記憶のない冒険者が最後の希望になるようです

パクリ田盗作@カクヨムコン3参戦中

第5話 魔女シャリラ



「ああ、アロ……愛しいアロ……死んでしまってすまない」
「死んで? あなたは生きているのじゃ?」


シェイルが死んでしまって口ずさむとチャンスが口を挟む。


「私は死んでいるのです。私たちのパーティーは私を除く仲間の犠牲と引き換えに魔女シャリラを討伐しました。ですがシャリラは完全に死なず、レイスとなって私は殺され、私の死体を防腐処理して自我を保ったままアンデッド化させた。私が永遠の美しさのまま苦しみ続けるのを見るために」


ジャラリと音を鳴らして脚枷の鎖を見せてる。


「シャリラは自我を保ったままアンデット化させる【ゴースト・ドール】を研究している。狂った彼女の考えではそれが永遠の美貌を保つ方法だと信じて……君たちはアロの依頼できたといっていたね。アロに会いたい……お願いだ、ここから連れ出してくれ! 一目……一目この目でアロに会うまで私はヘレネの元へは逝けない!!」


シェイルは悲痛な叫びを上げてチャンスたちに助けを求める。


「もちろんです! 僕たちはそのために来たんですから。それに貴方に会わせなければ彼女は強制的に成仏させられてしまいます」
「……成仏? どういうことだ? アロの身に何があったんだ!!」
「落ち着く。アロは君を心配して衰弱して死んだ。今は幽霊となって君の帰りを待っている」


マトイは淡々と説明しながらピッキング道具でシェイルの足枷を解除する。


「アロ……すまない……」


アロが死んで幽霊となってでも自分の帰りを待っていると聞いてシェイルは膝から崩れ落ち、何度も呟くように謝罪を繰り返す。
ゴースト・ドールとなったシェイルは悲しげな表情になるが涙を出すことはない。その体はもう死んでおり、防腐処理のおかげで朽ちていないだけアンデットだからだ。


「とにかく、タイムリミットまで時間がありません! シェイルさん、後悔や謝罪は彼女に会ってからにしてください。アロさんは貴方との約束を守るために幽霊になってでも、貴方を待っているんですよ!」
「そっ……そうだ、君の言うとおりだ……アロに会いたい……会って約束を果たしたい!!」


チャンスの励ましの言葉を聞いてシェイルは立ち上がる。
チャンスとマトイは互いに頷いて遺跡を脱出しようと小部屋の出口へと向かうと


「おーっほっほっほ、まあ、私好みの美少年と美少女の二人組がいるわ! これはアンデッドにしがいがあるというものね!」


どこからともなく高らかな笑い声が聞こえたかと思うと、闇夜のような黒いドレスを着た半透明の女性が出口を塞ぐように現れる。
美しい外見であるが、顔全体に濃いお粉と蜜蝋を塗りたくったような化粧、狂気を宿した赤い瞳でチャンスとマトイを指差す。


「魔女……シャリラ……」
「あら、私を殺したシェイルじゃない。その二人に助けてもらったの?」


シェイルが憎々しげな表情で現れた幽霊をシャリラと呼ぶ。
シャリラと呼ばれた魔女はシェイルを見てニヤニヤと狂気じみた笑みを浮かべる。


「チャンス!」
「わかってる!!」
「よせっ! 今のシャリラはレイスだっ! レイスは太陽の光か、高位神官の神聖魔法か、聖別された武器じゃないと倒せないっ!!」


マトイはマスケット銃を構えて、チャンスは二刀のファルシオンでシャリラに攻撃する。
シャリラは余裕の笑みを浮かべて回避する仕草すら見せない。マトイの銃弾はシャリラの額をすり抜け、チャンスの双剣は空を斬った様にシャリラの体を摺り抜ける。


「なっ!?」
「うそっ!?」
「おーっほっほっほ、おバカさんね。安心なさい、すぐには殺さないわ。貴方達にチャンスをあげましょう。この洞窟から出てゆく方法をお探しなさい。上手く見つかったなら、許してあげるわ」


