妹はこの世界でただ一人の味方

さらだ

決着

「チッ・・・。ゼイドはやられたか。」

距離は僅か10mといったところか・・・。身体強化も切れてるな。インターバルで再び使えるまであと4分後。多分さっきまでなら押し切られてただろうな。けど、今は結衣がいる。一緒に戦えばなんとかなる・・・のか?

「お兄ちゃん。あとでいっぱい言いたいことがあるから。」

結衣はそれだけ言うと学の右手を掴んで起き上がらせた。目を合わしてはいなかったが。
起き上がらされて、学は一息ついた。

あとで・・・か。やっぱり死にたくないし、死なせたくもないのか。ああ。やってやろうか。また2人で生活するまでな。

「ほどほどにしてくれると助かるよ。ともかく目の前の相手に集中しようか。」

「うん。」

どこで知ったかわからないが、結衣も戦闘の体制に入る。

「まあいい。所詮2人に増えただけ・・・。何の問題もない。」

「うっせぇ。オークの姿で気持ち悪いんだよ。さっさとくたばれ。」

正直あの死の寸前に感じたあの感覚。なだ忘れてない。多分これからも忘れられない。でも・・・これはいい経験だ。死んだらそこでゲームオーバー。結衣を死なせても同じ。現代のゲームでももう少しまともなのを作るぞ。

「1人が2人に・・・なったところで何が変わる?先ほどまで全てにおいて負けていたであろう。」

「そうだな。だけど知っているか? 俺は1人。1だ。だけど結衣が来たから合わせて2。単純計算して2倍なんだ。1と2は違う。」

「1も2も同じことだ。」

「あっそ。」

まさか俺の考えが共感されないとは・・・。驚きだ。別にこんな奴に分かって欲しくもないんだが。

「結衣。身体強化は使ったか?」

「うん。あと7分くらい。」

身体強化がお互いに使えるのは3分間か。それが過ぎれば俺はもう使えない。なんとかしないとな・・・。

「結衣は全力で攻めてくれ。俺はなんとしてでも相手に食いつく。隙があったら迷わず言ってくれ。」

「うん。」

そして対峙すること数秒。先に動いたのはドーレだった。木から落ちて来た葉っぱが地面につくのと同時に一瞬で最高速度に達し、収納スキルから出していた剣で学を狙った。

それを学は間一髪で避けると、ドーレの右腕を掴んだ。

「ふっふっふ・・・。もう離さないぞ。」

「・・・・・・。」

全てを力に注ぎ込めば、相手も動けないか。これ絶対1人だったら出来なかっただろうな。・・・だが今はもう1人いる。

結衣は背後から全力でドーレの背中を殴った。

「がっ・・・!」

巻き添えを喰らわないように学は素早く避ける。

「さっすが結衣。ナイス鉄拳。」

「なにそれ? あんまり嬉しくないよ。」

褒め言葉が見事に散った。まあいい。俺はこれくらいでは折れないさ。
さて・・・。頑丈なもんだな。まだ生きてそうだ。

土煙が舞い、再びドーレが姿を見せると学たちは目を見開いた。なぜならそれは先程まで戦っていたドーレの姿ではなかったからだ。

「成る程・・・。訂正しよう。・・・1と2。同じ程度だと思っていたが・・・確かに手強いな。お前達からも教わる事があった。・・・礼を言う。」

「そりゃよかったな。・・・で、その礼とやらを撤回していいんでその姿のことを教えて欲しいんだが。」

さっきまでは変異種のようなオークの姿。しかし、今は機械のような体で作られた魔族だった。まず四肢は完全に機械。顔も半分は塗り固められたような形跡がある。

いや、俺は相手が機械だろうと神だろうとどうでもいい。だが

「どうして・・・ここに機械があるんだ・・・?」

ここの世界には基本的にそんなものがあるはずがない。唯一の例外としてあの黒ずくめの人間が持っている物だけではないのか?

