薬師シャルロット
真相解明(前編)ラウリィside
俺が、精神魔術について教えなかったことにアヤカは――シャルロットは不満に思ったのか、明らかに不機嫌そうな表情を見せた。
そして大きくため息をつくと、「もういいです!」と、怒った口調で俺を見ながら言葉を紡いでくると、立ち上がり調合室から出て行ってしまった。
彼女が、部屋から出ていった後、俺は座ったまま大きくため息をついた。
まず間違いない。
アヤカが語った内容は、俺が勇者と活動していたときに仕入れた情報が補填している。
大陸の北に存在しているクレベルト王国。
そこは高い山々に囲まれていて、貿易にも適しておらず貿易陸路としても戦略的に意味が薄かったことから、裕福ではなかった。
それが、クレイクという男が王座についたときから、不自然なまでに急速に国力を拡大していったのだ。
ただ、それが何なのかまでは確証できなかったが――。
「ルアル王妃が回復魔術の使い手だったということで、ある程度、事情は説明できる」
俺は、一人呟く。
聖女の回復魔術は、傷口を縫い合わせるだけではなく解毒の力もある程度は持ち合わせてはいるが、病には殆ど効果がない。
――というよりも病に効く魔術など存在しない……。
「……と、言われているが――」
俺は、アヤカが回復魔術をかけた花を見る。
「枯れた花を甦らせる……。それは神の領域に足を踏み入れることだ。それを行えるほどの人間となれば、相手からどれだけの譲歩が引き出せるのか、想像もつかないな」
それから数日、俺とアヤカの関係性は正直言って、良いとはいえなかった。
食事などを用意はしてくれる。
ただ、よく俺のほうを見て何か言い足そうな表情をしたかと思うと、すぐに離れていってしまう。
まるで巷でよく見かけたことのある猫のようだ。
「今戻りました」
「――! エンハーサ、お疲れ様です」
「それよりも、どうかしたのですかな?」
俺とアヤカの不仲を察知したのか、エンハーサがアヤカに話かけている。
「……そんなことないです」
アヤカが、塞ぎ込み沈んだ声でエンハーサの問いかけに答えているが、そんな態度だと何かあったと言っているようなものなのだが――。
「きさまああああああ、アヤカ様に何をした!?」
案の定、怒りの色を目に宿したエンハーサが近づいてくる。
そして襟を掴み、年寄りだというのに獣人だからなのか、俺の体を持ち上げて――。
「エンハーサ、待ってください。私がいけないの」
「アヤカ様……。この男に何かされたのですか?」
「…………何もされてないです」
その言い方は、何かされたと言っているようなものなのだが、否定するなら余計な間は入れないでほしいな。
「エンハーサ殿、少し話しをしたいのだが……」
「なん……だと? だいたい貴様は――」
「大事な話だ。聞いてくれれば、アヤカには関わらないと誓おう」
彼女に会えなくなるのは嫌だが、話をきちんと聞いてもらうためには致し方ない。
それに俺にだって勝算はある。
「よかろう……アヤカ様、この者と話を致しますので少し出かけて参ります」
エンハーサは、俺の襟元から手を離す。
「ラウリィ、ついてこい。貴様の言い分を聞かせてもらおう」
「分かった」
俺は、襟元を正しながら、この獣人の村に来てからずっと暮らしていた建物から出ると、エンハーサの後をついていく。
しばらく後をついていくと――。
「倉庫か?」
「そうじゃ。冬のうちに麦や保存食の大部分が消費されたからの。話すには最適だろう」
「そうだな」
倉庫の扉を開けてエンハーサが入っていく。
俺も、彼の後を追い中に入る。
そして入り扉を閉めると視界は暗闇に閉ざされた。
「ライト」
俺は光系の魔術を発動させ倉庫の中を照らす。
「やはり、暗闇では物を見られるのか? 人間は不便だの」
「まぁな……獣人のあんたには分からないだろうな」
肩を竦めながらエンハーサの言葉に、応じるように言葉を返す。
「それで大事な話とは?」
エンハーサは苛立ちを抑えようともせず話を急かしてくる。
この男が俺のことを気にいらないと思っていたのは薄々感じてはいたが、アヤカが近くに居ないと、本当に態度が変わるよな。
悪いほうにだが――。
俺がすぐに答えないことに苛立ったのか。
「早く答えることだ。帝政国軍部に強い影響力を持つ次代の侯爵ベルナンド家当主にして、勇者ラウリィ=ベルナンド」
「なるほど……、俺のことは調査済みか」
「当たり前じゃ。一目で貴様が一般人ではないというのは分かっておった。調べるのは当たり前じゃな」
「たしかに、シャルロット・ド・クレベルトを国の上層部の意向で守っているなら当然だな」
「――な!?」
俺の言葉に、エンハーサが顔色を変える。
そう、そもそも国同士というのは国境を越えるために身分証を提示が必要になる。
それに、家を借りる場合も身分証が必要だ。
其れなのに、店まで持って商売までしているのがおかしい。
田舎に店を持つならば何とかなるかもしれない。
だが、公都で商売をするためには身分証提示が必要不可欠。
それができると言うことは、国に影響力がある人物の協力が必要だが、俺が半年近く暮らしていたが、そんな人物が接触してきた様子は無かった。
俺の予想は、国がアヤカを守るために国外へ出したと踏んでいたが概ね間違いではなかったようだ。
それよりも問題は――。
