妹はこの世界でただ一人の味方
ご褒美
両手に縄を縛られ、正座させられている結衣の前には両手を前に組んで仁王立ちをしている学がいた。
「さて・・・何を盗んだか聞かせてもらおうか。」
「なんか最近お兄ちゃんが厳しいような気がする・・・。」
自称騎士団長の男を追い払ったあと、結衣が何かを盗んでいた事を思い出した学はむやみに追いかけず、罠を設置して待つことにした。
自意識過剰と思われるかもしれないが、俺の写真を廊下に置いといて、近くで待ち伏せていた。
学がいるとは知らず、足音を立てないようゆっくりと歩く結衣が近づいてきた。
そして写真を取って油断したところに学が一瞬で手にロープを結んだのだった。
「まさか写真で捕まえられるとは思わなかったんだが・・・。」
「だって大好きな人の写真だから仕方ないじゃん。」
そう言う結衣の顔は恥ずかしさというより、開き直ったような感じだった。
「・・・まあ写真のことはおいておこう。で、話を戻すぞ。何を盗ったんだ?」
「・・・黙秘権。」
プイと顔を90度回転した結衣は気のせいではなく、完全に開き直っていた。
「知られてまずいものなのか?」
「・・・・・・。」
黙秘権ってされると意外とイラつくんだな。人生で初めての発見だ。・・・こんな発見いらないんだが。
かと言って、結衣がここまで頑固になるとそうそう聞き出すのは難しいな・・・。
あんまり使いたくはなかったんだが、まあ仕方がないな。
学はストアで厚紙とシャーペンを買うと薄く紙に何かを書いて結衣に言った。
「そうだな、今から1分以内に答えるのなら俺からご褒美をあげてもいいぞ。ただ結衣にとっては得になることだぞ。」
学がそう言うと、結衣の体はピクリとも動いた。
まあご褒美をあげる必要はないんだが、これで結衣が言う可能性は格段に上がっただろう。
「う〜ん・・・。」
目を瞑って考え込む結衣。それをじっと見ている学はまだ押しが弱いと思った。それでも、盗られたものがどんなものかによっては怒るかもしれない。そういう点ではまだご褒美が何かわからない方が学にとって有利だった。
「あと50秒。」
そういえば今更だけどこの状況って結構ヤバいよな?両手を縄で縛って座らせてるって、地球だったら通報ものだな。地球だったらこんなことはしないと思うが。
そして制限時間は刻一刻と迫っていき、残り時間は10秒になっていた。その間、結衣はずっと頭を悩ませていた。
「10、9、8、7、6...」
学も聞き出すことは難しいと諦めかけていたが、律儀なことに最後までカウントを続けていた。
「5、4、3、2...」
「・・・言うよ。」
ついに結衣が折れ、小声でそう呟いた。学はカウントダウンをやめ、結衣の言葉に耳を傾けた。
「私がお兄ちゃんの部屋から取ったものは・・・。」
ゴクリと唾を飲む音がしたが、それは学だったのか、はたまた結衣だったのか、それは分からない。
「写真。」
「・・・?」
思っていたものとは大幅に違い、学は困惑した。
写真・・・。たしかに写真(学と結衣のツーショット、もしくは結衣の写真)はしまってあったが、それを盗る必要はあったのか?
「ちなみに理由は?」
「・・・そんな事よりご褒美の添い寝をしてよ。」
学が書いた厚紙の後ろにはたしかに“添い寝”と書かれてはいた。しかし学が書いた位置から文字を見ることは不可能なのだが、結衣は学が書いているところを凝視して、シャーペンの動きでどんな文字が書かれているか憶測していたのだ。
学はため息をつきながら結衣の縄を解いて添い寝をするためにお互いの部屋がある二階へと足を運んだ。
「あ、お兄ちゃんの部屋がいいんだけど・・・ダメかな?」
学は無言で自室の扉を開けた。結衣は了承のサインと考え部屋へと入るとすぐにベッドへと潜り込んだ。学は写真ケースを引っ張り出し、どの写真が抜き取られたか確認した。
確認し終わると学も大人しく結衣がいるベッドへと入った。
「どの写真か分かった?」
同じベッドに入って10分ほど経った頃、結衣は学にそう聞いた。
「もちろんだ。なくなった写真は初めて結衣が家に来た時、2人で撮った写真だな。」
「そうそう。今その写真を絵にしてるから、終わったら返すね。」
「別にそれはいいんだが、どうして早く言わなかったんだ?それくらいだったら別に言えば貸したんだが。」
「・・・それはプライドの問題だったの。」
「プライドか。」
よく分からなかった学だが、こう言う形とは言えしっかりと取ったものを言ったので許すことにした。
・・・やっぱり甘いのか?仮に飯田とかだったら殴るんだが。
すると結衣は布団の中でノソノソと動き、学へと体を密着させた。学の鼻は女の子特有の甘い香りを嗅ぐことになった。
「抱きつかせることはご褒美の内容に含まれてないぞ。」
