近くて遠い恋の花

はこ。

過去の話

西門から帰る人は少なくて、待ち合わせなどにはピッタリである。
人混みの中でも目立つ由美を見つけるのはそんなに大変ではない。
人混みでない場合でも遠くから見えるのだが。
由美は門に寄りかかり、本を読んでいた。
足音に気付くと本をパタリと閉じる。
由美「遅いー」
零「仕方ねーだろ、翔がなかなか離してくれなかったんだから」
由美「ま、かくいう私も今来たんだけど」
と言い頭を搔く仕草をする。
零「お前も人の事言えないじゃん」
由美「私の方が早かったからいーの」
無邪気に笑い帰ろ、と手を引っ張る。
昔から由美は引っ張る力だけは強い。
由美「ねぇ、今日は何する?」
零「んー…あ、古典教えてくれよ」
由美「いいけど、どこが分からないか分かる?」
零はんー…と考えてたが、難しい顔をして
零「全部かな!」
と開き直った。
由美は呆れてため息をついた。
由美「テストで赤点取ったら、お母さんに言いつけるからね?」
零「ちょっ…それは酷くねーか?」
焦った顔をする零を見ると由美は少し笑いそうになる。
高校生になったら、幼馴染なんて変わるものだと思った。
小さい頃とは違い、色んな事を知るから変わるのは仕方ないことかと思っていた。
でも零は違った。
いくら友人にからかわれても気にせず、笑顔でいる。
私には出来なかったかもしれない、でも零が気にしてないと言うから、私も気にしないようになった。
幼馴染、かー…
なんか変な感じだけど、この関係は嫌いではない。
零「…でさ、翔のやつがまたからかうから体育館に置いてきたんだー」
ハッと我に返って対応する。
由美「もー、翔くん可哀想だよ」
零「じゃれ合いみたいなもんだからいいんだよ」
何考えてたんだっけ?まぁ、思い出せないって事は重要じゃ無かったんだな、うん。
由美は自問自答で納得し、歩く。
由美の家は10分程で着く。
由美「ただいまー」
いつものように扉を開ける。
遠くの方からおかえりーと声がした、多分由美の姉だろう。
姉「今日は早いね!あ、零くんいらっしゃーい!」
相変わらず元気すぎる人だ。たまにテンションについていけなくなる、ほんとに由美の姉なのかたまに疑いたくなる。
由美「お姉ちゃん、お茶だけちょうだい。お菓子は要らないから」
姉「りょーかいー、麦茶でいい?」
由美「ありがとー」
由美の部屋は2階だ、少し階段を上がるだけですぐ着く。
幼馴染とは言え、女子の部屋に入ったりするのは緊張すると思うのだが、俺は全然緊張しない。

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