ようこそ!生徒会室から異世界部へ!

時塚オイモ

第2話 ようこそ!桜色のヒロイン!

金寺は賑やかな方へ走って行った。僕は何だろうと思い後ろの賑やかな席に近づくとその席に座っていた人は、まるで桜色に輝く一輪の花のような長い髪、モデルのような体格でその姿は小説・漫画でも出てくるヒロインのような美少女が…………座っていた。


あれ?よく見ると、登校する時に桜の木の下にいた女の子だ。同じクラスだったのか。でも、僕のような普通の一般人には関わる事なんて出来ないよなぁ………僕は溜め息を吐き自分の席に行こうとした。


この世界は小説や漫画みたいに動かない。人は夢を見る。自分が主人公だと思う夢を。だが、それは只の夢でしかない。現実は村人Aのような存在だ。主人公というのは、才能があり皆から慕われて世界を変えてしまう力を持った人だ。でも、何の才能も知能も持っていない人は?その人は主人公を引き立てるか、目立たず村人として生きていくしかないのだ。そして、僕がその村人Aだ。だから、ヒロインである彼女と僕が接点を持つ事なんてあり得な……


「あっ!今朝見かけたよね!」


突然、後ろから女の子の声がした。


フッ!僕じゃない事は知っている。でもほら!よくある事じゃないか!後ろから急に声を掛けられるラブストーリー的な奴?そう!それだ!だけど、期待はしてないよ!僕じゃない事は知っているからね。だって僕は村人だしね。そんな事あり得る訳が無い。しかし、しかしだよ!そんな僕にも夢を見てもいいんじゃないかな?と僕は思うんだ。例え、ひと時の夢だとしても。うん。だから………


僕は勢いよく何気ない笑顔で振り返った。すると!


「あの犬、可愛いよねー!」


「本当だー!可愛いー!」


ですよねぇー!分かってましたよ。うん!そうだよね!村人の僕が犬との差なんて歴然ですもんね。でも、ひと時の夢をありがとうございました………って、何で僕が犬に感謝しなきゃいけないんだよ!てか、何で学校に犬がいるんだよ!しかも、僕と犬の差が歴然って!どんだけ僕の存在が薄いんだよ!もっと濃くしてくれてもいいんじゃないかな!ねぇ!神様!!


そう思っているとまた、女の子の声が聞こえた。


「あれ?君は朝に見かけた人だよね?」


ハッ……もう僕は騙されないぞ!そうやって、僕を騙して笑おうしているんだろ!そうなんだろ?神様とやら!だから僕は振り向かないよ!何があろうとも、僕は一切振り向かないからな!!


「あっ!犬が逆立ちしてる!!」


何ですとぉぉぉぉー!?あ……振り向いてしまった……くそぉぉぉぉぉ!笑いたければ笑え!神様とやら!!


そう思って前を向くと、目の前に桜の木で目が合った女の子がいた。そう。桜色のヒロインの子だった。


「え、えっと……君は?」


僕は戸惑いながら聞くと、金寺が横から現れて説明をしだした。


「優!お前!この人を知らないのか!?この桜のような美しいロングストレート、スタイル抜群で色んなモデル事務所からスカウトが来る程の綺麗さ!学校美少女ランキングで1位、2位は確実だと言われているこの人こそ!『勇姫 希』さんなのだ!なのだーのだーだー」


金寺が物凄い早さで説明して、凄さをアピールしてきた。てか、地味に最後エコーを掛けてきたが意味あるのか?


「あ……そうなんだ。ごめん。知らないや。」


そう言うと、金寺やクラスの皆が急に唖然とした顔で黙り込んだ。何か不味い事でも言ったのかなと思うくらい教室の中がシーーーンとした。


「お前……本当に知らないのかよ。ん……?てか、お前!今朝、勇姫さんと会ったのかよ!」


金寺は今更のようにツッコんできたので僕は普通に頷く。すると、何故だろう?クラスの人達から殺気の気配を感じる……


「私が桜の木の下にいた時に、君と目が合ったんだよね!」


勇姫さんは眩しい笑顔で言ってくる。しかし………


あっれれー?おっかしいぞー?前は眩しく感じるのに、後ろからは暗い殺気がさらに強まった気がする。何でだろう?


「目が……合った……だと?」


金寺の様子がおかしい事に気づき僕は声を掛ける。


「ど、どうしたの?金寺……?」


「目が合っただとー!!どういう事だ!教えろ優!何時、何処で会ったんだー!!」


金寺は、まるで火山の噴火のように爆発して僕に質問責めをしてきた。その前に今更だけど何で僕の名前知ってるの?喋ったっけ?それよりも、クラスの皆まで僕に聞いてくる。てか、確かにさっき神様に濃くしてとは言ったけどここまで濃くしなくていいのにー!誰か……誰か助けてぇー!!


「あらあら。皆さん落ち着いて下さい。彼が困っていますわ。」


突然、教室のドアから女の人の声が聞こえたので皆は声のする方へ向くとそこには


「う……う……瓜神エル先輩!?」


クラスの皆は一斉に騒つく。


「あっ!そう言えば何故、瓜神先輩はここにいるんですか?2年生の教室は3階のはずでは?」


金寺は誰もが気になってる事を普通に聞いた。


「うふふふ。ごめんなさいね。知り合いに会いに来たのですわ。」


「あー!エルちゃん久しぶり!来てくれたんだ!」


そう言って大声で叫んだのは勇姫さんだった。

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