薬師シャルロット
波立つ心
大陸の北方に位置するクレベルト王国は、雪が降る季節は高い山々に囲まれていることもあり外の国々との交流が完全に途絶える。
食料貯蓄などは、先代国王陛下の時代から怠っていないこともあり餓死による死者が出ることはない。
そんな雪が降り続くクレベルト王国の中で唯一、結界により雪が降らないクレベルト城では、淡い陽射しがカーテンの隙間から入ってくる。
「シャルロット、もう朝よ」
お母さまの、私を起こす声が聞こえてきた。
私はゆっくりと瞼を開けていく。
昨日は、攻撃魔術の失敗により魔王さんを、すごく怪我させてしまったこともあり、中々寝つけなかった。
最後まで残っている記憶と言えば外がうっすらと明るくなってのは覚えている。
「……うん……」
お母さまの声に小さく頷きながらも、私はベッドから出ると下着を着替えてから淡い黄色のワンピースに着替える。
それから、お母さまに手伝ってもらって髪を整え身嗜みを整えたあと、食事をする。
味はするけど、昨日の魔王さんの怪我を思い出すと、どうしても食事が喉を通らない。
「大丈夫?」
お母さんが心配した表情で、私に話かけてくる、
私は、小さく「うん」と呟く。
「もう、さっきから、ずっと上の空よ? 今日は休んだらどうなの?」
お母さまの声に私は頭を振るう。
だって休んだら魔王さんに悪いから。
それに、魔王さんは私を庇って怪我をしたのだもの。
「大丈夫、こんどこそ――うまく……やってみるから……」
「あまり無理はしないようにね? 別に、シャルロットが戦う必要なんてないのだから。最悪、魔王国に併合してもらってもいいのよ? 別に、私は王族に執着なんてないのだから……」
「それは駄目……」
だって、そしたら私を一生懸命鍛えてくれて、怪我までした魔王さんに悪いもの。
そんなの、私の身勝手な一存で決められないし、今までしてきた努力が無駄になるのも嫌。
それに魔王さんは言っていたもの。
王族は王族として民を導き守るための義務があるって……。
「大丈夫だから……、私は大丈夫だから……。約束したから……国を守るって、そのために魔王さんと約束したから、破ったら嫌われるもの」
魔王さんは、いつも支配者たるもの! ――って口癖のように私に指導者として何が必要なのかを教えてくれる。
だから、私も……いつかは魔王さんの横に立てるくらい――。
「――えっ? 私、今なんて……」
「どうしたの?」
「ううん」
私は、お母さまの言葉に頭を振るう。
一瞬、自分は何を考えた?
自問自答してしまう。
だって、魔術もまともに使えない私が、こんなメンドクサイ立場の私を魔王さんが……。
そこまで考えたところで、扉がノックされた。
いつも通り魔法さんが向かえに来たと思って扉に駆け寄る。
「魔王さん、昨日はごめんなさい」
私は扉を開けながら言葉を紡ぐ。
扉の外には魔王さんがいると思って――。
でも、そこに居たのは宰相の立場に復帰したアズルドで……。
彼は、「シャルロット様。しばらく魔王殿は北方の領土に戻るとのことです」と、話かけてきた。
私は立ち尽くしてしまう。
「――え? 魔王さんが……? どのくらいで戻るの?」
「はい、1年ほどとのことです。国境沿いには魔王殿の配下幹部が防衛に当たっているとの事でしたので、心配しなくていいと――」
「……なかったのに……」
私は、その場に、絨毯の上に座りこんでしまう。
昨日、魔王さんに怪我をさせたショックで、魔王さんに謝れなかったのに……。
今日は、朝一番会ったら謝ろうと思ったのに……。
「私……私……魔王さんに嫌われた――」
だって、何かあったら必ず私に何か言ってから行動していたもの。
それなのに、何も言わずに魔国に戻るなんて絶対に嫌われた。
嫌われて……。
「うああああああああん」
大きな声で、私は年甲斐もなく泣いてしまっていた。
すぐに、後ろから誰かが優しく抱きしめてきてくれたけど、一度、高ぶった感情は押さえが効かずに決壊した。
気がつけば部屋の中は暗くて――。
「……あれ? 私……」
「起きたのね」
声がした方へ視線を向けるとお母さまの立派な胸と、顔が見えた。
私は膝枕されていたみたいで。
「私……」
「もう、大変だったのよ。魔王さんに嫌われた、嫌われたって泣きじゃくって疲れて寝てしまうのだもの」
お母さまは、私の頭を撫でながら話かけてきたけど、まったく覚えが無い。
もう途中から、頭の中はぐちゃぐちゃになって……。
「お母さま、私……魔王さんに会いたい――」
「……それは駄目よ。彼は魔族なのだから、それに彼は自国内に踏み入って奪っていった物で貴女が傷ついたから、国が傾いたから力を貸してくれているだけなのよ? だから、彼には貴女への特別な感情などはないの」
「……でも……」
「それに、彼はもうすぐ魔王になってから千年でしょう?」
「?」
お母さまが何を言いたいのか分からない。
お母さまは少し寂しそうな目をして口を開いて語りかけてきた。
その言葉の意味が一瞬、飲み込めない。
「――う、うそ……。だって……どうして……」
