薬師シャルロット
魔術師への第一歩(1)
「お父さま、おはようございます」
私は、父親である私の父親であるクレイク・ド・クレベルト国王陛下の表情を見ながら言葉を紡ぐ。
国王陛下は、嬉しそうな表情をして私の頭を撫でてくる。
頭を撫でられたのは子供の頃だけだったこともあり、ホッとするだけでなく、すこし照れくさい。
「あ、あの……お、お父さま」
私は頭を撫でられながら上目遣いに父親を見る。
すると国王陛下は、優しい笑顔を、私に向けてきていた。
けど、その笑顔を見ると私は思ってしまう。
別の世界に存在していた私が、今、この場にいるなら、この体の本来の持ち主はどうなってしまったのだろうか? と……。
だからこそ、国王陛下が私に向けてくる笑顔が、実の娘である彼女に向けられていると思うと、とても心が痛む。
「どうしたんだい?」
「えっと……魔術適正というのは何なのでしょうか?」
「おお! そうであった!」
国王陛下は、私の頭を撫でることを止めると、直径10センチほどの水晶球を私い見せてきた。
色は無色透明で、水晶球はとても透き通っている。
「シャルロット、これに手を触れてみなさい」
「――はい。それで、お父さま、これは?」
「ああ、これは魔術適正を計る水晶だ。魔術の適正を計るのは本来であるなら10歳からが通例なのだが、王族や貴族などは早い内から行っているのだよ」
「早いうちからですか?」
「子供の頃の方が魔力量の上昇が良いとされているからだよ?」
「そうなのですか――」
魔力量は、増やせると……。
私は、国王陛下が差し出してきた水晶球を両手で受け取る。
「水晶に魔力を込めてみなさい」
「魔力ですか?」
私は首を傾げる。
本来のシャルロットなら知っていたかも知れないけど。
「――ごめんなさい、お父さま。……私、魔力の使い方を覚えていないです」
「シャルロット、すまないな。父を許してくれ……記憶を失っていることを考慮していなかった」
「――い、いえ! お父さまが気になされることはないです! 私が全部悪いんですから!」
「……そうか……」
国王陛下は、寂しそうな目をしたあと、私を両手で抱き上げるとベッドへと下ろしてから、「シャルロット、今から魔力の使い方を教えるから両手を私に向けてくれるか?」と、私に話かけてきた。
「――は、はい!」
「慌てなくてもよいからな?」
どうやら、私が何も覚えていないことを、お父さまは気にしているようで、とてもやさしく声をかけてきてくれる。
すごく私好みの低音なボイスに、甘いマスク。
そして男性とは思えないほど細く長い眉に、鼻筋が通った顔立ち。
さらに極めつけは、透きとおるまでの空色を連想させるかのような蒼穹な瞳に均整の取れたたくましい肉体。
どれをとっても私の好みにぴったりで!
