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悪役令嬢に成り代わったので奮闘しました。だからって貴公子と呼ばれるとは思わなかったんです

工藤麻美

学園への不安

「剣術は最悪、学園の入学式までに間に合えば良いんだが‥‥。どうだ、間に合いそうか?」

ふと、隣に立っているルドルフに尋ねた。

「クリス様は飲み込みが早くていらっしゃいます。ですから心配はご無用かと。しかし魔法武器によっては改めねばなりません。」

「それこそ杞憂だろう。父上と母上の魔法武器はヴァイオリンとヴィオラだ。おそらく私も弦楽器だろう。」

"魔法武器"それはこの世界にのみ存在する魔力保持者にとって特別なもの。

魔力保持者は皆、15歳になると共にウェリントン魔法学園に入学する。魔法武器は入学した生徒達が最初に使える魔法である。

魔法武器とは名ばかりで、多くは楽器の形をしている。音を奏でるとそれが魔法となって発動する。だが稀に、剣や弓矢、指輪など楽器でないものもある。

そしてそれは、選べるものではない。その人の魔法武器には血筋が大きく反映する。親が金管楽器なら、子も金管楽器という様に、親とほぼ同じものになる。

「そういえば、ルドルフの魔法武器は何だ?」

「犬笛で御座います。」

彼はしれっとそう答えた。犬笛か‥‥確かに彼らしいのかもしれない。それは決して彼を馬鹿にしているわけではない。ルドルフという名前の語源は「高名な狼」である。イヌ科の動物の長とも言われる狼の名を持つ彼にこそ相応しいとすら思う。

「ではそろそろ、ダンスの練習されるお時間でしょう。今日はここまでに致します。」

「ああ。ありがとうございました。」






鍛錬の服を脱ぎ、フォーマルな服装に着替える。そしてピアノだけがある広々とした部屋へ向かう。到着すると近くの使用人が扉を開けてくれる。中には二人の女性がいた。

一人はダンスの伴奏の為、ピアノを弾いてくれる。もう一人は言わずもがな私のパートナー役の人だ。

彼女は女の私でも見惚れるほど美しい。礼儀作法一つ一つが洗練されていて思わずぼーっとしてしまうのが最近の悩みだ。

「今日は今までの練習を全て復習します。それでは始めましょう。」

パートナー役の先生は優雅に微笑む。私は彼女の前に跪き、手を差し出した。

「私と、踊っていただけますか。」

「喜んで。」

そうして、彼女を引き寄せるとピアノが流れ始める。音楽に合わせてステップを踏む。視線は足元ではなく相手の目を見ること、相手の腰を支え、しっかりとリードする。けれど早くなりすぎない、

一通り踊り終えて、最後に挨拶の礼をする。

「完璧ですわ。これならどのお嬢様方も貴方に夢中になることでしょうね。もう私が教えさせていただくことはありませんわ。」

彼女は嬉しそうに、けれだ寂しそうに笑って褒めてくれた。ダンス練習、完了。

「そう言っていただけるなら安心しました。本当にありがとうございました。」

彼女達と別れ、自室に戻る。前までは白い壁にピンクや薄紫色の家具が置かれ、リボンや花柄、レースにフリルなどで飾られていたのに。

数日のうちにガラリと変わった。白い壁の色は変わらないがそれに合わせた様に家具も白字に金色の外枠がはめられているもの、ガラスで出来た透明な物が多い。前の部屋もお姫様みたいで素敵だったから、少し勿体無い気もする。

ベッドに伏せて、これからのことを考える。
パーティーに向けての準備は整った。言葉遣い、礼儀作法、ダンス共に問題なし。ダンスの先生も私が完全に男だと信じていたし、当分は問題ないだろう。

しかし、学園に入ってからは別だ
全寮制で大抵誰かと共に行動する。生徒同士の距離も近い。

「前途多難とはまさにこの事だな。」

そっと、目を閉じた。

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