学は冷静なツッコミをしたが、結衣はそれを無視して学の体に顔を埋めた。
「はぁ・・・。」
「んっ...お兄ちゃん・・・それ気持ちいい。」
学は自分の胸あたりにいる結衣の頭を撫でた。結衣はそれが気持ちよく、しばらく撫でられると静かに寝息をたてるのだった。
結衣が寝たのを確認すると、学は結衣の髪を触って目が見えるようにどかした。穏やかそうな結衣の表情は学にとっての幸せそのものだった。
なんだかんだで・・・俺は甘いんだろうな・・・。
しばらくすると学も寝息をたて、意識を手放すのだった。
-------------------------------------------------
以下作者のコメント
この前テストがあったと思えば、次は期末テストです。わーいうれしーなー(棒)
というか、忙しすぎる・・・。学生の人は決して委員会の委員長にならないほうがいいですよ。ものすごく疲れます。
バジリスさん。コメント有難う御座います。不具合が起きているらしく、コメントをしてくださった話に記録が残っていなかったのでこの場で返信をしたいと思います。
この作品を好きと言ってくださった点では、有難う御座います。としか言いようがありません。有難う御座います。
で、妹の方ですが・・・諦めましょう。理想と現実は常にかけ離れているものです。変な期待を持たない方がいいと思います(笑)
もしかしたら妹さんがブラコンで、照れ隠ししてるかもしれないですよ。矛盾しますが、希望は捨てないようにしましょう。
なんでしたら妹さんにブラコンなの?と聞いてみては?多分「○ね!」と言われて終わりだと思います。
責任は取りませんよ。
それではまた次回。
不具合の報告はしたのでもう暫く待っていただけると幸いです。
「さて・・・何を盗んだか聞かせてもらおうか。」
「なんか最近お兄ちゃんが厳しいような気がする・・・。」
自称騎士団長の男を追い払ったあと、結衣が何かを盗んでいた事を思い出した学はむやみに追いかけず、罠を設置して待つことにした。
自意識過剰と思われるかもしれないが、俺の写真を廊下に置いといて、近くで待ち伏せていた。
学がいるとは知らず、足音を立てないようゆっくりと歩く結衣が近づいてきた。
そして写真を取って油断したところに学が一瞬で手にロープを結んだのだった。
「まさか写真で捕まえられるとは思わなかったんだが・・・。」
「だって大好きな人の写真だから仕方ないじゃん。」
そう言う結衣の顔は恥ずかしさというより、開き直ったような感じだった。
「・・・まあ写真のことはおいておこう。で、話を戻すぞ。何を盗ったんだ?」
「・・・黙秘権。」
プイと顔を90度回転した結衣は気のせいではなく、完全に開き直っていた。
「知られてまずいものなのか?」
「・・・・・・。」
黙秘権ってされると意外とイラつくんだな。人生で初めての発見だ。・・・こんな発見いらないんだが。
かと言って、結衣がここまで頑固になるとそうそう聞き出すのは難しいな・・・。
あんまり使いたくはなかったんだが、まあ仕方がないな。
学はストアで厚紙とシャーペンを買うと薄く紙に何かを書いて結衣に言った。
「そうだな、今から1分以内に答えるのなら俺からご褒美をあげてもいいぞ。ただ結衣にとっては得になることだぞ。」
学がそう言うと、結衣の体はピクリとも動いた。
まあご褒美をあげる必要はないんだが、これで結衣が言う可能性は格段に上がっただろう。
「う〜ん・・・。」
目を瞑って考え込む結衣。それをじっと見ている学はまだ押しが弱いと思った。それでも、盗られたものがどんなものかによっては怒るかもしれない。そういう点ではまだご褒美が何かわからない方が学にとって有利だった。
「あと50秒。」
そういえば今更だけどこの状況って結構ヤバいよな?両手を縄で縛って座らせてるって、地球だったら通報ものだな。地球だったらこんなことはしないと思うが。
そして制限時間は刻一刻と迫っていき、残り時間は10秒になっていた。その間、結衣はずっと頭を悩ませていた。
「10、9、8、7、6...」
学も聞き出すことは難しいと諦めかけていたが、律儀なことに最後までカウントを続けていた。
「5、4、3、2...」
「・・・言うよ。」
ついに結衣が折れ、小声でそう呟いた。学はカウントダウンをやめ、結衣の言葉に耳を傾けた。
「私がお兄ちゃんの部屋から取ったものは・・・。」
ゴクリと唾を飲む音がしたが、それは学だったのか、はたまた結衣だったのか、それは分からない。
「写真。」
「・・・?」
思っていたものとは大幅に違い、学は困惑した。
写真・・・。たしかに写真(学と結衣のツーショット、もしくは結衣の写真)はしまってあったが、それを盗る必要はあったのか?
