天才と秀才と馬鹿の話 (画像はイメージです)

つんつくん准将

第12話 主

今の俺の顔は傍から見たら凄い変な顔だろう。

え?いつもって?いやいや、そりゃ失礼です。

これ以上の紳士が何処にいるのです?

まあこの話は置いておきましょう。

どんな顔?って聞かれると

(゜Д゜)←多分こんな顔。

何故かって?質問多いなあんた。

師匠たちが規格外過ぎて悪魔さん一瞬でやられちゃったんだもん。

あんな大げさな登場してだよ?すぐ終わったよね、もう少し引きずったりとか考えなかったのねこの作者。

しかも俺主人公だよ?

ねぇ、俺主人公。前の話見てみ?俺ただ突っ立ってミサキ攫われて婆さん避難させようとしただけだよ?
そんなこと言ったらミサキは攫われただk....ゴホンッ!!
まああのピーチ姫....ゴホンゴホンッッ!ミサキも俺も主人公なんだよね。

俺らの扱い酷くない作者?


『......おーい、大丈夫か〜?』

「あ、ごめんごめん。今他の人に色々共感求めてたとこ」

『....?まあいいや、お前もこれ位できないとダメだぜ?』

「え」

『当たり前だろ?これからこんな奴らと戦っていくんだ。これ位はできないと死ぬぞお前』

「あら〜、やんなっちゃう(棒)」


隣ではミサキがグノームにしがみついて...


「びぃえぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇん!!!」

『だ、大丈夫....もう泣きやめ....服で鼻かむな...!』

げしっ と蹴られていた。
どうにか泣き止んだようだ。


やれやれと思いつつもやはりもっと強くならなきゃいけないっていう実感が持てた。


師匠たちも馬鹿じゃない。俺達があのレベルまで達せるから修行をつけてると信じてる。なら俺らはそれに応えるまでだ。

チキンの俺らしくないが、ここは主人公らしくこう言おう。


「──俄然燃えてきた」


皆が一斉にこっちを向く。あれ、心の中で呟いたつもりが声に出てた?

『なんだなんだ、急にやる気出して?そんなこと言ったらメニュー三倍にするぞ』

さっ.....!?

「それは勘弁してください」


『男に二言は?』


...............

「誰だこんな言葉作ったの!!やればいいんだろやれば!!」

『『よっしゃ来た』』

「なんでグノームまで言ってくるんだよ!?怖いんだが!?」

「それはさておき」

婆さんが仕切り直しと言った表情をし、明後日の方向を見る。

『あー、いるな』
『うむ』

「その通り、おるのじゃ」

何がだよオバケかオバケなのかオバケかよやめてくれよオバケだけはオバケはほんとダメだからオバ(ry

『シルヴェストルにニンフ。んでこれは...』

『バルバトス.....だな。アイツなら....安心』

「人間も居るぞ。しかも二人」

『あながちニンフのヤローが一人隠してたんだろ。
どうにか逃げれたみたいで良かったぜ』

ここで一息つくサラマンダー。俺もオバケじゃないと知ってホッとする。

『ぽーかーふぇいす、無理に維持しなくて...いいぞ』

指摘され顔が火のように真っ赤になる。

『いや、いやいや!別に納豆がどうこうとか考えてなかったし!?』

「「いや、聞いてない」」

『満場一致........確定』

『だーっ!!いいだろ!仲間の安全が確認できたんだから!!!』

「...会いに行く?」

泣き止んだミサキがようやく口を開いた。
二人は少し悩んだ後。

『んー、先行っといてくれ』

『我も....少し用事がある...』

「んじゃ待つかのう。二人が居らなんだら話が通じんじゃろう」


そう言って婆さんは家の方向に歩き始める。
あの戦闘の後にこんだけ冷静でいられるのに俺は心底驚いていた。

──経験の差、か。


「あぁ、サラマンダーにグノーム」

『なんだ?』

すっかりぽけーっとしていた師匠が婆さんに呼ばれてふと振り向く。

(人払い、しといた方がよいか?)

こちらからは聞き取れないが小声で何か喋っているようだ。

(あぁ、頼む。すまねぇな)

(お安い御用じゃよ....さて)

