チート無しクラス転移〜〜Be chained(ベチーン)〜〜
二章 2話 『泣き落としさえ効かず』
「何とか、お願いできませんか・・・?」
「ダメだ、1木貨もまけらんねぇ」
周りに大量の鎧が設えられたその店の中央で、オレは筋骨隆々な男にすがりついていた。
「そこを何とか!どうにか金貨200枚でここの鎧売ってください!!」
「しつっこいぞこのガキィ!第一なぁ、武具の聖地、コルドバで、ンなはした金で鎧買う人なんて何処にもいねぇんだよ!」
今、オレがいるのは街の端っこあたりにあった『ドラム』という防具屋だ。
店の前には『激安!搏撃卿も愛用のメルメタル製鎧!』
と銘打たれた看板が設置されてある。
「そんな!激安って書いてあったから入ったんスけど!!アレっすか!看板に偽りありっスか!?」
めげずに値切り交渉を続けるオレに辟易し、筋骨隆々の男、店長さんは乱暴にオレをひっぺがす。
「うるせぇ!このガキ!商売の邪魔だからもう散れ!!」
けんもほろろ、といった感じでまるで取り合ってくれない店長さんに見切りをつけ、諦めて帰ろうとした。
「・・・・・・この店の悪評、有る事無い事触れ回ってやる」
捨て台詞を吐いて。
「やってみろクソガキ、またのお越しをお待ちしています」
「お、覚えとけーーーーーーー!!」
涙を流して、オレは防具屋『ドラム』を後にした。
ーーーーーーーーーーーー
「あーーーーーー。どうすっかミツキぃ」
オレは宿屋の一室にて、ベットに埋まりふて腐れていた。
武具のメッカ、コルドバに来てから1日経った。
今日は朝から二手に分かれて情報収集を行っていた。
オレの方はご存知の通り惨憺たる結果だったが、ミツキはどうだったのであろうか。
「分かったことはあるけどぉ、どれも芳しくないねぇ。この街に限って、武具の値段が物凄い高いんだよぉ」
「そりゃあ、武具の聖地ってトコだからなぁ・・・」
どこの店に行っても、最高級品しかない。
平均的な鎧の値段で金貨450枚、とても手の届く代物でない。
「もう、稼ぐくらいしか思いつかないわ。日雇いのバイトでも探してみるか」
一応、引越しやイベント設営のバイトなどは経験がある。
「リミットの19日後から逆算して、おおよそ銀貨30枚が限度だねぇ」
いつのまにか仕事の賃金の相場すらも調べてあるミツキに脱帽した。
「んあーーー・・・、じゃーもーどーしよーもないじゃんかー」
ベッドに寝そべったまま足をバタバタさせる。
本当は、どうしてもミッションを成功させたい。
しかし、現状どうしようもないのだ。
あまりにも所持金が足りなすぎる。
「そうだ!今から別の街に行くのはどうだ!?」
ピーンときた。
ミツキは1平方メートル程ある地図を広げてオレに見せる。
「コルドバは結構な辺境でねぇ、それがひと昔前この街が寂れていた理由でもあるんだけど、近く19日以内に着きそうな街は無いんだよぉ」
すぐにオレの発想は頓挫する。
「こんな事ならもうちょっと金貨くれても良かったろーー・・・」
オレは姿の見えない仮面の男に向けて、ボヤいた。
「ーーーーーお昼、食べに行こうかぁ」
悠然と木製のイスから立ち上がると、ミツキはそう提案した。
ーーーーーーーーーーーーーー
「実際さ、金貨250枚って、どんくらいの価値があるんだ?」
オレは宿屋近くの定食屋に入ってオーダーした魚の煮付けとボソボソのパンをパクつきながら、ミツキに問うた。
正直、あんまり美味しくない。
見たこともない魚もやたら小骨が多く、パンは水で流し込まないと、とても嚥下出来るものではない。
「まず、貨幣の種類は5種類あってねぇ、下から、木貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨って順なんだぁ」
「金貨はその中で2番目に価値のある硬貨で、250枚もあればそこそこの大きさの家が建てられるレベルらしいよぉ」
「ほーん、じゃあ武具には手が出せないにしろ大金には変わりないんだな」
そう考えると、今オレたちがやろうとしているのはドイツに来てベンツを買うような物なのかも知れない。
ーーーーーていうか、ミツキ、既にこの世界の常識に馴染みつつあるよなぁ。
マジでオレと同時期に異世界に来たとは思えないほどだ。
何というか、つくづくコイツが居てくれて良かったと思う。
「午後はどうする?また適当な武具屋見つけて値切り交渉でもするか?」
防具屋『ドラム』では泣き落としをしてみたが効果は薄かった。
次は、土下座も織り交ぜた交渉を実践しよう。
1人決心を固めているとミツキがモグモグしていたパンを水で流し込み、口を開く。
「いやぁ、正攻法ではちょっときつい事が分かった。食べ終わったら行きたいところがあるんだぁ。次は搦め手で行こうかぁ」
そう、悪い笑みを浮かべて言った。
どうも!キズミ ズミです!!
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