薬師シャルロット
交錯する願いと思い(3)ラウリィside
俺を助けた女性、彼女の名前はアヤカ。
聖女とは違って、彼女からは最初、儚げな印象を受けた。
そんな彼女は、家事がとっても好きなようで、俺が目を覚ましてから、いつも部屋の隅々まで掃除をしてから、朝食に取りかかっている。
そして、俺の体を気遣ってくれ、体を拭いてくれた。
「それはいいから!」
「――で、でも……まだ、体は動かせないのですよね?」
「大丈夫! 身体強化魔術を使えばなんとかなるから!」
俺は、手洗いにいくのも手伝おうとする彼女を強めの言葉で止めると、ふらつきながらも、手洗いにいく用を足す。
「はぁー……」
――溜息をつく。
彼女は、一体何を考えているのか……。
いくら、俺が病人だとしても、男の体に無意味に触ってくるなど、本当に何を考えているのか理解できない。
理解が追いつかない頭で、部屋に戻るとアヤカは、俺の顔を見るとホッとした表情を見せて、少しだけ怒った表情を見せたあと「無理はしたら駄目ですよ!」と、俺に語りかけてくると部屋から出ていくと。
「ラウリィさん、ご飯の用意が出来ましたよ?」
――と、食事を持ってきた。
彼女は、食事も自分自身で作る。
それは一般家庭を見ると普通かも知れない。
「今日は、いいお野菜とお肉が入ったのでハンバーグにしてみました。――和風です!」
「……あ、ああ……」
野菜と言う言葉に、俺は溜息をついてしまう。
俺は小さい頃から、野菜が苦手だからだ。
よく知らないが、女性というのは野菜が好きらしく、聖女や仲間と旅をしている間、よく野菜を使った食事を宿で出されたことがあった。
それは、保存が利かない野菜という食材が珍しいからだったのかも知れない。
ただ、俺にとってそれは苦痛でしかなかった。
どうして、あんな苦い物を美味しく食べられるのか――。
訳がわからない。
俺は、椅子に座りながら並べられていく食卓に首を傾げる。
目の前には、大きな肉しかない。
あとは細長い茶色いポテトと緑色のクリームのようなものしか見当たらない。
どこにも野菜が見当たらないが――。
「冷めてしまいますので食べてしまいましょう!」
彼女は、私の前に座ると両手を合わせて「いただきます」という言葉を紡いでいる。
そんな作法は大陸を旅してきたが俺は見たことがない。
もしかしたら、座標を指定せずに転移魔術を使ったこともあり、かなりの辺境に飛ばされたのかも知れない。
ちなみに、俺には食事作法などは特にない。
貴族なら食事前に「我らが神よ」と、聖教会の聖言を紡いだりするが、庶民は、そう言ったものをする時間などもったいないから。
彼女がハンバーグと言ったモノ。
大きな肉の塊だと思っていた。
油が多いと思ってはいたが、フォークでハンバーグを抑えながらナイフで切り、一切れ口に運び咬むと肉汁と共に多くの食材の味が口の中に広がった。
「おいしい……」
思わず思ったことを口にしてしまった。
今まで、口にしたどの料理ともまったく違う。
食材の味を生かしながらも食べやすくしている。
「本当ですか? 良かったです。ラウリィさんは、野菜が苦手そうでしたので、少し手を加えてみました。野菜のムースも美味しいですよ? あとは、そのフライドポテトもケチャップにつけて食べてみてくださいね? 男性は体が資本ですから!」
アヤカは、俺を勇者としてではなく貴族としてでもなく、只一人のラウリィという男として見てきてくれる。
そこには打算も何もないように見える。
俺の父親が侯爵家の貴族ということは、帝都で暮らしている者であったら養育費を貰っていることもあり、俺達に近しい人間なら知っていた。
だから、貴族という肩書きは常に傍らに存在していたし、誰もが俺のことを、侯爵家ベルナンド家のラウリィとして接してきた。
でも彼女は違う。
俺のことを……一人の男としてラウリィとして接してきてくれる。
笑顔を見せてくれる。
「ああ、そうだな――」
何故か分からないが、荒んでいた心が、彼女の笑顔を見ているだけで癒されていく。
「こんな時がずっと続けばいいが……」
「どうかしたのですか?」
彼女の言葉に俺は、「――い、いや……、なんでもない」と、答えると食事を全て食べる。
急いで食べたあまり、蒸せてしまう。
「大丈夫ですか?」
アヤカは、驚いて私に近づいてくると陶器に入った水を差し出してくる。
彼女の腰まで伸ばしている艶やかな黒髪が揺れると、とてもいい匂いが鼻腔を刺激してきた。
それは、聖女がつけていたきつい香水とは違う。
薬草を煎じている薬師だからこそ身に纏うことが出来る安心の出来る自然な匂い。
「急いで食べてしまって器官に入ってしまったのですね。気をつけないと駄目ですよ?」
彼女は、俯いた俺の顔を見ながら心配そうな表情で言葉を紡いできた。
アヤカの表情を見るだけで胸が締め付けられるように痛くなる。
どうして、彼女は見ず知らずの俺に、体も満足に動かすことができない俺のために、ここまでしてくれるのか――。
とても興味が沸いた。
