天才と秀才と馬鹿の話 (画像はイメージです)

つんつくん准将

第13話 再会

暗い。それもとてつもなく。
かろうじて空間があることが分かるほどの世界。
そんな暗闇に一筋の光が舞った。

──ピロリンっ♪︎


〈世界に新たな生命反応がありました。表示します〉

大きなホログラムが映し出された。


新島慎吾

種族 人型人間種 異世界人


光は主に伝達事項を淡々と告げる。


性格 臆病 弟思い

年齢 19年と3ヶ.....

〈予期せぬエラーが発生しました〉


〈予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました予期せぬエラーが発生しました──〉

白だった光が赤に変わり緑に変わり青に変わり紫に変わり.....その様子からだけでも異常があったことは分かる。



──ピロリンっ♪︎

〈生体反応あり。状態、死亡?エラー、エラー、害物、謎、解析不能.....〉


ぽんっ、と。

光に手が置かれた。

《お疲れ様、エル。普通の異世界人として上書きしといて》

〈かしこまりました、ソロモン様。情報をアップデートしておきます〉

《よろしくね。後もう僕のことはソロモンじゃなくてスプリガンって呼んでね》

〈かしこまりました。では良い夜を。スプリガン様〉

《うん、おやすみ》

そうして光は静かに消えた。

《新島慎吾君、かぁ....あの水妖精はどうやって連れてきたのかなぁ》

そこに居たのは黒衣を羽織った青年。

《えーと、バルトガ区域の銀河系内太陽系惑星の内の一つ、地球出身。バルトガの知的生命体は魔力量が多いから、それで選んだのかな?》

虹色の羽根を広げ、白の玉座に座り頬杖をつく。

《問題はそこじゃなくて....時空軸なんだよね》

それと同時に短いため息。

《まあ、捕らえればいい話か。ともあれこちらもまとめないとね》

言い終わった時には、玉座にはもう誰もいなかった。

──静寂が再び暗闇を包んだ。




今日も今日とて修行の日々。

あの悪魔の襲撃から一週間が経った。
今日の後半の修行は休みで、ついに他の四大精霊の所に行く日だ。
まあ、あれからサラマンダーが『アイツらがイポスやシャックスみてぇに操られてたらどうする!?』って柄でもないことを言い出して...説得に六日かかったのだ。なんだかんだで優しいんだよな。

『よぉしっ!行くぞ!!』

そんなサラマンダーが先頭に立ち、拳を上げる。

『おー』
「うーす」
「りょーかいっ」
「ようやっと行けるわい...」

各々の返事を返していざゆかん!!

道の途中ではこれから会う人達の話をしていた。

「みーんな同じ世界から来てるのかなぁ?」

スキップで先頭に立っていたミサキが呑気な感じで振り向きながら問う。

『俺らは知らんなぁ...ウンディーネのヤツがお前らを選んだから、正直お前らの事は分からんのよ』

『右に同じ...』

ミサキとは逆に、落ち着いて後方を歩く二人の声が聞こえた。ってかよく聞こえたな地獄耳共。

「俺は、全員が俺らの世界から来てるとは思えないかな。俺がもし選ぶ側なら、そしてそれが可能なら、別世界か平行世界、いわゆるパラレルワールドから連れてくる」

さて、ここでミサキの頭に?が浮かんだので俺は丸メガネをかけて説明を始める。

「まずパラレルワールドって分かるか?」

「はい!分かりません!!」

はいの使い方ちょっとおかしいね、うん。

「じゃあそこから。例えば、ミサキは今日の朝飯に何食った?」

「えーっと.......んーと......





あぁ!!お婆ちゃんが作った目玉焼き!!」

「うん、その通り。その空白には敢えて突っ込まないことにするよ」

またも?を浮かべるミサキにそれは考えなくていいと伝え、説明を続ける。

「なら、もしもここで目玉焼きじゃなくウインナーを食べたとしよう」

「うんうん」

「じゃあさ、その時点で二つの世界が生まれるじゃん?」

「うん?」

「目玉焼きを食べた世界とウインナーを食べた世界の二つができるんだ」

「うぅーん....分かるような分かんないような」

「他の例をあげてみよう。そうだな....古代遺跡で探検をしているとしよう」

「ジョーンズ!!」

「呼び捨てはやめような。んでスイッチを踏んじゃって石が転がってきたと」

「ジョーンズ!!?」

「それは分かったから。まあ案の上ミサキはそれに気づかない」

「流石に気づくよ?」

「いいや、絶対気付かずに「ごーごー!」とか言い始めるよ。とりあえずちょっと黙ろうか」

するとちゃんと黙るので内心少しほっとする。

「石が転がってくる。本人は気づいていない。そんな状況で、仲間がお前を助ける為に引っ張るんだ」

「私その人大好き!!」

「スルーするぞー。でも、もしここで仲間が自分だけ助かるような行動をしていたら....お前はどうなったと思う?」

「生きてた!!」
「そう言ってる頃にはとっくに天国にいるよ」

俺は丸メガネを外し、今までの話をまとめる。

「つまりお前が生きるか死ぬか。その二つの世界...未来があるわけだ。今この瞬間も、俺がこれについて説明する未来としない未来、お前が理解する未来としない未来があるんだ。それがパラレルワールドとか、平行世界って呼び方をするんだ」

「理解しました、先生!!理解できない世界の私は馬鹿ですね!!」

「お前も十分馬鹿だ。じゃあなんで俺が選ぶ立場ならパラレルワールドからも選ぶって言ったと思う?」

「.....分かんないです」

「まあこれは俺が修行中にサラマンダーに聞いたことなんだけどよ」

『呼び捨てか?』

「.....師匠に聞いたことなんだけどよ」


こんの地獄耳めぇぇ!!


