人が歌った『鱗の騎士』が好きだな。リザートフォークと王女の恋愛奉仕ミンネとかいいよね」


マトイはリザートフォークという鰐人とナブー王国の王女が出合い、リザートフォークが王女に惚れて恋愛奉仕ミンネを誓い、テイラス河に潜む魔獣を討伐し、正式な騎士として任命される物語について語る。


「それはそれは、よい休暇になったようですね」


ダーヴィスはチャンスとマトイの二人が音楽祭を堪能できたことを喜びほほ笑む。


「旦那様、そろそろ日が暮れます。あの村で一夜を明かしませんか?」


御者のリマスが声をかける。チャンス達が外の様子を窺えば空はまだ明るいが、冬が近いこの季節は日が暮れるのが早い。
リマスが指さす方向には簡易的な木の柵で囲まれた小さな村が見える。


「ふむ……あの規模だと下手すると宿もなく村長の家などに泊まることになりそうですが……それでも野宿よりはましでしょう。リマス、あの村に寄って下さい」
「はい、旦那様」


ダーヴィス達一行が立ち寄ったのはコナンという名前の戸数十数件ほどの小さな村。村の名前を聞いたチャンスは見た目は大人、頭脳は子供という意味の分からないキャッチフレーズが頭に浮かび、首をかしげていた。


村へと立ち寄った一行は村人から宿泊できる施設はないかと聞くと、この村で勇逸の宿屋である『双子の小人亭』という宿を紹介される。
その宿はこの小さな村には不似合いなほど立派で頑丈な石造りの宿屋だった。
広い中庭を挟んで左右に二階建ての建物が並び、その間を渡り廊下が繋いでいる。
中庭の中央には樹齢数百年は経っていそうな大きなクルミの木が生えていた。


「なんか、この村には似合わない立派な宿だね」
「あ、うん……」
「部屋が空いてているといいですねえ……お、ここはよいエールがありそうですよ」


双子の小人亭という宿にはマレルの街で見たようなベッド、食器、馬の焼き絵の看板があった。店先には箒を掲げており、それを見たダーヴィスが嬉しそうに呟く。
宿泊の手続きを済ませたリマスは宿の小間使いと共に厩舎へと馬車を停めに行く。


「もうすぐ夕飯だから、荷物を部屋に置いてすぐに下りてきてくださいね」


ドーレスと名乗った背の低い宿の主人が愛想を振りまきながらダーヴィス達を二階の客室へと案内する。


一行がドーレスに案内されて二階への階段を上がると、階段を登り切ってすぐの部屋のドアが半開きになっていた。
その部屋から一人の男性がこっそりと出てくる。出てきた男の顔は固く強張っており、ドーレスとチャンス達の姿に気づくとぎょっとする。


「おや、どうかしましたか? カーテスさん」


宿の主人であるドーレスは部屋から出てきた男と面識があるのか声をかける。
カーテスと呼ばれた男は無言で部屋の中を指さす。


「部屋に何か不備でも……ひいいいいいい!!!」


ドーレスが怪訝な表情で部屋を覗き込むと悲鳴を上げて腰を抜かす。
チャンス達も何事かと部屋を覗くと、部屋に入ってすぐの場所で仰向けに倒れている男がいた。男の体には肩から胸にかけて長い切り傷があり、床には黒ずんだ血が広がっていた。