「タケルにミサキ。先に帰るぞい」

「は〜い」
「ほいほい」

ここは大人しく撤退しよう。首突っ込むのは野暮だよな。

「師匠」

『ん?』

「明日からメニュー五倍でいいよ」

自分でもなんでこんな事言ったのか分からない。

サラマンダーは一瞬驚いた顔をした後、フッと笑い

『日ぃ暮れるぞ?』

「やってみなきゃ分かんねーだろ」

『.....ぬるいぬるい、八倍くらい行かねーか』

「それはやらなくても分かる、無理なヤツや」

ハッハッハッと大きく口を開き笑うサラマンダーに連られて俺も笑ってしまう。

『んじゃま、今日は最後の休暇だと思って先に戻っとけ』

空を見上げるともう既に赤に染まっていた。

「お言葉に甘えて。おやすみ、師匠」

『あぁ、おやすみ』

俺に便乗してミサキもグノームに向かって弾んだ声を遠くから投げかける。

「ししょー!おやすみー!」

『....また、明日な...』


そうして俺達は家へと帰っていった。




タケル達の姿が消えてしばらくした後。

『じゃあ行くか』

『.....うむ』

俺達はお互いに別々の方向に歩いていった。

辿りついたのは焼け野原と化した山の一部。

ついさっき俺がイポスと戦った場所だ。

『すまん、ちょい遅れた』

【マッタクダ!マタセヤガッテ!】

フワフワと漂う赤く薄く小さな姿をした鳥。
そう、イポスだ。

『お前...一回死んでも変わらねぇな』
【ソウカンタンニイキモノハカワランノダヨ】
『はいはい』

はぁ...と小さな溜息の後。

『んじゃ、始めるぜ』

【イツデモコイ!ジュンビハデキテル!】

目を瞑り、手を合わせ、妖精は祈る。

『我、主が役目を果たす為、一つの生命を奪い、此処に魂を残し、尚生きる亡霊を導かんとす』

【チャントミチビケヨ】

『うるせぇ!今集中してんだ黙っとけ!』

気を取り直してもう一度息を吸い込む。

『我、転生せし我が眷属を新たなる生命へと移し替える為、我が誇りを生命へ捧げん』

合わせていた手を開き、霊体のイポスを包み込む。

『今宵、月の光に身を任せ、世界の境界を越えん事を祈り、心の灯火を燃やす』

イポスの姿が徐々に鮮明になっていくと共に、ゆっくりと天に昇っていく。

『此処を戦の証とし、永久に遺ると誓い、貴殿の心も灯火を燃やし、天へと昇る』

手を放し、空を見上げる。

『いつか蘇る日まで、妖精の歌と共に...』

暫く何も無い空間を見つめ、気が抜けたように固かった表情が少し和らぐ。

この時、俺の心に音が響いた。
誰かの声。聞き慣れた声。


『──あぁ、分かってる』


いつも通りの軽い返事。だけども全然違う重さを持った返事をして、俺は伸びをする。

『くぁ〜っ!帰って寝るか!』

そうして俺も心で応えるのだ。


またなって。






【ちぇー、グノームちんにやられるなんてなー】

『何が....不満だ....』

【シルになら本望だったんだが...まあ過ぎた事言ってもしゃーないわな】

薄い緑色に輝き、半分透けているこの少年。
つい先程拳を交えたシャックスだ。

まったく......

