薬師シャルロット
王女様、捕まる
「よしっ! とりあえずは、王妃の容態をチェックすること! そして魔術書を手に入れること!」
私は両手に力を入れて目標を立てる。
そして草むらの中、伏せたまま進んでいく。
たしか、この辺りの地形は、前の部屋の窓から見たことある。
前の部屋には魔術書が置かれていたし、とりあえずは魔術書を……ふにゃ?
急に、瞼が重くなってきた。
体も重い。
「もうすぐ、もうすぐなのに……」
私が住んでいた部屋がある建物まで――白い大理石で建てられた建物までもう少しなのに、何者かに強制的に意識が奪われ……。
眩しい……。
誰かが額に手を当てている感じがする。
ゆっくりと瞼を開けていく。
すると、そこには犬耳を頭につけたエンハーサ様と呼ばれていた獣人の男性が居た。
エンハーサさんは、椅子に座って私の腕などを触って「ふむ……特に異常は見当たらないな」と、後ろに立っていたメロウさんに話かけていた。
「ここは……」
意識がハッキリしていくに連れて自分が、今、どこにいるかがわかってくる。
ここは尖塔の部屋で――。
私は、魔術か何かで意識を奪われて、ここに連れ戻されたのだろう。
まさか、睡眠系の魔術が存在していたなんて思いも寄らなかった。
「シャルロット様、お加減は如何ですか?」
「わたしは、どうしてここに……」
「シャルロット様は、後宮近くの道で倒れていたのです」
「こうきゅう……」
後宮? 倒れていた? つまり、どういうことなのか?
「恐らくは幼子の体力の無さを考慮に入れていなかったかと、途中で力尽きて倒れてしまわれたのでしょう」
「……そう」
言われて初めて気がつく。
たしかに、子供は遊んで力尽きると電池が切れたように寝てしまう。
それも食事中であっても寝てしまう子が出てくる。
つまり、私もそうであったと……。
ただ、エンハーサやメロウさんの雰囲気からして、私の体に異常がないのかと考え、私の体力の無さを考慮してない発言をしていることから――。
「とくに魔族の魔力は感知できませんでしたが、しばらくは様子ですね」
エンハーサはメロウさんと私に語りかけてくる。
どうやら、魔族が関わっていたことは規定路線になりつつあるみたい。
それにしても、子供の特性をスッカリ忘れていた。
私は扉のほうへと視線を向ける。
すると、前は鉄格子が1つだけだったのに、2つに増えていた。
これだと、1個でも鉄格子が閉まっていたら、脱出なんてできない。
これは、本格的に魔術の練習をする必要が出てきそう。
「メロウ……」
「何でしょうか?」
「お母さまから、頂いた魔術書がほしい……」
「ダメです」
私のお願いが即、却下されてしまった。
「シャルロット様には、帝政国に嫁ぐために多くのことを学んでいただくことがありますので……。これは、クレイク国王陛下からの願いでもあります」
「――で、でも……」
「シャルロット様には、まだ、ご理解頂けるとは思っていませんが、王族として生まれた以上、民の生活を守るのは王族の義務でございます。帝政国はローレンス大陸において魔法帝国ジールと双璧を成す巨大国家でございます。そこに嫁がれるということは、大変名誉なことですし、そのためには帝政国の未来の皇帝をサポートできるだけの知識や品格などが求められるのです。魔術の修練には長い時間が必要とされますので、シャルロット様には必要ありません」
「……それでも……」
「シャルロット様も、大きくなられれば分かって頂けると信じております」
これは、もう確実に私を帝政国とやらに嫁がせる予定が組まれているかのような話し方。
間違いなく、これは私が何を言っても代わらないと思う。
そうなると……。
魔術書を手に入れるのは、不可能と見て間違いない。
これは困った……。
ほんと、どうしよう……。
「まだ疲れが残っているようなので、今日、一日寝ていたほうがいいでしょうな」
すると診察が終わったのか獣人の王宮薬師エンハーサは立ち上がると鍵を使って部屋から出ていった。
「それでは、シャルロット様。後ほど、食事をお持ちいたしますので、お昼寝でもしていてくださいね」
メロウさんが、寝ている私の頭を撫でながら子供扱いしてくる。
まぁ、子供だけど体は幼女だけど……一応、頭脳は大人だけどね……。
それにしても、どうしよう。
魔術のことで知っている事と言えば、起きる物事の過程を頭の中に思い浮かべて「浮力」と発声して発動させるくらい。
他の魔術なんてまったく知らないしお手上げ。
もう、独自に魔術を模索していくしか方法がないかも。
私は両手に力を入れて目標を立てる。
そして草むらの中、伏せたまま進んでいく。
たしか、この辺りの地形は、前の部屋の窓から見たことある。
前の部屋には魔術書が置かれていたし、とりあえずは魔術書を……ふにゃ?
