悪役令嬢に成り代わったので奮闘しました。だからって貴公子と呼ばれるとは思わなかったんです
ルーカス
屋敷を出て、薔薇園に向かう。我が家の庭の中でも、薔薇園は特に力を入れていた。母上が大好きな花だそうだ。
薔薇園に着くと大きなアーチが一つだけ見える。そこには二つのブランコがぶら下がっている。丁度いいしそこに座ることにした。
「綺麗な庭だな。」
「ええ、手入れを欠かしませんから。そちらの庭はどうなのですか?」
「特に、変化もない。普通の庭だ。」
ぴしゃりと言われてしまうと会話が続かない。というか無表情で心が読めない。子供ながらその表情筋の働かなさは問題だと思う。
「当主様は凄いな。御祖母様に気に入られてる。」
「ええ、長男だからでしょうね。」
どう答えたら良いのか分からないので、当たり障りのない答えを言う。するとルーカスは鼻で笑った。
「はっ‥‥。長男だから?そんな理由で通じる訳ないだろう。御祖母様の前での当主様は他とはまるで違う。明らかに気に入られようと媚を売っている。そうまでしてあの老人に好かれたい理由が分からないな。汚らわしい。」
ポカン‥‥としてしまった。何言っているんだ彼は。
「お前も、同じ手を使うのだろう。俺はそんなことしない。そんなものは実力じゃない。そしてそんなものを使う奴なんか当主には相応しくない。お前だって同じだ!次期当主なんか相応しくない!」
いきなり饒舌になったかと思うと、私と父上を罵り出した。まるで怒りをぶつけるかの様に。だから思わず私も叫んでしまった。
「ふざけるな!」
すると彼は目を見開いた後、こちらを睨みつけた。
「何だと!?」
「私を好き勝手言うのは仕方ないだろう。実績も何もないからな。けれどな、父上は違う。現キャンベラ家当主として、最善を尽くしている。父上まで馬鹿にするな!」
確かに媚を売る行為はあまり褒められたものではない。私だって先程商人にそうされたが心地良いものではなかった。けれど払いのけようとも思わなかった。それが、彼らが生きていかなければならない道だから。
だから私は父上を汚らわしいだなんて思わない。私の前の父親だって、悪くないのに上司に頭を下げていた。けれど恥ずかしいとすら思わなかった。寧ろ頑張っているんだと誇りにすら思う。だってそれは自分を、自分の家族を守る為にしていることだったから。
「自分が御祖母様に気に入られない理由を、他人の所為にするな!」
「うるさい!お前に何が分かる!!」
「人の努力を貶す様な奴の気持ちなんか分かりたくもない!そうやって自分だけ不幸だと思うのは止めろ!」
すると図星だったのか彼は泣きそうになっているのが分かった。顔は怒り、眉間に皺が寄っている。それでも彼の目には涙が溢れ出そうだった。
「だって‥‥誰も俺なんか必要としない。娼婦の子だからって。ただそれだけなのに‥‥母も御祖母様も、唯一の血縁者である父さえも俺の事を人じゃないかの様な目で見る。なのにお前は、キャンベラ家の血が通っていると言うだけで愛されてるじゃないか!」
彼の声が震えている。泣くのを必死に耐える様に手を強く握りしめている。
「じゃあ見返せよ!」
咄嗟に出たのはその言葉だった。
「血の繋がりなんて所詮、家の中でしか問題にされない。お前が努力して立派な功績を上げれば、周りの人間はお前のことを讃える。そうすれば家の者たちだっていずれお前をちゃんと見る。だから自分を可哀想だとか、惨めだとか思うな!"俺なんか"なんて言うな!」
最初にルーカスに沸いたのは確かに怒りだった。父上を馬鹿にされたのが許せなかった。けど今は彼の言葉に怒っている。
「それでも辛いなら、私が味方でいるから!絶対、絶対に一緒に戦うから‥‥だから悲しいこと言わないで。」
そう言って彼に抱きつく。すると彼は声を上げて泣き出した。生憎、パーティーはダンスの時間に入ったのか音楽が鳴っていて彼の声には誰も気づかなかった。
ずっと彼の背中をさすり続けていると、嗚咽が止んだ。そして彼の体が私から離れる。真正面から見た彼の顔は目が腫れていて涙の跡があるけれど、どこか吹っ切れたかの様な表情をしていた。
良かったと思って立ち上がろうとするとくいっと服の裾を引かれた。
「あり、がとう。それと‥‥ルカと呼んで良い。敬語も要らない。」
「‥‥!うん、ルカよろしくね。私もクリスで良い。」
「よろしく、クリス。」
彼に手を差し伸べると彼は手を取って立ち上がった。
なんだ、可愛いところあるじゃないか。というか、彼はクール派だった筈だがなんかツンデレっぽくなっている様な。