シャリラは口元を手で覆いながら高笑いする。


「でも、諦めたなら……私が殺してあげる。アンデッドとして永遠の美しさを保ち続ける人形にしてあげるわ。せいぜい頑張りなさい。おーっほっほっほ」


シャリラは高笑いしながらシャリラの姿は消える。


「二人共、大丈夫か?」
「うん」
「……なんとか……」



シャリラが完全に消えたのを確認するとシェリルがチャンスとマトイの無事を確認する。


「シャリラはレイスの上に生前の魔法も使える。正面からまともに戦ってはダメだ。君達は神聖魔法は……」


シェイルはシャリラの脅威を伝え、チャンスとマトイに神聖魔法が使えるか聞くが、チャンスとマトイは首を横に振る。


「となると……太陽の光を何らかの方法でシャリラに浴びせることがここから脱出できる唯一の方法だ」
「そうだね、別の脱出方法があるように匂わせていたけど……多分ないね」
「太陽……でもどうやって……」


チャンスは天井を見上げるが外の光が入ってくる斜光窓のたぐいはどこにもない。壁や天井は手で掘れるような硬さではなく、山の中腹にある洞窟に偽装した遺跡だと壁を掘り進むのも不可能に近い。


「となりの部屋にシャリラの宝物庫がある。門番がいるがそれを何とかすれば状況を打開できるかもしれない」
「宝物庫!?」


シェイルが宝物庫の在り処を伝えるとチャンスの目にはマトイの目がきらりと光ったように見えた。


「ここにいてもどうしようもない。早く宝物庫へ行こう」


ふんすと鼻息荒く宝物庫への移動を提案するマトイ。シェイルとチャンスはお互い苦笑しながら肩をすくめて、件の宝物庫へと向かう。


「ここが宝物庫? 扉はあるけど、ほかの部屋と変わらないような……」
「シャリラもグラウス帝国時代の死霊魔術師が使っていた遺跡を再利用しただけだ。遺跡の中で頑丈な扉が残っていた部屋を再利用しているだけだ」
「開いたよ、罠も解除した」


宝物庫と言われて厳重な扉をイメージしていたチャンス。たどり着いた宝物庫はここに来るまでに見た鉄製の扉と代わり映えなかった。
シェイルがこの遺跡の由来を説明している間にいつの間にかマトイが扉に張り付き、罠と鍵を解除していた。


「門番がいる。やばい、気づかれた!」


マトイの警告にチャンスとシェイルは反応する。チャンスはファルシオンを構え、シェイルはふたりの邪魔にならない距離に離れる。マトイも扉から離れてマスケット銃を構える。


「ウルググググゥ……」


半開きの鉄製の扉の隙間から巨大な手が這い出る。扉を開けて出てきたのは複数の人間の死体の部分部分を糸で縫い合わせネジで止めた巨大な肉塊。
関節が固まっているのかぎこちない足取りで唸り声を上げながらチャンス達に襲いかかる。


「あれは人間の死体を繋ぎ合わせたフレッシュゴーレムだ! あの両手に絶対捕まえられるな! 金属の鎧を着た戦士でも握りつぶされるぞ!!」


番人の正体を見抜いたシェイルが番人がフレッシュゴーレムだと二人に伝える。
同時に銃声が遺跡内に響き、フレッシュゴーレムの胸にマスケット銃の弾丸が命中するが、フレッシュゴーレムは痛みを感じないのか、ズシン……ズシンとゆったりとした歩調で近づいてくる。


「マトイは牽制を、シェイルさんは下がっていてください」
「ん、わかった」
「いや、私もサポートさせてもらう。 奮起させる励ましインスピレイション・ブースト


チャンスが指示を出し戦闘準備をする。マトイは次弾を装填し牽制の射撃をする。
シェイルは捕らえられていた時に演奏していたリュートを構えるとなにか呪文を唱えて演奏を開始する。


おお、勇敢なる戦士たちよ、今奮い立て。愛する人を守る為、傷つくこともあるだろう。だが恐るな、汝らの剣は勇気なり、汝らの盾は誇りなり、汝らの鎧は明日なり!


「なに? 歌を聞いていると……力が沸いてくる!?」
「吟遊詩人の呪歌バード・マジックソングの勇気鼓舞の歌だよ」


シェイルの歌を聞くとチャンスの体の奥底から勇気と力が湧いてくる感覚が来る。
チャンスがその感覚に戸惑っていると、マトイが感覚の正体を教える。
吟遊詩人の呪歌バード・マジックソング、吟遊詩人達が歌う魔法の歌。歌声や音楽に魔力を載せて聴く者に様々な効果を与える魔法である。

「よしっ! いくよっ!!」


チャンスは二対のファルシオンを構えて、フレッシュゴーレムの方に向かって走り出した。

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