悪役令嬢に成り代わったので奮闘しました。だからって貴公子と呼ばれるとは思わなかったんです

工藤麻美

気がかり

時が過ぎるのも早いもので、明日私は10歳の誕生日を迎える。今までは第一子が女の子というのがばれるのを恐れた為、両親だけに祝っていただいた。しかし、私を息子だと完全に信じている母上が

「是非、お義父様とお義母様もお招きしましょう!」

とはりきった。これで母上は次期当主の問題から解放されるからだろう。

「お前にこんなことをさせてしまってすまない。母も‥‥エリーネも前は立派な夫人だったのだ。どうか憎まないでくれ。」

父上は罪悪感からか、辛そうな顔をして私を抱きしめた。この人の方が私よりも傷ついているかの様だった。

私が心配なのはこれからだ。私の祖父母が味方になってくれるだろうか。こんな女々しい孫など要らん!!とか言われてしまってはまた母上が壊れてしまう。

そして一番の心配は私の従兄だ。ルーカス・キャンベル。彼は私と同い年で攻略対象の一人である。

というか私の従兄なら彼がキャンベル家を継げば良いのだろうと思ったが、どうもそうはいかないらしい。

ルーカスは私の父の妹の息子だ。しかし、それは建前である。実際、彼にキャンベル家の血は流れていない。彼は父親と娼婦の間に出来た子供だった。

それを知った御祖母様は、こんな卑しい子供を跡継ぎにするものですか!と怒鳴り散らしたらしい。ルーカスの母も自分の子ではないルーカスを疎ましく思っている。

その影響もあってか、彼はゲームで他者を受けつけない性格となっていた。その固く閉ざされた心をヒロインが開放し、二人は惹かれ合う結末になっている。

ゲームの中でクリスティーネは、ルーカスの事を卑しい娼婦の子だと蔑んでいた。ルーカスとヒロインが仲睦まじくなっていくのに邪魔をした。

理由を知った時呆れてしまった。それはキャンベル家に庶民の血が混ざるからというもの。散々卑しいと嘲った挙句、都合のいい時だけ身内扱いか。

王子を攻略される時は、今までの王太子妃としての努力を踏みにじられているといっても過言ではなかったので同情していたが、このルートでは最早救いようもない。

その結果、クリスティーネは断罪される。当たり前だろうなとも思う。ハッピーエンドでのルーカスはキャンベル家当主としてヒロインと幸せに暮らしている。

つまり家族ごと蹴落とされるのだ。父上や母上にまで被害が及ぶのはいただけない。本当に男装しといて良かった。これで次期当主権は余程のことがない限り争われないだろう。

自室でこれからのルーカスに対しての対策を考えていると、侍女長であるユーリの声が聞こえたから入室を許可する。

複数の侍女たちが入って来たので視線を向ける。彼女たちが手にしているのは服や装飾品。おそらく明日のパーティーの服装だ。

それは私が初めてクリストファーと名乗った日に着ていた服だった。あれは正装だったから普段は着用せずに閉まっている。

私にとっての大切な一着‥‥。

服の着付けが終わって特に問題がないことを告げるとまた脱がす作業が始まった。

「おやすみなさいませ。」

その言葉を聞き、棚に置いてある目覚まし時計に目を向ける。そうか‥‥もうそんな時間だったな。

期待より不安が大きい中、私は眠りについた。

「悪役令嬢に成り代わったので奮闘しました。だからって貴公子と呼ばれるとは思わなかったんです」を読んでいる人はこの作品も読んでいます

「ファンタジー」の人気作品

コメント

コメントを書く