「部屋が荒らされてる……物取り?」


マトイは死体がある部屋を軽く見まわす。部屋の奥には私物を収納する長箱が開けられ、中身が乱雑に散らかっていた。


「すっ……すいません! けっ、警備兵を呼んでくるので、しばらく見張っててください!!」
「え? あ、ちょっ……ちょっと!?」


ドーレスは部屋を覗き込んでいたチャンス達にそう告げると転がり落ちるように階段を駆け下りて駐在所へと向かう。


「仕方ありません……しばらく見張りをしておきましょう。カーテスさんでしたか? 申し訳ありませんが、警備兵が来るまで一緒にいてください」
「あ、はい……」


ダーヴィスがこの場を仕切り、殺害現場に誰も来ないように見張る。
しばらくすると、宿屋の主人ドーレスが革鎧を着た青年を連れて戻ってくる。


「スカルドさん、ここです! ここで人が殺されてるんです!!」
「ひっ……本当に死んでる……」


スカルドと呼ばれた警備兵の青年はおっかなびっくりといった感じで部屋を覗き込み、死体を見て悲鳴を上げて顔を青ざめる。


「おそらく死因は、この胸の傷でしょう。傷跡から見て刀剣類……それもロングソード以上の剣でばっさりと……」


警備兵のスカルドは気味悪げに死体を見て傷口を確認する。そしてちらりとチャンを……正確にはチャンスが背中に背負うファルシオンを見る。


「ん? まさかチャンスを疑ってるの?」
「え? いっ……いや、その……あは、あはは……」


スカルドの視線に気づいたマトイがむっとした様子でスカルドを問い詰める。
マトイに問い詰められたスカルドは笑ってごまかそうとする。


「えっと、この死体の男性と面識ある方は?」
「そのご遺体は、うちの宿に泊まっていた行商人のノルドさんです。でも……ノルドさんが泊まっていたのは別の部屋で、ここはナリアさんという子供とその護衛の冒険者の三人が宿泊していた部屋です」


スカルドが死体の男性との面識を聞くとカーテスとチャンス達は首を横に振る。
宿の主人であるドーレスが死体の男がノルドと呼ばれる行商人で宿泊客だったこと、殺害現場はノルドの宿泊している部屋ではなく別人の部屋であることが判明する。


「どうやら強盗に殺されたのだろう。おそらくだが、強盗がこの部屋を物色している時に物音か何か聞いてノルドいう男が部屋の様子を伺い、中にいた強盗に殺された」
「いや、それだと死体の位置がおかしい」


軽く室内を調べたスカルドはそう結論付ける。だがチャンスはスカルドの推理に違和感を感じ、否定の意見を口にする。


「どこがおかしいというのだ?」
「スカルドさんの推理だと、ノルドさんの死体はドアの外側か、ドアに背を向けていないといけない。でも、死体は部屋から出ようとしたか、部屋に入ってきた人物に斬られた。証拠にそこの壁にも飛沫痕が入り口から部屋の奥のベッドに向けて付着している」
「あ、確かに」


スカルドがチャンスに自分の推理のどこが間違っているか聞くと、チャンスは死体の向きや血の飛び散った位置からノルドは部屋の中にいて、出ようとしたか、部屋に入ってきた人物と鉢合わせになって殺されたと指摘する。
マトイが壁を見れば飛沫痕はドア付近から部屋の奥のベッドに向けて飛び散っていた。


「と、とにかく、この事件は私の手には負えん! セブンブリッジへ行って応援を頼んでくるから、私が戻るまで宿泊客を返さないように! それからお前、ちょっと来い」


スカルドは宿の主人に応援が到着するまで宿の客を帰さないように命令し、チャンスを手招きして廊下の隅に移動する。


「私が不在の間、君が事件の捜査を進めておいてくれないか?」
「えっ、僕がですか?」
「ああ、君に警備代理を任命する。戻ってくるまでに犯人を捕らえたら金貨4枚の報酬を約束しよう。犯人を捕まえられなくても進捗状態に応じて報酬を払おう、頼んだぞ」


スカルドは応援を読んで自分が不在の間の捜査をチャンスに任せる。
周囲に聞こえるように警備兵代理を任命し、まくしたてるように報酬を約束すると、脱兎のごとく宿から飛び出し、応援を呼びに行く。


「あの……僕受けるって言ってない……」
「チャンス、人間諦めが肝心だよ。進捗状態によってはお金もらえるし、頑張ろう」


警備兵代理を押し付けられたチャンスは呆然とし、マトイがチャンスの肩を叩いて慰めていた。

          

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