近くて遠い恋の花

はこ。

零の兄

翔「萌花ー!」
萌花の足がぴたっと止まる。
翔「なぁなぁ、零見てねぇ? アイツ途中でボール投げて出てったんだけどさ」
萌花「ずっと教室に居たから私は見てないけど…」
萌花が言葉を止める。
萌花「…ねえ翔、なんで零くん出てったの?」
翔「へっ?…こっちが聞きたいよ…外ちらっと見たら急に出てっちゃったんだよ」
萌花は暫く考え、思いついたようにあっと声を上げる。
萌花「もしかしてだけど…」

長い廊下に一つの足音が響く、体育館シューズ、履き変えればよかったと少しの後悔をしながらただ走る。
さっきボールを出してた時に見えたのは、多分アイツだったに違いない。
数々の廊下を曲がり、外に出る。
目的の人物を目に捉えると叫んだ。
「…兄貴っ!」
大声に気付き、振り向いた人物は金髪にしたからか多少零には似てないように見える。
奏多「なんだ零か、俺に何か用?」
零「何か用じゃねーよ、お前…」
暫くの沈黙、零はため息を一つついた。
零「なんで父さんの一周忌、来なかったんだよ…」
分が悪そうに下を向く。兄、奏多の昔からの癖だ。
奏多「あんなやつ…まだ親だと思ってねーよ」
零「だからって…」
奏多「お前はいいよな、愛されてたから」
零の言葉を遮り、吐き捨てるように発言する。
奏多「お前は俺と違って『出来る子』だったからな」
零「…」
奏多「油売ってねーで早く練習に戻れ」
家とは反対方向に歩き出す兄を止める言葉が出てこなくなり、早足で体育館に戻る。
零「…クソ兄貴…」
やっと出た言葉はただの罵倒でしかなかった。


「お疲れ様でしたー!」
体育館に響く無数の声。
零「日曜は部活無いから、体休めといていいよ。じゃ、解散」
バタバタとそれぞれの方向に走り出す部員。翔は汗を拭きながら元気よく零に笑いかける。
翔「お疲れっ!今度の大会も大丈夫そーだな」
今日はいつもよりもハードな練習にしたつもりだが、翔はそれほど疲れてないように見える。
零「そんなのまだ分かんねぇよ」
着替えながら答える。
翔「まーま、気持ちってもんが大事じゃんか」
零「フラグにならないことを祈っとくよ」
なんだよー!と笑いながら颯爽と帰ろうとする零を小突く。
零「痛った!」
翔「あ、そっか今日水曜だもんな、彼女とおデートだもんなー」
翔はそこそこモテるのだがニヤニヤする顔が少しムカつく。
零「…うざい」
さっきのお返しと言わんばかりに翔を強く小突く。
翔「痛ってー!」
悶える翔を1人体育館に残し西門へ急ぐ。
なんで毎回のように絡んでくるのか、面白半分でやってるのかと思うと無性にイライラする。
零「…今度はアイツだけ体育館10周だな…」
ポツリと呟き、走る。

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