いけない、いけない。
一応、親子だから、そういう目で見たら駄目――。
それにしても、お父さまはどうして……こんなにカッコいいのだろう。
そんなお父さまの話だと、私の容姿は黒髪と黒目以外は王妃様に似ているらしく――。
私専属の身の回りの世話をする付き人のメロウさんに、肩まで伸びていた髪の毛を整えてもらっていたところ鏡を見たら「何この子、すごくかわいいのですけど?」と、思わず心の中で自画自賛したくらい私の容姿も可愛かった。
別に、私がナルシストというわけじゃないから! とそのときは言い訳をしたけど、実際なところ、自分が可愛いと鏡を見るのも嬉しくなるわけで――。
「それでは、シャルロット。魔力を感じる練習をするぞ?」
「魔力を感じる練習?」
言葉から一瞬、エロイことが思い浮かんだところで国王陛下が私の手を握ってきた。
「お、お父さま!?」
いきなり、好みの男性に手を握られたことで意識してしまい、声が上ずってしまう。
何せ、私の趣味はインドアで小説を書くことで……。
高校を卒業してからOLとして就職するまで男性と一度も付き合ったことがない。
そんな私が、男性に手を握られたのだ。
それだけで、ドキドキしてしまう。
「どうしたのだ?」
「な……、なんでもありません……」
「大丈夫か? どこか痛いのか? 強く握り締めすぎたか?」
「――い、いえ……」
「お父さま、ごめんなさい――」
「どうしたのだ? そんなに記憶が無いことが辛いのか? 痛いところがあったら言うのだぞ?」
国王陛下の言葉に、私は否定的な意味を込めて頭を振る。
私に笑いかけてくれて、心配してくれる国王陛下は、とてもやさしい。
私専属の付き人であるエルフメイドさんや、近衛兵の方に命令している時は、とても凛々しい為政者の顔をしているのに―ー。
「だいじょうぶです。お父さま、魔力を感じる練習をお願いします」
「そうか――。何か思うことがあれば、遠慮なく言うのだぞ?」
「はい」
私は、国王陛下の言葉に頷く。
そして、握っていた手から何か熱いモノが体の中を駆け巡ってきた。
まるで、熱いお風呂の中にいるような感じ――。
「お父さま、手のひらが……体中が熱いです――」
触れ合っている手のひらから体中にじんわりと熱が伝わってきてから、波のように体全体に広がっていく。
とても心地いい。
「これが、魔力だが……どうだ? 分かったか?」
「これが魔力ですか?」
「そうだ。魔力は体内を巡っている。それを手のひらから放出するイメージを思い浮かべることで魔術を扱うことが出来るのだ」
国王陛下の言葉に私は頷く。
私は、たった今、感じた感覚を頭の中にイメージする。
国王陛下の言葉を聞いて最初に思い描いたイメージは、心臓を通り体中に血液と共に酸素が運ばれていくイメージであった。
酸素を魔力として捉えることで循環できるのかもしれない。
それは、間違いではないようで――。
「お父さま、わかりました!」
私は、ベッドの上に置いておいてある透明な水晶球を手に取る。
そして、両手から魔力を放出するイメージを固める。
すると、透明な水晶は無色なまま、眩いばかりの白い閃光を放った。
私は、父親である私の父親であるクレイク・ド・クレベルト国王陛下の表情を見ながら言葉を紡ぐ。
国王陛下は、嬉しそうな表情をして私の頭を撫でてくる。
頭を撫でられたのは子供の頃だけだったこともあり、ホッとするだけでなく、すこし照れくさい。
「あ、あの……お、お父さま」
私は頭を撫でられながら上目遣いに父親を見る。
すると国王陛下は、優しい笑顔を、私に向けてきていた。
けど、その笑顔を見ると私は思ってしまう。
別の世界に存在していた私が、今、この場にいるなら、この体の本来の持ち主はどうなってしまったのだろうか? と……。
だからこそ、国王陛下が私に向けてくる笑顔が、実の娘である彼女に向けられていると思うと、とても心が痛む。
「どうしたんだい?」
「えっと……魔術適正というのは何なのでしょうか?」
「おお! そうであった!」
国王陛下は、私の頭を撫でることを止めると、直径10センチほどの水晶球を私い見せてきた。
色は無色透明で、水晶球はとても透き通っている。
「シャルロット、これに手を触れてみなさい」
「――はい。それで、お父さま、これは?」
「ああ、これは魔術適正を計る水晶だ。魔術の適正を計るのは本来であるなら10歳からが通例なのだが、王族や貴族などは早い内から行っているのだよ」
「早いうちからですか?」
「子供の頃の方が魔力量の上昇が良いとされているからだよ?」
「そうなのですか――」
魔力量は、増やせると……。
私は、国王陛下が差し出してきた水晶球を両手で受け取る。
「水晶に魔力を込めてみなさい」
「魔力ですか?」
私は首を傾げる。
本来のシャルロットなら知っていたかも知れないけど。
「――ごめんなさい、お父さま。……私、魔力の使い方を覚えていないです」
「シャルロット、すまないな。父を許してくれ……記憶を失っていることを考慮していなかった」
「――い、いえ! お父さまが気になされることはないです! 私が全部悪いんですから!」
「……そうか……」
国王陛下は、寂しそうな目をしたあと、私を両手で抱き上げるとベッドへと下ろしてから、「シャルロット、今から魔力の使い方を教えるから両手を私に向けてくれるか?」と、私に話かけてきた。
「――は、はい!」
「慌てなくてもよいからな?」
どうやら、私が何も覚えていないことを、お父さまは気にしているようで、とてもやさしく声をかけてきてくれる。
すごく私好みの低音なボイスに、甘いマスク。
そして男性とは思えないほど細く長い眉に、鼻筋が通った顔立ち。
さらに極めつけは、透きとおるまでの空色を連想させるかのような蒼穹な瞳に均整の取れたたくましい肉体。
どれをとっても私の好みにぴったりで!