急に、瞼が重くなってきた。
体も重い。
「もうすぐ、もうすぐなのに……」
私が住んでいた部屋がある建物まで――白い大理石で建てられた建物までもう少しなのに、何者かに強制的に意識が奪われ……。
眩しい……。
誰かが額に手を当てている感じがする。
ゆっくりと瞼を開けていく。
すると、そこには犬耳を頭につけたエンハーサ様と呼ばれていた獣人の男性が居た。
エンハーサさんは、椅子に座って私の腕などを触って「ふむ……特に異常は見当たらないな」と、後ろに立っていたメロウさんに話かけていた。
「ここは……」
意識がハッキリしていくに連れて自分が、今、どこにいるかがわかってくる。
ここは尖塔の部屋で――。
私は、魔術か何かで意識を奪われて、ここに連れ戻されたのだろう。
まさか、睡眠系の魔術が存在していたなんて思いも寄らなかった。
「シャルロット様、お加減は如何ですか?」
「わたしは、どうしてここに……」
「シャルロット様は、後宮近くの道で倒れていたのです」
「こうきゅう……」
後宮? 倒れていた? つまり、どういうことなのか?
「恐らくは幼子の体力の無さを考慮に入れていなかったかと、途中で力尽きて倒れてしまわれたのでしょう」
「……そう」
言われて初めて気がつく。
たしかに、子供は遊んで力尽きると電池が切れたように寝てしまう。
それも食事中であっても寝てしまう子が出てくる。
つまり、私もそうであったと……。
ただ、エンハーサやメロウさんの雰囲気からして、私の体に異常がないのかと考え、私の体力の無さを考慮してない発言をしていることから――。
「とくに魔族の魔力は感知できませんでしたが、しばらくは様子ですね」
エンハーサはメロウさんと私に語りかけてくる。
どうやら、魔族が関わっていたことは規定路線になりつつあるみたい。
それにしても、子供の特性をスッカリ忘れていた。
私は扉のほうへと視線を向ける。
すると、前は鉄格子が1つだけだったのに、2つに増えていた。
これだと、1個でも鉄格子が閉まっていたら、脱出なんてできない。
これは、本格的に魔術の練習をする必要が出てきそう。
「メロウ……」
「何でしょうか?」
「お母さまから、頂いた魔術書がほしい……」
「ダメです」
私のお願いが即、却下されてしまった。
「シャルロット様には、帝政国に嫁ぐために多くのことを学んでいただくことがありますので……。これは、クレイク国王陛下からの願いでもあります」
「――で、でも……」
「シャルロット様には、まだ、ご理解頂けるとは思っていませんが、王族として生まれた以上、民の生活を守るのは王族の義務でございます。帝政国はローレンス大陸において魔法帝国ジールと双璧を成す巨大国家でございます。そこに嫁がれるということは、大変名誉なことですし、そのためには帝政国の未来の皇帝をサポートできるだけの知識や品格などが求められるのです。魔術の修練には長い時間が必要とされますので、シャルロット様には必要ありません」
「……それでも……」
「シャルロット様も、大きくなられれば分かって頂けると信じております」
これは、もう確実に私を帝政国とやらに嫁がせる予定が組まれているかのような話し方。
間違いなく、これは私が何を言っても代わらないと思う。
そうなると……。
魔術書を手に入れるのは、不可能と見て間違いない。
これは困った……。
ほんと、どうしよう……。
「まだ疲れが残っているようなので、今日、一日寝ていたほうがいいでしょうな」
すると診察が終わったのか獣人の王宮薬師エンハーサは立ち上がると鍵を使って部屋から出ていった。
「それでは、シャルロット様。後ほど、食事をお持ちいたしますので、お昼寝でもしていてくださいね」
メロウさんが、寝ている私の頭を撫でながら子供扱いしてくる。
まぁ、子供だけど体は幼女だけど……一応、頭脳は大人だけどね……。
それにしても、どうしよう。
魔術のことで知っている事と言えば、起きる物事の過程を頭の中に思い浮かべて「浮力」と発声して発動させるくらい。
他の魔術なんてまったく知らないしお手上げ。
もう、独自に魔術を模索していくしか方法がないかも。
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