「誰しも魔力の覚醒点ってのがあるらしい。生まれつきで魔力が高いわけじゃなくて、そいつにとって大きな出来事があったりすると急激に魔力量が増加するんだとよ」

「.........それが何か?」

「ほんと馬鹿だなお前は。つまり、その出来事が起きる世界と起きない世界があるんだろ?選ぶ側なら、どっちを取るかなんて確定事項だろ」

「あぁ!!起きる人の方が魔力量が高い!!」

「そういう事だ。事実、俺とミサキは魔力量がかなり高い。それも師匠達が認めるほどにな。んである程度離れてても魔力で師匠達は感知したんだそうだ。俺らと同等かそれ以上の魔力の持ち主、つまりはそういうことだろう」

そこまで言い終えて無意識にドヤッとしてしまう。

それをタイミングよく全員に見られてしまい


「「『『うぜぇ.....』』」」



HAHAHAHAHAHA!!よくハモるパーティだぜ!!
俺のHPをことごとく削って来やがる!!!

......はぁ。

そんな話をしていると、目的地に到着した。
あの森は実際はそれほど広くはないらしい。

目の前に広がっていたのは、それはそれは異質な光景だった。


空は黒く、
地は腐敗し、
瓦礫が散っている。

なんとも禍々しい景色が正面に広がっていた。

「──なんだ、これ」

だが所々、未だに緑が見える。
完全に腐敗しているわけではないようだ。

そしてその先には半壊した大きな建造物がこちらを見ていた。

「...................」

婆さんが少し苦しそうな表情を見せる。
それに気づいたミサキが小走りで駆け寄り、安否を確認している。
婆さんのことはミサキに任せておこう。

「で、何処らへんに居るんだ?」

俺は話をなんとか本題に戻す。

『あのでっかい城跡っぽいな〜』

ってなわけなんだがと後ろを振り返り、

『行けるか、婆さん?』

「問題ないわい...はよ行くぞい」

口ではそう言っているが.....

俺とミサキは心配し、師匠たちは『そうか』と頷くだけで問答無用で荒野に足を踏み入れる。

会話が途切れてしまったが、もしかしたら敵対してるかもしれないし、仲間になるかもしれない。そんな人たちと出会うのに緊張を隠せない。

そこから城跡までは実際の距離より遥かに長く感じた。
辺りを見渡すと人が住んでいた頃の残骸かそこら中にあった。腐ったレンガ、カビの生えた屋根、白骨化した遺体.....

まともに見ることすら出来なかった。

ようやく辿り着いた城跡は、ほかの建物よりも形が残っており、中からはほんのり光が漏れていた。

『うし、行くぞ』

師匠が瓦礫を砕いて内部に入る。

中は比較的当時のまま残っているようだった。

大きな額縁に、赤いカーペット、何処までも続く天井などなど....
如何にも「城」って感じだった。語彙力が無いのは勘弁してくれ。

暫く上を見上げていると、女性の悲鳴が聞こえてきた。

「なんだなんだ!?」

『.....ニンフ!』

師匠が真っ先に走り出す。俺達もそれに続く。

『ニンフ!無事か!!?』

そう言って出てきたのは大広間。

そこに居たのは、風妖精と水妖精、人が二人。

『さ、サラマンダァ!?何でこんな所に...って、今はそれどころじゃないの!!』

『何が....あった...』

『コイツが、シンゴが、急に倒れて.....』

グノームの問いにシルヴェストルが答える。

『私の回復魔法でも意識が戻らないなんて....!』

『はぁ!?お前の魔法で治んねぇならどうにもなんねぇじゃねぇか!!』

『だから言ってるじゃない!!どうすれば........』

『そんな事言われたって.......』


──師匠たちが、四代精霊たちが何か言っているが、俺にはもうほとんど聞こえていなかった。

何故なら、そこに横たわっていたのは.....



「.........兄さん?」



死んだ筈の、兄だった。




今回も読んでいただきありがとうございます!
おはこんばんちは!つんつくん准将です!!
まず初めに...投稿が遅くなり申し訳ございませんでした。流石に遅すぎだと自覚しておりますので、次回は出来るだけ早く、投稿したいと思っております。

正直ここからどういう展開にするか全く決めてませんので、なにも言えませんが今後バトル描写を増やすつもりですとだけ言っておきますw

それではまた次回、お会いしましょう!!


1/30 タケルのシンゴへの呼び方を修正しました。

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