いけない、いけない。
一応、親子だから、そういう目で見たら駄目――。
それにしても、お父さまはどうして……こんなにカッコいいのだろう。
そんなお父さまの話だと、私の容姿は黒髪と黒目以外は王妃様に似ているらしく――。
私専属の身の回りの世話をする付き人のメロウさんに、肩まで伸びていた髪の毛を整えてもらっていたところ鏡を見たら「何この子、すごくかわいいのですけど?」と、思わず心の中で自画自賛したくらい私の容姿も可愛かった。
別に、私がナルシストというわけじゃないから! とそのときは言い訳をしたけど、実際なところ、自分が可愛いと鏡を見るのも嬉しくなるわけで――。
「それでは、シャルロット。魔力を感じる練習をするぞ?」
「魔力を感じる練習?」
言葉から一瞬、エロイことが思い浮かんだところで国王陛下が私の手を握ってきた。
「お、お父さま!?」
いきなり、好みの男性に手を握られたことで意識してしまい、声が上ずってしまう。
何せ、私の趣味はインドアで小説を書くことで……。
高校を卒業してからOLとして就職するまで男性と一度も付き合ったことがない。
そんな私が、男性に手を握られたのだ。
それだけで、ドキドキしてしまう。
「どうしたのだ?」
「な……、なんでもありません……」
「大丈夫か? どこか痛いのか? 強く握り締めすぎたか?」
「――い、いえ……」
「お父さま、ごめんなさい――」
「どうしたのだ? そんなに記憶が無いことが辛いのか? 痛いところがあったら言うのだぞ?」
国王陛下の言葉に、私は否定的な意味を込めて頭を振る。
私に笑いかけてくれて、心配してくれる国王陛下は、とてもやさしい。
私専属の付き人であるエルフメイドさんや、近衛兵の方に命令している時は、とても凛々しい為政者の顔をしているのに―ー。
「だいじょうぶです。お父さま、魔力を感じる練習をお願いします」
「そうか――。何か思うことがあれば、遠慮なく言うのだぞ?」
「はい」
私は、国王陛下の言葉に頷く。
そして、握っていた手から何か熱いモノが体の中を駆け巡ってきた。
まるで、熱いお風呂の中にいるような感じ――。
「お父さま、手のひらが……体中が熱いです――」
触れ合っている手のひらから体中にじんわりと熱が伝わってきてから、波のように体全体に広がっていく。
とても心地いい。
「これが、魔力だが……どうだ? 分かったか?」
「これが魔力ですか?」
「そうだ。魔力は体内を巡っている。それを手のひらから放出するイメージを思い浮かべることで魔術を扱うことが出来るのだ」
国王陛下の言葉に私は頷く。
私は、たった今、感じた感覚を頭の中にイメージする。
国王陛下の言葉を聞いて最初に思い描いたイメージは、心臓を通り体中に血液と共に酸素が運ばれていくイメージであった。
酸素を魔力として捉えることで循環できるのかもしれない。
それは、間違いではないようで――。
「お父さま、わかりました!」
私は、ベッドの上に置いておいてある透明な水晶球を手に取る。
そして、両手から魔力を放出するイメージを固める。
すると、透明な水晶は無色なまま、眩いばかりの白い閃光を放った。
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