悪役令嬢に成り代わったので奮闘しました。だからって貴公子と呼ばれるとは思わなかったんです

工藤麻美

突然の訪問

 この間の殿下からの助言で一時は気にしないようにしていた、しかし状況は

「おはよう、エドガー。今日は……」

「おはようございます、クリストファー様。既に家庭教師が来ております故失礼します」

「あ……」

と、こんな感じだった。明らかに避けている。話す場を設けようにもその約束を取りつける隙さえない。

 部屋で少し憂鬱になっていたところ、ユーリが部屋に入ってきた。

「?……どうしたユーリ、読んではいないのだけど」

「お坊ちゃまにお客様でございます」

「お客様……?」

今日は誰かが訪ねてくる予定は無かった筈。しかも父上じゃなく私に。一体何の用だと客間に向かった。

「誰かと思ったら……なんだルカか」

「なんだってなんだよ」

「いや別に」

 安堵のため息をつくとルカはなお不服そうに顔を顰めた。

「で、いきなり訪ねてきてどうしたんだい?」

「ああ、少し父について行って遠出してな。珍しいものがあったから買ってきた」

そう言ってルカはテーブルの上に黄金色の液体が入った綺麗な小瓶を置いた。

「これは……蜂蜜?」

にしては色が随分と薄い。そう思ってルカに尋ねた。

「ああ、その国にしかない花から取れるものらしくてな。変わった色だろう?」

「ああ、綺麗だね」

小瓶自体にも細かな装飾がしてあってインテリアとしても楽しめそうな一品だった。

「ありがとう。嬉しいよ」

「それなら良かった」

素直に礼を伝えるとルカは満足そうに笑った。

「……ところで、義弟とはどうだ?」

「うぇっ!?……うーん、あんまり……かな」

 いきなりサラッと痛い所を突かれて変な声が出る。思わず誤魔化すように笑うと訝しげに眉を寄せられた。

「……そいつ、今どこにいるんだ」

「え?多分家庭教師と勉強中だと思うけど……」

「だとしたらあの部屋だな……。時間は?」

「あと……そうだね三分ぐらいで終わるかな」

「よし行こう」

 そう言ったかと思えばルカは私の手を取りズンズンと屋敷の廊下を進んで行った。何をするつもりかと聞いても答えないし歩みを止めない。

 この屋敷で家庭教師と勉強する部屋は決まっている。ルカは一度、私と一緒に授業を受けたことがあるからそこに向かっているんだろう。

一体何を企んでいるんだ、と不安になりながら大人しく引っ張られる。ルカって意外と強引だよな。

 無駄に広い屋敷の廊下を歩いていると、部屋から丁度エドガーが出てきた。一瞬目が合ったが直ぐに逸らされた。かと思うとその目は今度はルカをじぃっと見ている。

 まぁ誰だこいつ、とはなるよね。合わせたこともルカのことを私から話したこともないし。

「おい、そこのお前。話がある」

 初対面で随分高圧的な態度を取るなぁ、とハラハラしながら見守る。

「はぁ……まず貴方は何者ですか?」

「俺はルーカス・キャンベル。お前の従兄にあたる者だ」

 ルカがそう告げるとエドガーは目を見開いた。

「従兄……?」

聞いてない、とでも言いたげに今度は私の方を見た。あまりにも気まずくて目を逸らしてしまう。

「……分かりました。立ち話もなんでしょう、客間にお連れしてもよろしいですか、クリストファー様」

「構わないよ。紅茶、入れ直して貰えるかな」

 近くに控えていたメイドにそう頼んで客間へと逆戻りする。その間、二人の間にはまるで凍てつくような空気が流れていた。何故だ……?

 身震いしながら客間に入る。そう言えば初めてだな。エドガーがここまで敵意を剥き出しにするのも。まぁルカの態度もあまりよろしくないし……そういうものなのかなぁ。

いまいちエドガーの人格が掴めてないから、彼がどういう反応をするのか予想しかねる。

ルカとエドガーが正面から向かい合い、私はルカの隣に肩身の狭い思いで座った。

ブリザードでも吹き荒れてるんじゃないか、と思うなか恐怖の話し合いが始まった。






更新大変遅くなりました。申し訳ありません。
キャラクターの絵まで描いて下さった方がいて感激しております!
これからも読んで頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。


「悪役令嬢に成り代わったので奮闘しました。だからって貴公子と呼ばれるとは思わなかったんです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

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コメント

  • 春咲友花

    面白いです! 
    次の更新楽しみにしてます!

    2
  • RAI

    頑張ってください
    応援しています

    1
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