「エンハーサ、周りくどいのは好きじゃない。アヤカに精神魔術をかけたのはルアル王妃だな?」
そして大きくため息をつくと、「もういいです!」と、怒った口調で俺を見ながら言葉を紡いでくると、立ち上がり調合室から出て行ってしまった。
彼女が、部屋から出ていった後、俺は座ったまま大きくため息をついた。
まず間違いない。
アヤカが語った内容は、俺が勇者と活動していたときに仕入れた情報が補填している。
大陸の北に存在しているクレベルト王国。
そこは高い山々に囲まれていて、貿易にも適しておらず貿易陸路としても戦略的に意味が薄かったことから、裕福ではなかった。
それが、クレイクという男が王座についたときから、不自然なまでに急速に国力を拡大していったのだ。
ただ、それが何なのかまでは確証できなかったが――。
「ルアル王妃が回復魔術の使い手だったということで、ある程度、事情は説明できる」
俺は、一人呟く。
聖女の回復魔術は、傷口を縫い合わせるだけではなく解毒の力もある程度は持ち合わせてはいるが、病には殆ど効果がない。
――というよりも病に効く魔術など存在しない……。
「……と、言われているが――」
俺は、アヤカが回復魔術をかけた花を見る。
「枯れた花を甦らせる……。それは神の領域に足を踏み入れることだ。それを行えるほどの人間となれば、相手からどれだけの譲歩が引き出せるのか、想像もつかないな」
それから数日、俺とアヤカの関係性は正直言って、良いとはいえなかった。
食事などを用意はしてくれる。
ただ、よく俺のほうを見て何か言い足そうな表情をしたかと思うと、すぐに離れていってしまう。
まるで巷でよく見かけたことのある猫のようだ。
「今戻りました」
「――! エンハーサ、お疲れ様です」
「それよりも、どうかしたのですかな?」
俺とアヤカの不仲を察知したのか、エンハーサがアヤカに話かけている。
「……そんなことないです」
アヤカが、塞ぎ込み沈んだ声でエンハーサの問いかけに答えているが、そんな態度だと何かあったと言っているようなものなのだが――。
「きさまああああああ、アヤカ様に何をした!?」
案の定、怒りの色を目に宿したエンハーサが近づいてくる。
そして襟を掴み、年寄りだというのに獣人だからなのか、俺の体を持ち上げて――。
「エンハーサ、待ってください。私がいけないの」
「アヤカ様……。この男に何かされたのですか?」
「…………何もされてないです」
その言い方は、何かされたと言っているようなものなのだが、否定するなら余計な間は入れないでほしいな。
「エンハーサ殿、少し話しをしたいのだが……」
「なん……だと? だいたい貴様は――」
「大事な話だ。聞いてくれれば、アヤカには関わらないと誓おう」
彼女に会えなくなるのは嫌だが、話をきちんと聞いてもらうためには致し方ない。
それに俺にだって勝算はある。
「よかろう……アヤカ様、この者と話を致しますので少し出かけて参ります」
エンハーサは、俺の襟元から手を離す。
「ラウリィ、ついてこい。貴様の言い分を聞かせてもらおう」
「分かった」
俺は、襟元を正しながら、この獣人の村に来てからずっと暮らしていた建物から出ると、エンハーサの後をついていく。
しばらく後をついていくと――。
「倉庫か?」
「そうじゃ。冬のうちに麦や保存食の大部分が消費されたからの。話すには最適だろう」
「そうだな」
倉庫の扉を開けてエンハーサが入っていく。
俺も、彼の後を追い中に入る。
そして入り扉を閉めると視界は暗闇に閉ざされた。
「ライト」
俺は光系の魔術を発動させ倉庫の中を照らす。
「やはり、暗闇では物を見られるのか? 人間は不便だの」
「まぁな……獣人のあんたには分からないだろうな」
肩を竦めながらエンハーサの言葉に、応じるように言葉を返す。
「それで大事な話とは?」
エンハーサは苛立ちを抑えようともせず話を急かしてくる。
この男が俺のことを気にいらないと思っていたのは薄々感じてはいたが、アヤカが近くに居ないと、本当に態度が変わるよな。
悪いほうにだが――。
俺がすぐに答えないことに苛立ったのか。
「早く答えることだ。帝政国軍部に強い影響力を持つ次代の侯爵ベルナンド家当主にして、勇者ラウリィ=ベルナンド」
「なるほど……、俺のことは調査済みか」
「当たり前じゃ。一目で貴様が一般人ではないというのは分かっておった。調べるのは当たり前じゃな」
「たしかに、シャルロット・ド・クレベルトを国の上層部の意向で守っているなら当然だな」
「――な!?」
俺の言葉に、エンハーサが顔色を変える。
そう、そもそも国同士というのは国境を越えるために身分証を提示が必要になる。
それに、家を借りる場合も身分証が必要だ。
其れなのに、店まで持って商売までしているのがおかしい。
田舎に店を持つならば何とかなるかもしれない。
だが、公都で商売をするためには身分証提示が必要不可欠。
それができると言うことは、国に影響力がある人物の協力が必要だが、俺が半年近く暮らしていたが、そんな人物が接触してきた様子は無かった。
俺の予想は、国がアヤカを守るために国外へ出したと踏んでいたが概ね間違いではなかったようだ。
それよりも問題は――。
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