聖女とは違って、彼女からは最初、儚げな印象を受けた。
そんな彼女は、家事がとっても好きなようで、俺が目を覚ましてから、いつも部屋の隅々まで掃除をしてから、朝食に取りかかっている。
そして、俺の体を気遣ってくれ、体を拭いてくれた。
「それはいいから!」
「――で、でも……まだ、体は動かせないのですよね?」
「大丈夫! 身体強化魔術を使えばなんとかなるから!」
俺は、手洗いにいくのも手伝おうとする彼女を強めの言葉で止めると、ふらつきながらも、手洗いにいく用を足す。
「はぁー……」
――溜息をつく。
彼女は、一体何を考えているのか……。
いくら、俺が病人だとしても、男の体に無意味に触ってくるなど、本当に何を考えているのか理解できない。
理解が追いつかない頭で、部屋に戻るとアヤカは、俺の顔を見るとホッとした表情を見せて、少しだけ怒った表情を見せたあと「無理はしたら駄目ですよ!」と、俺に語りかけてくると部屋から出ていくと。
「ラウリィさん、ご飯の用意が出来ましたよ?」
――と、食事を持ってきた。
彼女は、食事も自分自身で作る。
それは一般家庭を見ると普通かも知れない。
「今日は、いいお野菜とお肉が入ったのでハンバーグにしてみました。――和風です!」
「……あ、ああ……」
野菜と言う言葉に、俺は溜息をついてしまう。
俺は小さい頃から、野菜が苦手だからだ。
よく知らないが、女性というのは野菜が好きらしく、聖女や仲間と旅をしている間、よく野菜を使った食事を宿で出されたことがあった。
それは、保存が利かない野菜という食材が珍しいからだったのかも知れない。
ただ、俺にとってそれは苦痛でしかなかった。
どうして、あんな苦い物を美味しく食べられるのか――。
訳がわからない。
俺は、椅子に座りながら並べられていく食卓に首を傾げる。
目の前には、大きな肉しかない。
あとは細長い茶色いポテトと緑色のクリームのようなものしか見当たらない。
どこにも野菜が見当たらないが――。
「冷めてしまいますので食べてしまいましょう!」
彼女は、私の前に座ると両手を合わせて「いただきます」という言葉を紡いでいる。
そんな作法は大陸を旅してきたが俺は見たことがない。
もしかしたら、座標を指定せずに転移魔術を使ったこともあり、かなりの辺境に飛ばされたのかも知れない。
ちなみに、俺には食事作法などは特にない。
貴族なら食事前に「我らが神よ」と、聖教会の聖言を紡いだりするが、庶民は、そう言ったものをする時間などもったいないから。
彼女がハンバーグと言ったモノ。
大きな肉の塊だと思っていた。
油が多いと思ってはいたが、フォークでハンバーグを抑えながらナイフで切り、一切れ口に運び咬むと肉汁と共に多くの食材の味が口の中に広がった。
「おいしい……」
思わず思ったことを口にしてしまった。
今まで、口にしたどの料理ともまったく違う。
食材の味を生かしながらも食べやすくしている。
「本当ですか? 良かったです。ラウリィさんは、野菜が苦手そうでしたので、少し手を加えてみました。野菜のムースも美味しいですよ? あとは、そのフライドポテトもケチャップにつけて食べてみてくださいね? 男性は体が資本ですから!」
アヤカは、俺を勇者としてではなく貴族としてでもなく、只一人のラウリィという男として見てきてくれる。
そこには打算も何もないように見える。
俺の父親が侯爵家の貴族ということは、帝都で暮らしている者であったら養育費を貰っていることもあり、俺達に近しい人間なら知っていた。
だから、貴族という肩書きは常に傍らに存在していたし、誰もが俺のことを、侯爵家ベルナンド家のラウリィとして接してきた。
でも彼女は違う。
俺のことを……一人の男としてラウリィとして接してきてくれる。
笑顔を見せてくれる。
「ああ、そうだな――」
何故か分からないが、荒んでいた心が、彼女の笑顔を見ているだけで癒されていく。
「こんな時がずっと続けばいいが……」
「どうかしたのですか?」
彼女の言葉に俺は、「――い、いや……、なんでもない」と、答えると食事を全て食べる。
急いで食べたあまり、蒸せてしまう。
「大丈夫ですか?」
アヤカは、驚いて私に近づいてくると陶器に入った水を差し出してくる。
彼女の腰まで伸ばしている艶やかな黒髪が揺れると、とてもいい匂いが鼻腔を刺激してきた。
それは、聖女がつけていたきつい香水とは違う。
薬草を煎じている薬師だからこそ身に纏うことが出来る安心の出来る自然な匂い。
「急いで食べてしまって器官に入ってしまったのですね。気をつけないと駄目ですよ?」
彼女は、俯いた俺の顔を見ながら心配そうな表情で言葉を紡いできた。
アヤカの表情を見るだけで胸が締め付けられるように痛くなる。
どうして、彼女は見ず知らずの俺に、体も満足に動かすことができない俺のために、ここまでしてくれるのか――。
とても興味が沸いた。
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コメント
コーブ
春だな…