「ちなみに理由は?」
「・・・そんな事よりご褒美の添い寝をしてよ。」
学が書いた厚紙の後ろにはたしかに“添い寝”と書かれてはいた。しかし学が書いた位置から文字を見ることは不可能なのだが、結衣は学が書いているところを凝視して、シャーペンの動きでどんな文字が書かれているか憶測していたのだ。
学はため息をつきながら結衣の縄を解いて添い寝をするためにお互いの部屋がある二階へと足を運んだ。
「あ、お兄ちゃんの部屋がいいんだけど・・・ダメかな?」
学は無言で自室の扉を開けた。結衣は了承のサインと考え部屋へと入るとすぐにベッドへと潜り込んだ。学は写真ケースを引っ張り出し、どの写真が抜き取られたか確認した。
確認し終わると学も大人しく結衣がいるベッドへと入った。
「どの写真か分かった?」
同じベッドに入って10分ほど経った頃、結衣は学にそう聞いた。
「もちろんだ。なくなった写真は初めて結衣が家に来た時、2人で撮った写真だな。」
「そうそう。今その写真を絵にしてるから、終わったら返すね。」
「別にそれはいいんだが、どうして早く言わなかったんだ?それくらいだったら別に言えば貸したんだが。」
「・・・それはプライドの問題だったの。」
「プライドか。」
よく分からなかった学だが、こう言う形とは言えしっかりと取ったものを言ったので許すことにした。
・・・やっぱり甘いのか?仮に飯田とかだったら殴るんだが。
すると結衣は布団の中でノソノソと動き、学へと体を密着させた。学の鼻は女の子特有の甘い香りを嗅ぐことになった。
「抱きつかせることはご褒美の内容に含まれてないぞ。」
学は冷静なツッコミをしたが、結衣はそれを無視して学の体に顔を埋めた。
「はぁ・・・。」
「んっ...お兄ちゃん・・・それ気持ちいい。」
学は自分の胸あたりにいる結衣の頭を撫でた。結衣はそれが気持ちよく、しばらく撫でられると静かに寝息をたてるのだった。
結衣が寝たのを確認すると、学は結衣の髪を触って目が見えるようにどかした。穏やかそうな結衣の表情は学にとっての幸せそのものだった。
なんだかんだで・・・俺は甘いんだろうな・・・。
しばらくすると学も寝息をたて、意識を手放すのだった。
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以下作者のコメント
この前テストがあったと思えば、次は期末テストです。わーいうれしーなー(棒)
というか、忙しすぎる・・・。学生の人は決して委員会の委員長にならないほうがいいですよ。ものすごく疲れます。
バジリスさん。コメント有難う御座います。不具合が起きているらしく、コメントをしてくださった話に記録が残っていなかったのでこの場で返信をしたいと思います。
この作品を好きと言ってくださった点では、有難う御座います。としか言いようがありません。有難う御座います。
で、妹の方ですが・・・諦めましょう。理想と現実は常にかけ離れているものです。変な期待を持たない方がいいと思います(笑)
もしかしたら妹さんがブラコンで、照れ隠ししてるかもしれないですよ。矛盾しますが、希望は捨てないようにしましょう。
なんでしたら妹さんにブラコンなの?と聞いてみては?多分「○ね!」と言われて終わりだと思います。
責任は取りませんよ。
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コメント
さらだ
珍しい・・・というか前期と後期ってあまり聞きませんね。月曜日にテストって憂鬱ですよね。お疲れ様でした。
田中 凪
学校が特殊で3期制じゃなくて前期と後期だから月曜日に中間終わった()
去年までは中学生だったしわかるなぁ、その気持ち…
さらだ
プラスに考えてみましょう。あなたの妹はブラコンで、兄であるあなたに照れ隠しでそんな事を言ってしまうのです。そして言った後、自室に引きこもって後悔するのです。どうですか?少しは可愛く...見えませんね。はい。
Flugel
現実の妹なんて・・・いない方が・・・
事あるごとに死ねとかなんとかうるさいし
驚きだろ・・・?これで年長なんだぜ・・・?
さらだ
今回は表示されました(笑)
まあ現実はそんなものですよ。しかし下ネタというのは頂けませんね。
その行為は生命を産み出すという素晴らしいことなんだ。と、僕は親に言ったところアホかと言われました。・・・難しいですね。
この作品じゃなくても、もっと可愛い妹が出てくる作品はありますのでそちらもオススメしますよ。
応援有難う御座います。