『これから....転生の儀式....する』

【うん、分かってる。善人に生まれ変わらせてくれよ?】

『なんなら....付いてくるか...?』

【ケッ!やだね!俺は人の下に付くのは嫌いなんだ。だから今の環境だって嫌いだ。そんななら生まれ変わっていい環境に生まれることに賭けるぜ】

『それでこそ....お前らしい』

始めるぞ、と声をかけ転生の儀を開始する。

その前に聞きたい事があったのを思い出した。

『恨んで....ないのか....?』

【あ?何がだよ】

『ここで、貴様の命を奪った我を...恨まないのか?』

はぁ?といった顔でシャックスがこちらを見る。
そんなあからさまに顔に出さなくてもよかろう。

【あれは仕方なかった事だろ?結局俺を殺さなきゃ、俺は多分止まれてねーぜ?生け捕りなんか生ぬるい事したら、数分で傷が癒えてまた暴走するに決まってんだろ】

ド正論をズラーッと並べられ、だがしかしと考えてしまう。
別の道は無かったのかと。彼を救う道が。

【まだ悩んでんのか。済んだことだしもういいだろ?お前は正しいよ】

『......お前は.....優しいな....』

【だから言ったろ?善人になりたかったって】

ニヤッとこちらを見るシャックスは顔が少し引きつっていた。悪魔といえど死は怖いものだ。

『分かった....もう、迷うまい』

そうして儀式を始める。

『──いつか蘇る日まで、妖精の歌と共に....』

【スゲェ、お前そんなにスラスラ喋れんだな】

『失礼な....この程度...申し分無い』

【戻ってる戻ってる】

『いいから....早く行け。閉ざされるぞ』

【へーへー......あっ、そうそう】

透けていた体がさらに薄くなり、昇っている最中に思い出したかのようにこちらを見下ろす。

【俺ら、精神操作されてたから。本心では皆お前らの事大好きなんだぜ】

あのシャックスからこんな事を聞ける日が来るなんてと驚く。

『ふん......知っていた事だ.....』

【ハハッ、何だその言葉、似合わねー】

『ほっとけ.....』

そしてある事を決意する。

『我が.....』

【ん?なんか言った?】

『我が...必ず闇妖精を滅してみせる』

今度はシャックスが驚いた。我の口からそんな言葉が出るなど思いもしなかったのだろう。

【じゃあ向こうからイポスと見とくわ。楽しみにしとくぜ】

『しかと目に焼き付けるがいい』


そうして少年は消えていった。


災いの予兆を残して。





──時は少し遡り、ハルキ、シルルサイド


『相変わらず、忠誠心が凄いね。バルバトス』

【ふむ、相変わらずと言うほど会えなかった期間は長くなかったが】

『そういうことじゃないんだよ.....』

シルルが頭を抱える。なかなかに珍しい事だ。

そう、バルバトスは喋らない事で有名だが、一度口を開けば勘違いの連発。ただの鈍感野郎なのである。

【ところでこれはどういった状況だ?】

周囲を見渡せば半裸(ほぼ全裸で色んなとこ丸出し)のウンディーネに隅で縮まってビクビクしている人間に、それに対して表情筋が仕事をしていない人間。

「最強の勇者パーティだ」
『何わけの分からない事言ってんのよ!』

『とりあえずクロケル昇らせるわね』

ウンディーネがクロケルが殺られた場所に歩いていき、魂を出させる。

【ケッ!バルバトス!!お前は早とちり過ぎなんだよ!!もうちょい出番くれたっていいじゃねえか!】

【....出番?何の話をしているのだ?】

【お前に話した俺が馬鹿だったよ。まあどっちにしろ俺は殺すつもりで降りてきたから、止めて正解だったんだが。とりあえず、お前らに言っとかなきゃいけねぇことがある】

そう言い終えた時、クロケルの中で一瞬の葛藤があった。だがそれを振り払う。

【俺らはあの闇妖精に操られてた。だが俺らはかかった自覚が全くなかったんだ】

そこまで言った時にバルバトスが手を挙げる。

【私は操られておらんぞ】

【そう、それだよ】

クロケルは求めていた質問を聞き、ビシッと指を指した。

【多分あと何人か、操られていない奴がいるはずなんだ。だからお前らはそいつらを仲間に加えて、戦力にすればいい。俺達は皆、お前ら主と共に生きたいという意志があった筈だ。いずれ、他の悪魔の目を盗んで会いに来るだろうよ】

あと二つだけ、とピースサインを作って言い、再び言葉を続ける。

【一つ、あの闇妖精はソロモン様じゃない。死んで精神操作から解放された今ならはっきり分かる。二つ目はそこの人間二人だ】

急に自分たちの話になり驚く二人。

【お前らはえげつない魔力量を持ってる。悪用すればそれはそれはヤベェ事になるだろうよ。まあしないと思うし主やバルバトスに色々教われ。ただし万が一、闇妖精に俺らのような精神操作やらをされたら、一気に負けゲーになっちまう。特にそこの闇属性持ってる奴!気を付けろよ】


それはつまり、故意では無いと言えど裏切りの可能性があるということ。

それを再確認した妖精は冷や汗を流した。

悪魔ですら、四大精霊ですら驚く程の魔力量の持ち主。それが敵になればどうなるかはすぐに分かった。

ハルキは闇妖精の事は知らないが、危険人物であり、敵ということは分かった。さらに自分が闇属性を持っている事を自覚しているので焦りを覚えた。

シンゴに至っては何も分かっていないが....。

【じゃあもうゲートが閉じちまうから行くわ。正直まんまと騙されて腹たってんだ。殺しに来た奴のセリフじゃねぇが、アイツを倒してくれねぇか?】

『もちろん』
『言われなくても!!』

二人の妖精は頷き合い

それにバルバトスも賛同する。

「操られなんかしませんよ」「えーと、さようなら!」

遅れてハルキとまだ戸惑ってるシンゴも声を上げる。

そうして悪魔は昇って行った。




『それじゃ、合流しましょうか!』

ニンフ──呼び慣れないしほぼ初対面だが呼べとうるさいから仕方なく呼んでる──が元気よく言ってくる。

俺としてはこの世界に降り立って間もないので、何がどうやら分からないからここは先人の意見に任せようと思い、賛同した。

するとハルキと言った同世代くらいの男が

「俺ら以外の転生者?転移者?がいるんだって?」

【感知した】

端的にバルバトスが即答する。

「じゃあ行こう。情報交換できるし戦力増加にも繋がる」

「なら俺はそれについて行きますわ。そいつらの所までどれくらいで行けんの?」

『んー、どう?バルバトス』

【そうだな、直線距離では数キロメル(一キロメルは現実世界での約1100メートルの距離)くらいだな】

『『ちっか!?』』

「「なんか近そうな事は分かった」」

行く道のりで色々聞きたかったんだが....
あんまりそんな間は無さそうだな。

 

──ドクンッ.....


胸の奥で何かが響いた。
なんだ?恋じゃあるまいし。

はぁ〜あ、これからどうなるんだろなぁ.....。

俺は本当はもう......あれ?


「あ.......あぁ....」


頭の中が....なんだ、これ?


「うぁっ......あァ!!」


「?  どうした?」


これは......誰かの、記憶?


「グぁぁ!アァ!!」


「!?  おい!大丈夫か!?」


なんだこれ、なんだこれどうなってん.....


いや、これは......



「俺の.....記憶.....」



「おい!シンゴ!?しっかりしろ!!」


そうだ、あの日、俺は.....


「シンゴ!シンゴ!!シン....」



死ん.......



──ブツッッ

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