まぁ、友人が一人出来たし良いか。
薔薇園に着くと大きなアーチが一つだけ見える。そこには二つのブランコがぶら下がっている。丁度いいしそこに座ることにした。
「綺麗な庭だな。」
「ええ、手入れを欠かしませんから。そちらの庭はどうなのですか?」
「特に、変化もない。普通の庭だ。」
ぴしゃりと言われてしまうと会話が続かない。というか無表情で心が読めない。子供ながらその表情筋の働かなさは問題だと思う。
「当主様は凄いな。御祖母様に気に入られてる。」
「ええ、長男だからでしょうね。」
どう答えたら良いのか分からないので、当たり障りのない答えを言う。するとルーカスは鼻で笑った。
「はっ‥‥。長男だから?そんな理由で通じる訳ないだろう。御祖母様の前での当主様は他とはまるで違う。明らかに気に入られようと媚を売っている。そうまでしてあの老人に好かれたい理由が分からないな。汚らわしい。」
ポカン‥‥としてしまった。何言っているんだ彼は。
「お前も、同じ手を使うのだろう。俺はそんなことしない。そんなものは実力じゃない。そしてそんなものを使う奴なんか当主には相応しくない。お前だって同じだ!次期当主なんか相応しくない!」
いきなり饒舌になったかと思うと、私と父上を罵り出した。まるで怒りをぶつけるかの様に。だから思わず私も叫んでしまった。
「ふざけるな!」
すると彼は目を見開いた後、こちらを睨みつけた。
「何だと!?」
「私を好き勝手言うのは仕方ないだろう。実績も何もないからな。けれどな、父上は違う。現キャンベラ家当主として、最善を尽くしている。父上まで馬鹿にするな!」
確かに媚を売る行為はあまり褒められたものではない。私だって先程商人にそうされたが心地良いものではなかった。けれど払いのけようとも思わなかった。それが、彼らが生きていかなければならない道だから。
だから私は父上を汚らわしいだなんて思わない。私の前の父親だって、悪くないのに上司に頭を下げていた。けれど恥ずかしいとすら思わなかった。寧ろ頑張っているんだと誇りにすら思う。だってそれは自分を、自分の家族を守る為にしていることだったから。
「自分が御祖母様に気に入られない理由を、他人の所為にするな!」
「うるさい!お前に何が分かる!!」
「人の努力を貶す様な奴の気持ちなんか分かりたくもない!そうやって自分だけ不幸だと思うのは止めろ!」
すると図星だったのか彼は泣きそうになっているのが分かった。顔は怒り、眉間に皺が寄っている。それでも彼の目には涙が溢れ出そうだった。
「だって‥‥誰も俺なんか必要としない。娼婦の子だからって。ただそれだけなのに‥‥母も御祖母様も、唯一の血縁者である父さえも俺の事を人じゃないかの様な目で見る。なのにお前は、キャンベラ家の血が通っていると言うだけで愛されてるじゃないか!」
彼の声が震えている。泣くのを必死に耐える様に手を強く握りしめている。
「じゃあ見返せよ!」
咄嗟に出たのはその言葉だった。
「血の繋がりなんて所詮、家の中でしか問題にされない。お前が努力して立派な功績を上げれば、周りの人間はお前のことを讃える。そうすれば家の者たちだっていずれお前をちゃんと見る。だから自分を可哀想だとか、惨めだとか思うな!"俺なんか"なんて言うな!」
最初にルーカスに沸いたのは確かに怒りだった。父上を馬鹿にされたのが許せなかった。けど今は彼の言葉に怒っている。
「それでも辛いなら、私が味方でいるから!絶対、絶対に一緒に戦うから‥‥だから悲しいこと言わないで。」
そう言って彼に抱きつく。すると彼は声を上げて泣き出した。生憎、パーティーはダンスの時間に入ったのか音楽が鳴っていて彼の声には誰も気づかなかった。
ずっと彼の背中をさすり続けていると、嗚咽が止んだ。そして彼の体が私から離れる。真正面から見た彼の顔は目が腫れていて涙の跡があるけれど、どこか吹っ切れたかの様な表情をしていた。
良かったと思って立ち上がろうとするとくいっと服の裾を引かれた。
「あり、がとう。それと‥‥ルカと呼んで良い。敬語も要らない。」
「‥‥!うん、ルカよろしくね。私もクリスで良い。」
「よろしく、クリス。」
彼に手を差し伸べると彼は手を取って立ち上がった。
なんだ、可愛いところあるじゃないか。というか、彼はクール派だった筈だがなんかツンデレっぽくなっている様な。
まぁ、友人が一人出来たし良いか。
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