天才と秀才と馬鹿の話 (画像はイメージです)

つんつくん准将

第16話 目覚め

 俺が目を覚ますと、目の前には異様な光景が広がっていた。

 そこには二つの派閥(?)が。

『お前らは馬鹿なのか!?あぁん!?』

『サラマンダー....絶賛激怒中....』

『絶賛はされてないでしょ』

 一つは師匠達ともう一人の小柄な子供。よく見ると羽根が生えている。この娘が婆さんの言ってたシルヴェストルか?

 そしてもう一つは──

『ご、ごめんなさい....』

 「ごめんなさいぃぃぃ....」


──ミサキと水の身体を持った女性が正座している光景だった。


 「........?」


 彼女は師匠達と同じ四大精霊の一角、ウンディーネなのか?婆さんは四大精霊の中で最も強い力を持つって言ってたけど.....

『だって!だってだってだって!!死んだ人が蘇ったんだよ!?喜ぶ事も許されないの私は!!?』

 正座したまま駄々こねてるこの人が?

『うるせぇ!お前は毎度毎度...加減ってのを知らんのかこのバカ!!』

『だってぇ〜!!』

 .....号泣し始めたこの人が?

 「そそくさそそくさ.....」

 ガシィッ!

『逃げるなよ?』

 「..............はい」

 どさくさに紛れて退散しようとしたミサキの肩をグノームがと掴む。

 ミサキの顔がそりゃあもう海のようにブルーだ。世紀末かよ。

 「ぐぁぁぁぐぉ、がぉぉどぉぉ.....」

 隣では兄さんがぐーすか眠ってる。
 初めは疑ってたがコイツは兄さんだ。このイビキは兄さん以外できねぇな。

 そしてこの不思議な感覚。これはあの夢見たいな出来事のせいだろう。


──光の属性眷属、龍神ベレヌスか。

 そして広間の奥には婆さんとハルキとかいったヤツが喋ってる。

 耳を立てると途切れ途切れ言葉が聞こえた。どうやら今までの旅や、属性の話らしい。師匠達がうるせぇ。


 俺はベレヌスとの会話を思い出す。

☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 「龍神ベレヌス....?それが光魔人の名前か?」

『左様....否。我ガ名ハ“ベレヌス”ナリ。光魔人...?』

 「あ、いや、忘れてくれ。じゃあ契約とやらがなんか知らん間に済んでたから、俺にはお前の力があるんだな?」

 光魔人あらためベレヌスはコクコクと頷く。

『光属性...保持者希少。我ガ力、強大故ニ器成長セシ時迄表出セン』

 「まあつまりは俺が強くなったから出てきたって事だな」

『左様』

 すると、ぼやけていたベレヌスの本体が捉えられるよるになっていた。

『我ガ主ノミ認識可能』

  その姿はまさに龍神。

  光を発する黄金色の鱗が輝き。

  長く、太く、それでいて美しい角が二本。

 白に染まった長髭が神の貫禄を醸し出している。

  気高き龍の神。これが光の属性眷属。

  「──すっげ.....」

  その神々しい姿に思わず見入ってしまった。
  (なんつーか、厨二心をくすぐられるな...)

 ボソッと言いかけたその言葉をなんとか飲み込む。
 それと同時に一つの疑問が吐き出された。

 「──転生者にのみ与えられし能力ってのは何だったんだ......?」

それは、この世界に来て間もない頃。

 婆さんと初めて会ったとき。
 俺は故意に、恐らく光属性の攻撃を繰り出した。
 あの時、婆さんはある一言を呟いた。


 ──「魔法のようで魔法ではない...
感知はできるが練った痕跡がない...
これが転生者に与えられる能力の一つか」──


 頭が急激に覚めていく。

 俺は光属性、いわゆるもう一つの主属性がこの能力ほ一つだと思っていた。だが違う。これは魔法・・なんだ。

 「魔法であって魔法ではない」

 だが俺が使ったのはこの力で間違いない。なら何故?