「機械?・・・もしかしてこの装置の事か?・・・一つだけお前らに教えてやろう。私が・・・この装置を付ける原因を作ったのは人間だ。・・・そして、この装置を発見したのも人間という事だけだ。」

考えるのはあとだな。俺から聞いといてなんだけど。・・・さっき抑えるのに夢中すぎて左手の痛みを忘れてた。やばいなこれは。勝つ勝算も無いのにこれ以上戦うのは危険だ。

「いい情報をありがとよ。・・・で、一つ提案なんだが戦いはここで終わりにしないか?」

「お兄ちゃん!? なんでやめちゃうの!? こいつはお兄ちゃんを傷つけたんだよ。なのに逃がしてあげるとか私が許さないから。」

学はそれを聞き流した。

「私の任務は二つの内、1つをこなせばいいと言われた。・・・1つ目はお前達2人の殺害。・・・そしてもう1つはラジックを倒した時の魔石の回収。だが、消えた山の中から探し出すのは困難と考えた。」

それで俺たちを殺す方を選んだのか。

学は収納から魔石を取り出し、ドーレに投げた。それを警戒しながらもドーレは受け取った。

「間違いなくラジックっていうやつの魔石だ。」

「・・・確かにこれはラジックの魔石だ。・・・これで任務完了。」

そしてドーレは学と結衣の方を向いてしばらく無言になっていた。それで学は気分を悪くし、投げやりのような言い方で言った。

「なにさっきから見てるんだよ。気持ち悪りぃ。」

「お前は・・・いや、お前達は俺たちの敵対をするのか?」

その問いに2人はすぐに答えた。

「「俺(私)達、そして結衣(お兄ちゃん)に危害を加えようとするならどんな相手でも戦う。」

「それが俺の生き方だ。」

「それが私の生き方。」

迷いがなく、本当にそうとしか思っていない目をしている2人を見てドーレは一瞬・・・微かに笑った。

「お前達・・・を相手にするのは正直・・・こちらにとっても損害でしか無い。俺から魔王様に・・・お前達を敵にしないほうがいいと言っておこう。」

「それは助かるな。正直あんたより強い奴がいるとか今の俺じゃ倒せないわ。・・・2人なら分からないがな。」

と、ドーレを挑発するような顔で言った。それを無視してドーレは結衣の方を見た。

いくら身体強化を使っていてもあれほどの力を出せるものなのか?距離はたいして無かったはずだ。・・・知らないほうがいいのか?

ここで学の待ったが入る。

「おいおいおいおい! なに見つめあってるんだ!?あ゛あ゛!? 」

完全に不良である。それほど妹の事を思っている証拠でもあるが。
いきなり怒鳴られたドーレは少し驚いたが、すぐに謝った。

「・・・すまない。・・・そういうつもりではなかったんだ。」

「どうだか。もう話は終わりだ。帰れ帰れ。」

その言葉を最後にドーレは背中から出した翼で空を飛んで行った。その背中を見て、学は鑑定を使った。


名前 ドーレ・チェンベンド
レベル 319

HP  34532/38120
MP  5920/6630
ATK 62050
DEF 68210

スキル
身体強化:8 初級魔法:10 中級魔法:10 上級魔法:8 初級回復魔法:10 中級回復魔法:7 格闘術:8 自爆:10

ユニークスキル
幻惑 

称号
魔王軍幹部 序列4位


俺たちってやばいやつ相手にしてたんだな・・・。俺なんかオークを倒したおかげでレベル195まで上がってたのに。もっと強くならないといけないな。
・・・でもその前に。

「お兄ちゃん・・・。」

怒ってる結衣の機嫌を沈めないとな・・・。



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以下作者のコメント
今日は雪! 作者の大嫌いな雪! 雪好きの人がいたらごめんなさい。積もってまだ誰の足跡がついてなければ綺麗なんですけど、足跡がつき雪が溶け道路が水びたしになるのが好きじゃないんですよね。

珍しく戦闘関連の話を書いたんですけど、やっぱり難しいですね。描写が上手くいかないんですよ。次回は・・・まだどんな話にするか決まってないんですけど、早めの投稿にしたいと思います。

これは要望なんですけど、こんな話を書いて欲しいとかあったらコメントに残してください。出来る限り書きたいと思います。ていうか、書きます。

では今回はこれくらいで。

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コメント

  • さらだ

    お褒め頂き有難う御座います。そして意見も出して頂き有難う御座います。僕も幼馴染はいるんですけど雪合戦はしなかったですね。今日僕の家に集まってゲームをしていました。来たのは1人だけですけどね。

    1
  • たーくん

    やっぱり戦闘シーンは最高です。次回は少し落ち着いた話が良いです。自分勝手でスミマセン。
    それとさっき近所の子たちと雪遊びをしましたがメンバーが全員異性で少し落ち着きませんでした。これで幼なじみじゃなかったらどうなっていたのか・・・・・・

    3
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