記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第6話 望郷の鏡



「はあああああっ!!」
「うるぐああああうううっ!!!」


フレッシュゴーレム向かってチャンスは走る。フレッシュゴーレムは宝物庫への立ち入りが許可されていない侵入者を迎撃するために拳を振り上げ、チャンスを叩き潰そうとする。


「おっと!」


チャンスは自分に迫ってくるフレッシュゴーレムの拳を跳躍して回避し、その腕の上を走り上る。
走り上る際に左手のファルシオンでフレッシュゴーレムの腕を切り裂きながら、右手のファルシオンでフレッシュゴーレムの頸動脈を切り裂く。


「どうだ!」
「フレッシュゴーレムには痛覚も急所もない! 活動停止するまでダメージを与えるか、体のどこかにある魔力ある言葉の頭文字を潰すんだ!!」


本来なら致命傷クラスの一撃をフレッシュゴーレムに与えたチャンス。だが呪歌バード・マジックソングでサポートしていたシェイルが演奏を停止して、フレッシュゴーレムの特性を説明する。
シェイルが言った通り、フレッシュゴーレムは痛みを感じる様子もなく、チャンスのファルシオンで切り裂かれた傷からは血も何も噴き出す様子はない。


「魔力ある文字ってどこだよ?」
「それは……作成者にしかわからない。だが、魔力ある言葉の頭文字を潰せば一撃で倒せる!」


銃声を響かせてフレッシュゴーレムの胸や顔に銃撃を繰り返しつつ、マトイは魔力ある文字の位置をシェイルに聞く。さすがにシェイルもそこまでは知らない。


「とにかく、ダメージを与えつつ文字を探せばいいんだ」
「ぐらあああっ!!」


フレッシュゴーレムは雄たけびを上げながらチャンスを握りつぶそうと突っ込んでくる。
チャンスはスライディングでフレッシュゴーレムの股の間をすり抜けて掴みかかりを回避し、フレッシュゴーレムの両足首を斬る。


「ぐがっ!?」


足首を斬られたフレッシュゴーレムはバランスを崩して転倒する。


「痛みを感じなくても人体構造とかは人型と一緒みたいだね」
「あっ! 文字っぽいのあった! チャンス、文字は首の後ろの付け根だよ!!」


転倒したフレッシュゴーレムを見てチャンスが呟き、マトイが目敏く魔力ある文字と思われるものを発見し指さす。
確かにマトイが言う通り、フレッシュゴーレムの首の後ろの付け根に何か文字が刻まれていた。


「こいつかっ!」
「ぐるがああああっ!!」


チャンスは駆け出し、魔力ある文字を消そうとする。フレッシュゴーレムは起き上がって首を守ろうとするが………


「させないよ」


マトイがフレッシュゴーレムの肘や指の付け根を狙って銃撃を浴びせて起き上がるのを妨害する。


「はあぁぁっ!!」
「ぐるうわああああ!!」


チャンスは跳躍し、フレッシュゴーレムの首の付け根にあった魔力ある文字にファルシオンを突き刺し、頭文字を肉ごとえぐり取るように引き裂く。
魔力ある文字を引き裂かれたフレッシュゴーレムは断末魔を上げ、指先から皮膚が、肉が溶けていき、最後は体全体の肉が溶けて、何とも言えない腐臭と肉が溶けた汚水と骨だけが残った。


「うえっ……こいつはきついな」
「うう……臭い」


チャンスとマトイは汚臭に顔を歪めながらも、フレッシュゴーレムが守っていた宝物庫に足を踏み入れる。シェイルはゴースト・ドールという動く死体となった体のおかげで遺跡内に充満しそうなフレッシュゴーレムの腐った肉の匂いに苦しむことはなかった。


「ふむふむ……これがこうで、こうなって……」


宝物庫にあった宝箱にマトイが近づくとすぐに開けずに周囲や箱の周りを調べる。


「ほい、開いたよ。無理やり開けたら毒針が刺さって、箱の中に仕掛けられた酸で中身が壊れる仕掛けだったよ」
「さすがだねマトイ」


マトイは罠の構造を把握したのか、ピッキングツールを錬成すると5分もかからないうちに罠を解除する。


「ふふーん、もっと褒めて褒めて」


チャンスが称賛すればマトイは自慢げに胸を張る。シェイルはそんな二人の掛け合いを見てほほ笑んでいた。


「さて、中身は……クリスタルにホワイトオパール、何かのポーションに魔法の巻物……あと鏡?」


マトイが宝箱を開けると価値のありそうな宝石、効果のわからないポーション瓶、羊皮紙の巻物、そして淵が金銀で装飾された美術品っぽい手鏡だった。


「その鏡は……私の仲間のクリントが持っていた望郷の鏡だ。どうやらシャリラが私の仲間の装備品などを戦利品としてここに収納していたんだな」
「望郷の鏡?」
「ああ、鏡を掲げて、己の記憶にあるものを念じれば、その記憶にある風景が鏡に映し出される。クリントはよく幼いころの故郷の風景を鏡に映していたな。一度野営中の夜中に昼間の風景を映し出して周囲が昼間のような明るさになって朝と勘違いしてみんなが起きだしたことあったな」