 俺は何かを見落としている気がする......!

 考えろ!考えろ!考えるんだ!!


 「手始めに世界を救え」──何の為にだ?

 「お安い御用じゃよ、サラマンダー、グノーム。
最初から存在には気づいておったが、如何せん力が弱すぎるので確証が無かったんじゃ」──何故感知できた?何故その魔力が師匠達だって分かった?
 
 婆さんが俺に、もう一つの主属性は〈光〉属性だと教えたんだ。それが嘘ならば?

 婆さんが俺達の実力を見るために、ガーゴイルを召喚したのは知っていた。嘘を付いてるのがバレバレだからだ。
 だがガーゴイルは魔界に住む魔物....つまりは闇。何故婆さんは召喚できた?


 彼女の言動、行動、そして思考.....それがある一つの仮定に辿り着く。


 「......なあ、ベレヌス」

 俺は大きく息を吸いこみ、そして思考を吐き出す。

 「──ってやつ、今何処にいる?」

『──!!』

 「分かるか?」


『確認ス.....』


☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆

 そして今に至る訳だ。
 生憎、そいつが何処にいるのかはベレヌスでも分からなかった。
 だが、一つだけ分かったことは、そいつが普段いるはずの場所、〈深淵の幽谷〉にはいないという事。

 可能性としてはまあ低いだろう。だがもしそうじゃないなら....!

 俺はそこまで考えてから身体を起き上がらせる。その途端──

「あっ!たっけるうぶっ!??」

 ──ミサキがこちらに飛び込もうとしたのを、グノームの伸ばした腕に阻止される。

『貴様は馬鹿なのか....っ!!反省という概念は無いのか.....』
 「いててて.....反省してます☆」
『ふむ、明日は魔法修練を.....三百キロの石を....操るまで帰れませんやるか.....』
 「ふぁっ!ふぁぁ!?ごめんなさいごめんなさい!!」

 「お主ら.....元気にも程があるぞい」

 「本当に仲が良いんですね...」

 気付けば婆さんとハルキがこちらへ近付いて来ていた。

 「あー、ハルキっつったっけ?別に敬語じゃなくてもいいよ。むしろそっちの方が有難い」

 俺がそう言うとハルキは納得したように息を吐き出す。

 「そうか、俺も堅苦しいのは少し苦手だったんだよ。改めて、俺はハルキだ。よろしくな」
 「あぁ、よろしく」

 そうやって握手を交わす。パッと見、この世界に来て着替えてないのか服がボロボロだがその格好を見ると、どこかの坊ちゃんだったっぽい。
 貴族みたいな感じだ。でも偉そうとかじゃ一切なくて、むしろ接しやすかった。

 「え!!タケルってあの高校の生徒!!?」
 「そうだよ、そんなに驚く事か?」
 「当たり前だろ!真情高校って言えば、県内一の私立校じゃないか!!」
 「そうだったんだ。知らなかった」
 「嘘だろお前.....」

 こんな元の世界の会話で盛り上がると、なんだか故郷の話をしてるみたいで凄く楽しい。
 ミサキとはそんな会話一切しなかったしな。

 そんな時、ずっと寝ていた兄さんがむくっと起きて、


 「──青髪美少女っっ!!!」


 「「「『『..........は?』』」」」

 物の見事に兄さんを除く全員の思考が共通した。





 今回も見て頂き感謝感激雨嵐中の、つんつくん准将ですどうも。
 すいません、今回少し短いですw
 あと少しすれば更新ペースも早くなると思うので、少々お待ちあれ!!

 あと、お気づきの方もいらっしゃると思いますが、少しずつですが文頭に空白を埋めて行っております。
 2月23日現在、3か4話くらいまでは終わりましたので、それ以降も随時更新して行けたらなと思っております!!

 では今日はこれくらいで。また次回!!

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