「本当のことよ? 魔族の寿命は千年なの、彼はいつ死んでもおかしくないのよ?」
食料貯蓄などは、先代国王陛下の時代から怠っていないこともあり餓死による死者が出ることはない。
そんな雪が降り続くクレベルト王国の中で唯一、結界により雪が降らないクレベルト城では、淡い陽射しがカーテンの隙間から入ってくる。
「シャルロット、もう朝よ」
お母さまの、私を起こす声が聞こえてきた。
私はゆっくりと瞼を開けていく。
昨日は、攻撃魔術の失敗により魔王さんを、すごく怪我させてしまったこともあり、中々寝つけなかった。
最後まで残っている記憶と言えば外がうっすらと明るくなってのは覚えている。
「……うん……」
お母さまの声に小さく頷きながらも、私はベッドから出ると下着を着替えてから淡い黄色のワンピースに着替える。
それから、お母さまに手伝ってもらって髪を整え身嗜みを整えたあと、食事をする。
味はするけど、昨日の魔王さんの怪我を思い出すと、どうしても食事が喉を通らない。
「大丈夫?」
お母さんが心配した表情で、私に話かけてくる、
私は、小さく「うん」と呟く。
「もう、さっきから、ずっと上の空よ? 今日は休んだらどうなの?」
お母さまの声に私は頭を振るう。
だって休んだら魔王さんに悪いから。
それに、魔王さんは私を庇って怪我をしたのだもの。
「大丈夫、こんどこそ――うまく……やってみるから……」
「あまり無理はしないようにね? 別に、シャルロットが戦う必要なんてないのだから。最悪、魔王国に併合してもらってもいいのよ? 別に、私は王族に執着なんてないのだから……」
「それは駄目……」
だって、そしたら私を一生懸命鍛えてくれて、怪我までした魔王さんに悪いもの。
そんなの、私の身勝手な一存で決められないし、今までしてきた努力が無駄になるのも嫌。
それに魔王さんは言っていたもの。
王族は王族として民を導き守るための義務があるって……。
「大丈夫だから……、私は大丈夫だから……。約束したから……国を守るって、そのために魔王さんと約束したから、破ったら嫌われるもの」
魔王さんは、いつも支配者たるもの! ――って口癖のように私に指導者として何が必要なのかを教えてくれる。
だから、私も……いつかは魔王さんの横に立てるくらい――。
「――えっ? 私、今なんて……」
「どうしたの?」
「ううん」
私は、お母さまの言葉に頭を振るう。
一瞬、自分は何を考えた?
自問自答してしまう。
だって、魔術もまともに使えない私が、こんなメンドクサイ立場の私を魔王さんが……。
そこまで考えたところで、扉がノックされた。
いつも通り魔法さんが向かえに来たと思って扉に駆け寄る。
「魔王さん、昨日はごめんなさい」
私は扉を開けながら言葉を紡ぐ。
扉の外には魔王さんがいると思って――。
でも、そこに居たのは宰相の立場に復帰したアズルドで……。
彼は、「シャルロット様。しばらく魔王殿は北方の領土に戻るとのことです」と、話かけてきた。
私は立ち尽くしてしまう。
「――え? 魔王さんが……? どのくらいで戻るの?」
「はい、1年ほどとのことです。国境沿いには魔王殿の配下幹部が防衛に当たっているとの事でしたので、心配しなくていいと――」
「……なかったのに……」
私は、その場に、絨毯の上に座りこんでしまう。
昨日、魔王さんに怪我をさせたショックで、魔王さんに謝れなかったのに……。
今日は、朝一番会ったら謝ろうと思ったのに……。
「私……私……魔王さんに嫌われた――」
だって、何かあったら必ず私に何か言ってから行動していたもの。
それなのに、何も言わずに魔国に戻るなんて絶対に嫌われた。
嫌われて……。
「うああああああああん」
大きな声で、私は年甲斐もなく泣いてしまっていた。
すぐに、後ろから誰かが優しく抱きしめてきてくれたけど、一度、高ぶった感情は押さえが効かずに決壊した。
気がつけば部屋の中は暗くて――。
「……あれ? 私……」
「起きたのね」
声がした方へ視線を向けるとお母さまの立派な胸と、顔が見えた。
私は膝枕されていたみたいで。
「私……」
「もう、大変だったのよ。魔王さんに嫌われた、嫌われたって泣きじゃくって疲れて寝てしまうのだもの」
お母さまは、私の頭を撫でながら話かけてきたけど、まったく覚えが無い。
もう途中から、頭の中はぐちゃぐちゃになって……。
「お母さま、私……魔王さんに会いたい――」
「……それは駄目よ。彼は魔族なのだから、それに彼は自国内に踏み入って奪っていった物で貴女が傷ついたから、国が傾いたから力を貸してくれているだけなのよ? だから、彼には貴女への特別な感情などはないの」
「……でも……」
「それに、彼はもうすぐ魔王になってから千年でしょう?」
「?」
お母さまが何を言いたいのか分からない。
お母さまは少し寂しそうな目をして口を開いて語りかけてきた。
その言葉の意味が一瞬、飲み込めない。
「――う、うそ……。だって……どうして……」
「本当のことよ? 魔族の寿命は千年なの、彼はいつ死んでもおかしくないのよ?」
コメント
コーブ
魔族千年命初耳設定新鮮だわ♪