宝物庫で見つかった手鏡を見てシェイルは懐かしそうに野営時の出来事を思い出していた。


「昼間のような明るさ……シェイルさん、この鏡で太陽を映し出せば……」
「っ!? その手があったか!」


望郷の鏡という魔法の道具での出来事を聞いたチャンスはその鏡で太陽を映し出してシャリラを倒す方法を思いつく。シェイルもチャンスのアイデアを聞いて天啓を得たように目を見開く。


「シャリラとまた遭遇するかわからないけど、手段ができたなら反撃開始だね」


マトイは宝箱から見つけた宝石や巻物を懐にしまい込んでマスケット銃を持ち直す。


「とにかく一度出口を目指そう」


チャンス達は宝物庫から出ると一目散に出口へと向かう。


「おーっほっほっほ、ここは通さないわよ。さあさあ、どうするの? 他の脱出方法を探す? それとも諦めて、私の研究の実験体になる?」


白と黒のタイルが並ぶ部屋にチャンス達が足を踏み入れると、地上へと繋がる出口の通路にチャンス達が足を踏み入れると、部屋に高笑いを響かせながら魔女シャリラのレイスが地上につながる出口への通路をふさぐように現れる。


「どっちもごめんだね! 押して通らせてもらうよ!!」
「おーっほっほっほ、お馬鹿さんねえ。そこの吟遊詩人が言ってた言葉忘れたの? 私はレイス、貴方達では私には傷一つつけられないわ。そんなことも理解できないお馬鹿さんは……」


チャンスが二刀のファルシオンを抜いてシャリラに敵対宣言する。
シャリラは高笑いしながらチャンスをあざ笑う。


「殺してゾンビにしてあげるわ!!」


シャリラが殺してあげるといった瞬間、シャリラの髪は怒髪天を突いたように逆立ち、唇は耳元まで避けて不気味な表情へと変わり、チャンスに攻撃しようと突っ込んでくる。


だが、チャンスはファルシオンを構えたまま微動だにもせず、回避行動をとる様子もない。


「あらあら、諦めたの? いいわ、苦しまずに殺してあげる」
「諦めた? そうだね、確かに僕は諦めたかもしれないね……」


チャンスは不敵に笑いながらそう呟く。シャリラは一瞬チャンスのその表情に疑惑を抱くが、レイスである自分に対しての攻撃手段をチャンス達が持っていない事を知っている。シャリラは頭に過った疑惑を押しのけ、その腕でチャンスの命を刈り取ろうとする。


「僕は、諦めることを諦めた男だ!!」


チャンスは紙一重でシャリラのの腕を回避する。チャンスが回避した後ろではマトイが望郷の鏡を構えていた。


「なっ!?」
「望郷の鏡よ、太陽の輝きを映し出せ!!」


マトイが太陽を思い浮かべてそう叫ぶと、望郷の鏡から眩しいほどの光が溢れ出す。


「ギャアアアアアアアア!!!」


望郷の鏡から溢れ出す光を浴びたシャリラはまるで高温の熱波を浴びたように断末魔の雄叫びを上げ、一瞬で皮膚と肉が焼け剥がれ、骨が炭化していき、最後は霧散していく。


「すごっ……」
「皆……見ているか……仇は取ったぞ」


一瞬にしてシャリラが消滅したのを見てマトイは息を呑む。シェイルは消滅するシャリラを見て短く鎮魂歌を演奏し、シャリラによって殺された仲間の魂を慰撫する。


「さあ、地上へ戻りましょう。アロさんが貴方の帰りを待っていますよ」


チャンスはシェイルにそう告げると地上へと向かう。


「ああ、アロ……やっと、やっと私は君に会える。安らぎの貴婦人ヘレネよ、どうかもう少し私にお時間をお与えください。アロとの約束を果たせたら必ず貴方の元へ参ります」


地上へと出て、太陽を見上げたシェイルは死者の眠りを守る神、安らぎの貴婦人ヘレネに祈りを捧げる。


「チャンス、シェイル、早く行くよ。太陽の位置からして急がないと間に合わないかもしれない」


マトイの言葉にチャンスとシェイルは頷き、可能な限り急いでマレルへと戻る。


(太陽よ、どうか沈まないでくれ。どうかアロとシェイルの二人にめでたしめでたしのハッピーエンドを迎えさせてあげて!)


チャンスはその想いを胸に走り出した。

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